【霞が関2017春】(02) 住宅ラッシュと空き家問題…国交省のジレンマ

国土交通省が空き地対策に乗り出した。人口減少で、虫食い的に出現する空き地が全国に広がっている為だ。相続・贈与で取得した土地を放置するケースも目立つ。先行する空き家対策と合わせて、遊休地の有効利用を探るが、思わぬ壁になるのが住宅政策だ。2013年時点の全国の空き地は1554㎢と、10年前に比べて2割弱増えた。中心部の空き店舗の買い手が付かずに空き地になるケースや、郊外に住む人が減って住宅地が空き地になるケース等、理由は様々。駅周辺に広大な駐車場が広がる光景も地方都市に共通しており、低未利用地を含む潜在空き地はもっと多い。放置すれば、防災や防犯上の問題に留まらず、非効率な行政や地価の低下を招く。国交省は今年に入り、土地利用と都市計画という異なる切り口から、空き地対策の検討会を相次ぎ立ち上げた。空き地再生に有効な日本版“ランドバンク”や、維持・管理まで含めた都市計画の在り方を議論している。自民党も空き地・空き家対策に熱心で、来年度の国土交通行政の大きな焦点になるのは間違いない。その際、避けて通れないのが住宅政策だ。空き地・空き家問題の根っこには、世帯数を大きく上回る住宅ストックがある為だ。今年1月の新設住宅着工戸数(季節調整済み・年率換算値)は、8ヵ月ぶりに節目の100万戸を超えた。東京オリンピックの選手村建設という特殊要因を割り引いても、好調を維持している。牽引するのは相続税の節税目的のアパート建設だが、住宅ローン減税による後押しも見逃せない。

ローン残高の1%を所得税額から控除できる仕組みで、減税額は10年で最大500万円。消費税率上げの影響を和らげる狙いで始まったが、増税が延期される度に適用期限が後ろ倒しになり、今は2021年末まで有効だ。日本の新設住宅の内、住宅があった場所に建てられる再建築率は9%程度に留まる。現状では、「新しい住宅を建てれば建てるほど、空き地や空き家の予備軍を増やしている」と言える。「税制面で住宅建設を力一杯後押ししつつ、片方で空き地・空き家対策を迫られる」という矛盾した状況にある。日本の現状を“住宅過剰社会”と呼ぶ東洋大学の野沢千絵教授は、「問題は、野放図な居住地の拡大が止まらないことだ」と警鐘を鳴らす。中心部は空き地でスカスカなのに、地価の安い郊外の宅地開発が止まらないという自治体は多い。300を超す自治体は人口減少を踏まえて、街のコンパクト化を進めようとしているが、住宅の郊外立地が止まらなければ“絵に描いた餅”に終わる。住宅投資は国内総生産(GDP)を動かす要因となる為、手っ取り早い景気対策として使われてきた。住宅業界や国交省が住宅減税に熱心なのは、直ぐに業界や景気が潤う為だ。だが、日本の世帯数は2019年にも頭打ちになる見通し。住宅政策が住宅ストックの充実を意味していた時代は終わりつつある。専門家の間では、自治体毎に住宅の総量に歯止めをかけたり、立地によって住宅ローン減税の対象を絞り込んだりする案が出ている。空き地・空き家問題は、国交省が住宅過剰というジレンマに向き合わなければ、その場凌ぎの対策に終わる。 (木原雄士)


⦿日本経済新聞電子版 2017年3月14日付掲載⦿
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