フェイクニュースが“産業”になる東欧の貧国――コピペで嘘を量産する失業青年、“ポスト真実”時代の新風景

20170315 06
バルカン半島にあるマケドニアと聞いて思い当たる読者は、相当なヨーロッパ通である。旧ユーゴスラビアから1991年9月に独立し、人口は約200万人。ユーゴ内戦時以外に同国がニュースになったのは、正式名称である“マケドニア共和国”が、隣国のギリシャから「マケドニアとは我が国の歴史的地名である。紛らわしい名前を付けるな」と抗議され、国際問題化した時くらい。国語であるマケドニア語も、ブルガリアから「そんな言葉は無い。ブルガリア語の方言だ」と扱われる。国名と国語という独立国の基本的要件さえ国際的認知を得られない国に、昨秋から世界中の大手メディアの特派員たちが足を運んでいる。この国の山間部にあるヴェレスという人口5万人の町が、国際政治の震源地になっているからだ。取材したイギリス人記者は、「驚くほど何も無いところ。非常に寂れた印象だった。英語はかなりブロークン」と言う。ヴェレスには以前、窯業があり、ユーゴ時代にヨシップ・ブロズ・チトー大統領のディナー食器を作っていた。“チトーのヴェレス”と名乗ったこともある。そんな場所が、世界中を混乱させている“フェイクニュース”の発信源なのだ。昨年初め、この町の失業中の若者が、アメリカのニュースサイトの記事をコピーして、数語だけ変えたフェイクニュースを作り、自身の『Facebook』に投稿したところ、予想外の人気を得て、広告まで付いて、幾らかの収入を得た。町の平均月収は3万~4万円と推計される。忽ち若者たちが夢中になった。“USコンサーバティブ”・“ドナルドトランプニュース”等、実在しないがそれらしい適当なサイト名を付け、コピペした本物の英語ニュースの僅かなキーワード(※例えば“クリントン優勢”を“トランプ優勢”に)変更をすれば、立派なフェイクニュースができあがる。1つのフェイクニュースサイトへのアクセス数は10万単位になり、寂れた町に突然、“フェイクニュース成金”のベンツやBMWが溢れるようになった。

昨年11月のアメリカ大統領選前には、150ものフェイクニュースサイトがヴェレスで運営されていた。「連中は、満足な英語教育も受けていない。当初は『国際的陰謀でも潜んでいるのか?』と考えたが、話を聞けば聞くほど単純な作業であることがわかった」と前出のイギリス人記者。インターネット上には翻訳ソフトや各国語のワープロソフトが溢れており、高い言語能力は不要である。数百人の若者が、フルタイムで“嘘を考える”ことに没頭した。尤もらしい偽情報で世論操作する手法は、非常に歴史が古い。“スパイ大国”のアメリカ・ロシア・中国の得意技で、現にロシアは“インターネットリサーチエージェンシー”といった大規模で精巧なフェイクニュースサイトを持っていた。今回は、ロシア人のプロのサイトが、バルカン半島の素人に完全にお株を奪われてしまった。ヴェレスの町長は各国テレビ局との会見に応じて、「若い連中に仕事ができていいことじゃないか」と語った。「嘘を奨励するのか?」といった道義的な質問には、「汚いカネじゃない」と相手にしなかった。若者たちのコピペは盗作でもあるが、元記事の筆者等からの訴えは表面化していない。バルカン半島の失業者たちは、今年も稼ごうと虎視眈々だ。4~5月のフランス大統領選挙や今秋のドイツ総選挙等、重要な政治イベントが目白押しなのだ。中でもドイツでは、既にフェイクニュースの横行が重要な政治・社会問題になっている。ここにはドナルド・トランプ大統領のようなキャラクターがいない為、話題は専ら難民・移民である。ドイツ語圏でフェイクニュースを監視する『Hoaxmap.org』によると、昨年2月以降、難民・移民の“犯罪”をインターネットやSNSに流して、その後、事実無根と判明したケースは450件以上ある。この数字は、実際に捜査や調査が行われたものに限られる為、「難民に体を触られそうになった」といった無数の投稿は、事実なのか流言飛語なのか判明しないまま、ドイツ社会に浸透していく。アンゲラ・メルケル首相は、難民関連のフェイクニュース横行が自身の再選に大きく影響することをよく知っている。ドイツ政府は各地の警察・捜査機関に「悪質な事案は訴追せよ」と指示し、“レイプ情報”・“強盗・暴行情報”のでっち上げには厳しい姿勢で臨んでいる。だが、フェイクニュースの供給者たちは、動画や写真の投稿といったより手の込んだ手法で、アクセスを広げている。フェイクニュースと当局の追いかけっこでは、当局側に勝ち目がない。そこで、大連立に加わる社会民主党のハイコ・マース法務大臣は昨年末、Facebookや『Google』等のSNSやインターネット検索大手にも責任を持たせる方針を示唆した。独紙との会見の中でマース大臣は、「ドイツの名誉毀損関連法はアメリカより厳しい。“表現の自由”が、個人攻撃や名誉毀損になることは許されない」とし、インターネット・SNS各社にフェイクニュース規制を義務付ける方針を示した。

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尤も、フェイクニュースの識別自体が大問題だ。“フェイクニュース撃退”を掲げるサイトは、既に無数に存在する。中には“気候変動のフェイクニュースを見分ける方法”という、それ自体がフェイクニュースの塊というサイトも多い。既に西欧やアメリカでは、“嘘でも言ったほうが勝ち”という風潮が蔓延している。“ポストトゥルース”と呼ばれる現象で、イギリスの『オックスフォードディクショナリー』は昨年、この言葉をその年を代表する『ワードオブザイヤー』に選んだ。同辞書の定義では、「世論形成において、客観的真実よりも、感情や個人的信条への訴えかけのほうが影響力を持つ状況」としている。1990年代から存在した言葉だが、使用頻度は昨年6月以降、劇的に増加したという。ヨーロッパには既に、フランス語の『ポストヴェリテ』等、各国語版が広がっている。最後に、フェイクニュース産業が今後も発展することの証左を紹介しよう。発足したばかりのトランプ政権は、「大統領就任式に集まった人は史上最多だ」(ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官)という容易に反証可能な大嘘で幕を開けた。示唆的なのは、発言を軌道修正した時の言葉である。報道官は、「時には事実(複数形)で見解を異にすることもある」と述べた。別の高官はテレビ取材に、「別の事実(オルタナティブファクツ)というのがある」と言うと、即座にキャスターから「それは虚偽というものです」と反撃された。事実以外に“トランプ版真実”があるのだという。マケドニアの若者は失職だろうか?


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