【仁義なきメディア戦争】(18) テレビは“暇潰し”ではなくなった…『サザエさん』視聴率急落の深刻な事情

20170321 15
先月、『ビデオリサーチ』は、関東地区の視聴率調査において、“タイムシフト(録画再生)視聴率”という新指標を誕生させた。現状、テレビ広告の指標として用いられているのは、テレビ放送と同時での視聴を示す“リアルタイム視聴率”のみだが、タイムシフト視聴率は、放送番組を録画後7日内に再生して見る人の割合を示す指標となる。同社によると、TBSテレビ系で放送されているドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の初回は、リアルタイム視聴率10.2%対して、タイムシフト視聴率は10.6%。今や、録画再生視聴のほうが多い番組もあることがわかった。録画再生視聴は、家族等他の人に邪魔されない時間にじっくり番組を見る行為――つまり“専念視聴”を意味する。“テレビに集中している”という点で考えると、その瞬間に見ることが重要なニュースやスポーツ中継もまた、専念視聴だと言えるだろう。今、こうしたテレビの見方が相対的に増えている。民放のテレビ番組のイメージについて、同社は10年ほど前、次のような調査結果を出していた。「退屈しのぎ・暇潰し」54.1%、「気分転換・ストレス解消」50.5%、「生活の一部になっている」45.2%…。つまり、帰宅し、特に用事が無いとテレビをつけ、ザッピングで何となく見る番組を選ぶことが生活習慣となっている人がかなりいたのである。今や、テレビを取り巻く環境は大きく変わった。例えば、テレビが最も見られるゴールデン帯(19~22時)のHUT(総世帯視聴率)は、過去15年で約70%から62%と8ポイントも下がった。レンタルビデオ・テレビゲーム・カラオケ等が一般化し、娯楽の多様化が進んだことが大きい。

NHKと民放キー5局の合計視聴率は15ポイント以上の縮小と、HUT以上に減っている。しかも、15年間の緩やかな低落傾向は、2014年以降、テンポを速めている。その最大の原因は、デジタル録画機が普及し、録画再生視聴が急増していること。更にはスマートフォン等が急速に普及し、インターネット接続端末の利用時間が増えていることである。民放のイメージ首位だった“退屈しのぎ・眠遺し”という役割は、確実に減っている。スマホ等テレビ以外のメディアが普及し、生活者の多くはそれらに“暇潰し”や“慰安”を求めるようになった。『電通総研』の調査では、スマホ所有者のアプリ起動率がテレビのHUTを上回り始めているという。そこで行われているのは、ソーシャルメディアでの知人・友人とのコミュニケーションであり、ゲーム等である。「テレビを見ながら」という人も少なくはないが、明らかに意識はテレビからスマホに移り始めている。テレビを取り巻く環境が変わると、テレビの見方にも変化が生じる。例えば、ドラマの視聴率は過去20年間で大きく減少した。トレンディードラマ全盛期に、フジテレビの月曜21時台ドラマ(月9)の視聴率は、年間平均で20%を超えていた。ところが、2013年には15%を切るようになり、今年は1桁がほぼ確定的だ。「月9がつまらなくなった」等の批判もあるが、ドラマを録画再生で見ることが一般的になり、テレビ局が作った編成時間に合わせて見る人が減ったことが理由だろう。1969年の放送開始から今年で48年目に突入している日本最長寿のアニメ番組『サザエさん』(フジテレビ系)の視聴動向には、まさにこのテレビの見方の変化が表れている。番組の月間平均視聴率は、2014年2月に21%超だったが、2015年には15%を割り込むようになり、今年度に入ると13%に届かなくなった。しかも、今年5月22日放送分は7.7%、7月3日は9.9%、8月14日は8.2%、8月28日は8.6%と、1桁が4回もある。今年度は、このまま行けば13%未満は必至だ。ここ2~3年で視聴率は半分近くに急落している。右上図は、『データニュース』が毎日3000人のテレビ視聴動向を追う“テレビウォッチャー”の同番組に関する過去5年のデータである。月間平均接触者数は視聴率と同じように右肩下がりだが、録画をする人の数は5年間殆ど変化がない。つまり、「是非見たい」と思っている人の数はあまり変わっていないが、「テレビをつけたらやっていたから何となく見た」といった人が、ここ数年で急速に減っているということになる。これは、“暇潰し”番組という位置付けの限界を示していると考えられる。サザエさんの視聴率調落は、テレビ全盛期の終焉を意味する。だが一方で、新たなビジネスモデルを開拓する転換期と見ることもできそうだ。

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例えば、若年層をターゲットとする深夜アニメの場合、DVDや有料配信等2次展開を前提に放送されている。子供向け朝・夕方アニメ『魔法つかいプリキュア!』(朝日放送/テレビ朝日系)や『妖怪ウォッチ』(テレビ東京系)等は、関連グッズの販売収入が大きなウエートを占める。『クレヨンしんちゃん』『ドラえもん』(共にテレビ朝日系)、『名探偵コナン』(読売テレビ/日本テレビ系)等も、映画化やDVD等の2次展開による収益寄与が大きい。これらに対してサザエさんは、視聴率に基づく広告収入だけだ。視聴率が落ちてくると、次第に厳しい局面を迎えざるを得ない。映像情報を提供するサービスは今、他の事業との連携の中で価値最大化を目指す時代に入っている。リアルタイムの放送が世の関心の大公約数を集め、その後に特定層向けに映画・DVD・イベント・関連グッズ販売等で新たな収益を上げる。更に、トップを行くリアルタイムの放送の影響力を高める為に、番組宣伝としてミニ動画・記事・SNS展開等が必要で、見逃し配信等にも着手しなければならなくなっている。筆者は、これを“雁行メカニズム”と呼んでいる。雁の群れは、先頭を行く唯の羽ばたきにより、斜め後方に浮力が生まれ、それを利用して他の雁が楽をして飛ぶと言われる。だから、V字型の隊形を保っているらしい。テレビの圧倒的な地位は今後、間違いなく相対的に低下していく。それでも、個別のテレビ番組が全メディアのコンテンツの中で最も大きな影響力を持つ時代は、未だ10年は続くだろう。だとすると、テレビ番組を先頭にしてその力を利用しながら、全体の価値最大化を図る雁の群れをどう形成するか――。民放各局は、マネジメント能力が問われる時代になると見る。 (メディアアナリスト 鈴木祐司)


キャプチャ  2016年11月19日号掲載



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