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【中国共産党100年・強権解剖】第1部・源流(08) 台湾海峡は国際問題と化した

20220527 17
北京の『天安門広場』は『文化大革命』(※1966~1976年)や、1989年の中国人民解放軍による民主化運動の鎮圧等、現代中国の歴史の様々な舞台となってきた。今月1日には、中国共産党創建100年を記念する祝賀大会が開かれ、党を率いる総書記(※国家主席)の習近平が天安門楼上から演説した。広場に動員された約7万人の党員らに、台湾問題で檄を飛ばした。「祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の揺らぐことのない歴史的任務だ…如何なる台湾独立の企みも断固として粉砕する」。“粉砕”という表現は毛沢東時代、国内外の敵に使われた。習がこの言葉を敢えて用いたのは何故か。「台湾問題は時代と共に変化してきた」と語るのは、台湾の中央警察大学教授で中国問題専門家の董立文である。共産党との国共内戦で敗れた中国国民党が1949年に台湾に逃れて以降、中台は内戦の延長のような時代が続いた。1958年には中国が福建省対岸の台湾・金門島を砲撃する事件も起きている。その間、アメリカのドワイト・デヴィッド・アイゼンハワー政権は朝鮮戦争休戦後の1954年、中国を警戒して台湾の蔣介石政権と『米華相互防衛条約』を締結。金門島砲撃の際も空母を台湾海峡に集結させる等、台湾は米中間の問題となっていく。1979年の米中国交正常化に伴う米台断交後も、アメリカは台湾関係法を制定し、台湾への武器供与を続けた。そして、先月のG7サミットで台湾問題は新たな時代に入る。首脳声明に初めて“台湾海峡の平和と安定”が明記されたことを受け、中国と国際社会の問題になったのだ。

今、習が最も恐れるのは「国際社会が(口先介入ではなく)本格的に台湾海峡に介入してくることだ」と董はみる。習が“断固粉砕”と威圧したのは、恐怖の裏返しに他ならない。1949年10月の中華人民共和国建国当時、“台湾を解放し祖国を統一する”をスローガンに掲げる毛沢東は、台湾への武力侵攻を本気で考えていた。しかし、翌年6月に朝鮮戦争が勃発すると、アメリカ軍が第七艦隊を台湾海峡に派遣。軍事的に不利な立場に立たされ、台湾侵攻を断念せざるを得なくなった。毛は、「台湾を攻略する最高のタイミングを逃した。大きな過ちを犯した。取り返しのつかない過ちだった」と周囲に漏らしたとされる。一方、改革開放政策を進めた鄧小平は“平和統一”を強調し、一国二制度による台湾問題の解決を目指した。鄧は密使を通じて当時の台湾の総統、蔣経国に手紙を送り、「祖国統一は私たちの世代の使命だ」と強く訴えていた。だが、蔣経国は1988年1月に急死。台湾出身の李登輝が総統に就任すると、統一の話は宙に浮いた形となった。鄧は1989年5月、ソビエト連邦共産党書記長だったミハイル・ゴルバチョフと北京で会談した際、こう語ったという。「私の人生には一つだけやり残したことがある。それは台湾問題だ。解決は恐らく無理だろう」。台湾問題に転機が訪れるのは2012年、習が総書記に就任してからだ。習は32歳から49歳まで台湾の対岸、福建省で地方指導者を務め、台湾問題の専門家との自負がある。台湾との統一は、自らの政権スローガンである“中華民族の偉大な復興”に不可欠な“偉業”と考えているようだ。2015年、台湾の総統だった馬英九との中台初の首脳会談を実現させる等、台湾問題で様々なアプローチを試みた。しかし、2016年に台湾独立志向の蔡英文政権(※民進党)が誕生すると、中台関係は悪化に転じた。焦った習は2019年1月、悪手を打つ。台湾に関する演説の中で「台湾は最終的に中国に統一されることになる」と強調し、その選択肢として「武力行使を排除しない」と明言したのだ。この露骨な脅しに台湾では嫌中感情が高まり、低迷していた蔡の支持率は一転して上昇。2020年の総統選で蔡の再選を許すことになってしまうのである。そして、今月1日の習演説。「独裁政権が物々しい言い方をする場合は、殆ど自信がない時だ。台湾海峡を取り巻く今の環境は、中国にとって決して有利ではない」と董は語る。中国は台湾について「内政問題だ」と主張し、外国の介入を拒み続けている。しかし今や、台湾は強権・中国と対峙する民主主義陣営の最前線なのだ。中国に対する海外の見方も、この100年で様変わりした。第2部では国際社会に視点を移し、中国共産党を考える。 《敬称略》 =第1部おわり

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三塚聖平・矢板明夫・黒瀬悦成・河崎真澄・田中靖人・桑村朋・藤本欣也が担当しました。


キャプチャ  2021年7月8日付掲載
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