【中外時評】 正念場迎える独仏同盟

ドイツとフランスの同盟が正念場を迎えている。大量の難民流入、イギリスの『ヨーロッパ連合(EU)』離脱、アメリカでのドナルド・トランプ政権誕生等で、これまでとは環境が大きく変わった。各国の総選挙等の結果次第では、長年、ヨーロッパ統合を推し進めてきたコンビに亀裂が入り、統合の根幹を揺るがしかねない。今月6日、パリ近郊のベルサイユ宮殿に、両国とイタリア、スペインを加えた4ヵ国の首脳が集まり、EUの将来像を話し合った。イギリスの離脱手続きが進む中で、改めて結束の重要性を訴えた。フランスのフランソワ・オランド大統領は、「前に進まなければヨーロッパは解体に向かう」と強い危機感を示した。ドイツのアンゲラ・メルケル首相も同調し、ヨーロッパ統合を連携して引っ張ってきた両国が先頭に立つ姿勢を印象付けた。通貨危機やギリシャの債務危機等、数々の危機を共に乗り越えてきた実績もある。だが、今回の難所は一筋縄では越えられそうにない。元々、盤石のコンビではなかった。交戦国だった両国は、戦後の和解を経て、徐々に協調関係を築いてきた。対立も度々起きたが、ヨーロッパ統合を進めていく過程で、結果として同盟を強めることになった。1989年11月に『ベルリンの壁』が崩れると、西ドイツのヘルムート・コール首相(当時)は直ぐに東西再統一に動いた。フランスのフランソワ・ミッテラン大統領(当時)は、これを絶対に阻止するとして、イギリスのマーガレット・サッチャー首相やアメリカのジョージ・H・W・ブッシュ大統領(共に当時)に強く働きかける。その結果、独仏は深刻な対立に陥った。しかし結局、フランスは協調路線に転換する。ミッテラン大統領は、「ドイツが強い通貨であるマルクを放棄して通貨同盟に参加すれば、その強大化を抑えられる」と考えたと言われている。統一ドイツをヨーロッパの枠内に封じ込める“ドイツのヨーロッパ化”路線だ。

統合の推進で利害が一致した独仏コンビは、1999年の単一通貨『ユーロ』の導入や、EUの拡大・深化を推し進めた。ところが、実際に統合が進んでくると、フランスの思惑は見事に外れてしまう。ギリシャの財政危機が表面化した2009年以降、ドイツの存在が一際大きくなったからだ。ギリシャやスペイン等南欧の債務国では、銀行の不良債権問題等で金融危機が起き、失業率も高まった。対策として緊縮財政を強いられ、苦境が続く。ドイツは労働市場等の構造改革を進めて、高失業率等を克服し、価格競争力が向上していた。この為、ユーロの利点を活用できた。新たにユーロ圏に入ってきた東欧諸国向けに輸出を伸ばし、巨額の経常黒字を稼ぎ出す。“ドイツ一人勝ち”の状況が生まれる。同盟は徐々に、“盟主”ドイツをフランスが支える形に変質する。この間、メルケル首相とニコラ・サルコジ大統領(当時)、メルケルとオランドと、コンビは変わるが、ユーロ危機を乗り越える過程で各国に厳しい財政規律を課す等、“ヨーロッパのドイツ化”を進めた。同盟はあっても、フランス国内では不満が膨らみ続けた。高い失業率や財政赤字が続き、ドイツとの格差が一段と広がったからだ。ドイツの経済力を抑える筈のユーロは、フランスには割高で、輸出促進に不利に働いたともみられている。こうした不満を背景に、反ユーロ・反EUを掲げる極右政党『国民戦線(FN)』が支持を広げている。マリーヌ・ル・ペン党首は愛国主義・排外主義を訴えて、ユーロ圏からの離脱を口にし、メルケル政権を批判してきた。難民の流入やテロ続発で高まる不安を背景に支持を拡大しており、4~5月の大統領選に勝利すれば、同盟崩壊に繋がる恐れもある。更に、亀裂を広げかねないのがアメリカの動きだ。トランプ政権は“アメリカ第一”の立場から、メルケル政権の難民政策や経済政策を厳しく批判し、対決姿勢を強めている。これにルペン党首は同調しており、アメリカが独仏同盟に楔を打つ構図も見えてきた。ヨーロッパ統合は、“盟主”ドイツだけでは立ち行かない。イギリスに続いてフランスが離反すれば致命的だ。将来像も含め、体制立て直しを急がないと、統合は崖っぷちに立たされる。 (論説委員 玉利伸吾)


⦿日本経済新聞 2017年3月16日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR