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【セブンイレブンとDX・失敗の本質】(03) 社外秘“見せしめ御前会議”の全容…セブン&アイ創業家役員がDX担当役員を“公開処刑”

『セブン&アイホールディングス』は昨年10月、社会会議でDX戦略の目玉構想の中止とキーマンの退任を発表した。入手した社外秘の動画を基に、会議の一部始終を解き明かす。



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『新会社の方針に関する説明会』――。2021年10月7日、四谷のセブン&アイ本社9階の会議室。DX業務に携わる社員を対象とするオンライン会議が、急遽開かれた。セブン&アイは、DX戦略の要となる新会社を今春に発足させる計画を水面下で進めていた。『ライスプロジェクト』と名付けられたこの計画は、HD傘下のIT子会社を合流させ、グループのIT人材を集約する構想だった。計画を指揮してきたのは、『リクルート』出身で執行役員だった米谷修氏をトップとするグループDX戦略本部。新会社構想は米谷氏のDX戦略の大きな柱の一つだった。ライスプロジェクトが米谷氏の名を冠していることからも、その重要性が伝わってくる。しかし、前回触れたように、米谷氏が主導してきたDX戦略は、昨年7月に纏められた中間報告によって、内部の厳しい総括に晒された。「(グループDX戦略本部と)コミュニケーションが取れない」。中間報告ではグループDX戦略本部への事業会社の不満が爆発。結果、DX戦略の司令塔は中間報告に先立つ同年6月に2つの本部に解体され、米谷氏が横滑りした本部の権限は大きく縮小された。短期間での失速に、DX部門内では動揺が広がっていた。実はライスプロジェクトを見据えて、コンサルティング会社やIT企業といった、他社からセブン&アイグループに参画したIT人材はかなり多い。DX部門や計画の縮小は、セブン&アイのDX大号令を期待した“転職組”の仕事内容や待遇が、大きく変わってしまうことを意味するからだ。そんな状況下で開催されたのが、冒頭の社内会議である。会議の主役は3人。創業家出身でDX戦略を管掌する取締役の伊藤順朗常務執行役員と米谷氏、そして米谷氏の後任で『三井物産』出身の執行役員である齋藤正記氏が登壇した。今回のDX敗戦に直接的に関わる“役者”が出揃った形だ。

