【獅子の計略・習1強時代へ】(04) “宇宙強国”、軍事利用の影

20170316 02
直径500mの巨大な“目”が、宇宙を見上げていた。貴州省の山奥で、昨年9月から運用が始まった世界最大の電波望遠鏡『天の眼』だ。サッカーコート30面分に相当する銀色の球面アンテナで、宇宙空間から発せられる電波を受信し、宇宙の起源の解明や地球外生命体の発見にも期待がかかる。「こんなに凄い物を作れる中国を誇りに思う」。同省の男性観光客(30)は目を輝かせた。習近平国家主席が天の眼を通じて見つめるのは、“宇宙強国”の夢だ。昨年11月、各国のメディアがアメリカ大統領選でのドナルド・トランプ氏当選を一斉に報じていた頃、中国中央テレビは、習主席が右手に白い受話器を握り締め、高度約400㎞の宇宙実験室『天宮2号』で30日間滞在に挑戦していた宇宙飛行士2人をテレビ電話で激励する様子を生中継していた。飛行士らは無事帰還し、中国が2022年前後の完成を目指す独自の宇宙ステーション建設に弾みを付けた。昨年12月に習政権が発表した『宇宙白書』には、“今後5年の計画”として、世界初となる月面裏側着陸や、火星着陸探査といった野心的な事業が盛り込まれた。宇宙では長年、アメリカとロシアが“強国”だったが、「2030年頃には中国が世界の“宇宙強国”に上り詰める」と中国政府高官は言い切る。中国は宇宙の平和利用を主張している。だが、宇宙開発と軍事技術は表裏一体だ。

先月中旬、北京のある会議室のほぼ中央に、軍服姿の男性が陣取った。年内に打ち上げ予定の月無人探査機『嫦娥5号』プロジェクトの副総指揮長で、軍機構改革で昨年1月に新設された『戦略支援部隊』副司令官の李尚福氏だ。中国の宇宙開発は軍が密接に関与しており、中でも戦略支援部隊は、ロケットの打ち上げや人工衛星の運用等を担当しているとみられる。人工衛星は敵の偵察だけでなく、『全地球測位システム(GPS)』による兵器誘導や、自軍への位置情報通知等に活用される。軍事筋によると、中国軍はアメリカ軍がイラク攻撃やアルカイダ元指導者のウサマ・ビンラーディン殺害作戦ツで展開した精密誘導攻撃を参考に、人工衛星や情報通信技術を駆使した軍事行動を詳細に研究しているという。習主席は2015年秋の北京での軍パレードで、宇宙利用が不可欠な戦略ミサイル等最新兵器を披露する一方、今年末までに30万人の兵力削減を約束した。軍縮ではなく、削減した人件費を戦略支援部隊等の装備増強に振り向ける“強軍戦略”の一環だ。これに水を差す不穏な動きが表面化した。習主席が進める汚職摘発キャンペーンの拠点『共産党中央規律検査委員会』が入る北京中心部のビル付近は一昨日、迷彩服姿の数百人で埋め尽くされた。退役後の待遇改善等を求め、全国から集まった元軍人らだ。昨年10月、数千人が軍中枢の建物『八一大楼』前で行った抗議活動に比べれば規模は縮小したが、苛立ちの度合いは増している。「軍にいる時は、『祖国は君たちを忘れない』と言われた。結局、俺たちは国に見捨てられた」。北京に隣接する河北省の元軍人(49)は、声を荒らげた。1999年に退役し、地元の国有企業の職を斡旋されたが、月給は僅か250元(約4000円)で、民営化を理由に間もなく解雇された。縋る思いで前回の抗議に加わったが、当局の監視が強まっただけ。一昨日は北京に到着した途端に当局に連行され、抗議すらできずに追い返された。それでも、「何度でもやる。俺たちに他の方法は無い」と話す。天空を見つめる習主席の足元で、間欠泉のように噴き出した不満――。対応を誤れば、打ち上げられた“宇宙強国”の夢は失速しかねない。


⦿読売新聞 2017年2月24日付掲載⦿
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