今回、本誌編集部はその社外秘の会議の一部始終を記録した動画を入手した。20分超の会議の動画に記録されていたのは、米谷路線の“退場”をこれでもかとばかりに宣言する異様な光景だった。まるで“公開処刑”のようである。更には、米谷氏のみならず、米谷氏が関与したDX部隊の事実上の“切り捨て”も宣言された。DX戦略のキーマンだった米谷氏が“引導”を渡された会議で、一体何が語られたのか。セブン&アイが米谷氏を軸に推し進めてきたDX戦略の“敗戦”を決定付けた、創業家の“御前会議”の一部始終を紐解いていこう。“見せしめの刑”――。社内会議を一言で纏めると、こう形容できるかもしれない。最初に登壇したのは、米谷氏のDX戦略の見直しを主導してきた伊藤氏だった。カメラの前で、モニター越しに視聴する社員に向かって語り始めた。「課題だった事業会社とのコミュニケーションや関係性の強化は、改善されつつある」。伊藤氏が先ず強調したのは、米谷氏がトップを務めていたグループDX戦略本部を解体した成果だった。先述したように、グループDX戦略本部の解体要因の一つには、事業会社側からの強い不満があった。そして伊藤氏は、DX戦略の“修正”について説明を続けた。ポイントは3つだ。一つ目は、HDへIT機能を集約する方針の撤回。二つ目はIT人材の大量採用方針の転換、そして三つ目がライスプロジェクトの中止だ。何れもシステムを自前で開発・運用する“内製化”を大目標に掲げる米谷氏が推し進めてきたもので、米谷路線の主要なものに対する“全否定”とも言える。次に伊藤氏が言及したのが、米谷路線の修正による社員への影響である。伊藤氏は、「不安を覚える人もいるかもしれませんが、DXの重要性や皆さんへの期待は変わっていません。これまで通り頑張ってほしい」と呼び掛けた。しかし、ライスプロジェクトに関わるメンバーには、非情な姿勢を示した。「これまで(IT人材の)大量採用に関わっていた人や、ライスプロジェクトに関わった人には申し訳ありません。皆さんの仕事については変更が否めません」と伊藤氏は切り捨てたのだ。ライスプロジェクトも見据え、セブン&アイは2年間で150人ものIT人材を大量採用してきた。伊藤氏のこの発言を聞いたあるセブン&アイ関係者は、「『仕事はもうなくなりますよ』という宣言だと受け止めた」と話す。DX戦略の“大修正”に続けて伊藤氏が明らかにしたのは、米谷氏の退任だ。米谷氏から退任の申し出があったこと等を説明した伊藤氏は、「グループに新風を吹き込んでくれた」「残る我々は、より努力して米谷氏の労に報いたい」等と心にもないような言葉で持ち上げた一方で、こう発言した。「コミュニケーションに課題を残したが、(今回の)方針転換についても前向きに検討してもらった」。米谷氏がこれまでのDX戦略を自ら否定したことを強調してみせたわけだ。「不安がる必要はありません。DXが重要なことは変わらない。皆さんが仕事をし易くしていく」。最後に伊藤氏はモニター越しの社員に呼び掛け、約8分半の演説を締め括った。伊藤氏の次に登壇したのは、米谷氏の後任としてDX部門のトップに就いた齋藤氏だ。齋藤氏は三井物産出身で、システム子会社の『三井情報』のトップを務めた経験も持つ。別のセブン&アイ関係者は齋藤氏をこう評する。「米谷氏とは異なるタイプで、アクが強くなく、物腰は柔らかい」。そんなバランス型の齋藤氏が強調したのが、2年間進めてきたDX戦略の反省点だ。齋藤氏は「グループDX戦略本部が進めてきたことが事業会社から理解を得られていないことがあり、(不満が)様々なところから聞こえてきた」と断じ、「対話やコミュニケーションは常に意識しないといけない」と伊藤氏の発言と足並みを揃えた。実際、その反省を踏まえ、DX部門の姿は短期間で大きく変えられた(※左下図)。

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齋藤氏の発言の中で印象的なワードが登場する。それが“DXガバナンス”だ。齋藤氏はこう述べた。「今、問われているのがDXガバナンスで、一度立ち止まってあるべき姿を目指す」。IT人材の大量採用や新会社発足を柱とする米谷路線を、「ガバナンスが欠如していた」と“一刀両断”したわけだ。米谷氏が引導を渡された会議で、伊藤氏と齋藤氏は淡々とではあるものの、内容的に厳しい批判の言葉を重ねた。そして、ハイライトが終盤に訪れる。今まで厳しい批判が向けられていた米谷氏に対して、最後の発言の機会が与えられたのだ。一連の総括を受け、最後にカメラの前に登壇した米谷氏。いや、登壇させられたというべきかもしれない。やや落ち着かない様子で語り始めた米谷氏は、「経営からの期待に十分応えられなかった」と自責の念を示した。しかし、目立った弁明をすることもなく、最後は「2年半、お世話になりました。ありがとうございました」と締めた。巨大流通グループのDX戦略を率いた人物の最後の発言は、僅か2分半程だった。全体で20分超の社内会議は、米谷路線との決別の為の“儀式”だったのかもしれない。米谷氏が席を外した直後、事務局の男性が追い打ちをかけるように、こうアナウンスした。「ライスプロジェクトは本日をもって解散となります」。社内会議の一連の発言で明らかになったのは、DX敗戦の責任を米谷氏やDX部門になすり付けるような経営幹部の姿である。しかし、抑もDXとは単なるデジタル化ではなく、経営や業務そのものを変革することだ。それ故に、経営幹部にはDX推進の為の現場の反発や組織間の摩擦を乗り越え、従来のやり方やカルチャーをも変える覚悟が求められる。米谷路線にGOサインを出してきたという点でも、経営幹部は米谷氏らに責任を全て押し付けることはできないのだ。単に“クビ”をすげ替えるだけでは、DXは迷走するばかりだ。


キャプチャ  2022年2月12日号掲載
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