【Test drive impression】(13) 『スズキ ワゴンR HYBRID FX 2WD』――軽トップの座を奪還するべく元王者がフルモデルチェンジ!

バブル崩壊直後の1993年生まれ。昨年12月の時点で累計販売台数は約440万台という国民車――。それが、元祖セミトール軽の『ワゴンR』。しかし現在、一番人気の座は、ワゴンRよりも背が高く、両側スライドドア付きの驚異の実用車『N-BOX』(ホンダ)に奪われております。そんな現状を踏まえ、先月フルモデルチェンジしたのが、6代目となる新型ワゴンR。一体、どういう手法で巻き返してくるかと思ったら、奇天烈戦略です! 先ず驚いたのは、前代未聞の3フェイス化。今まではシンプル顔のノーマル、ワイルド顔のスティングレーの2本立てでしたが、新型6代目はシンプル顔の“FA”・“FX”グレードに、先代までならスティングレーと呼んでいた2段重ねの顔を“FZ”と名付け、最後に嘗てないワイルド顔を“スティングレー”として新たに位置付けしたのです! しかも、この新型ワゴンRスティングレーの顔が、「それ本気?」って言いたくなるほどのデフォルメ路線。パワフルさとグロさのギリギリ中間地点で、フロントグリルが巨大化し、「左右の目を押し潰す気?」っつう超センター隆起型の強烈インパクト! 抑々、ワゴンRはシンプルな美しさで、“走る無印良品”とも言われていました。ところが、新型ワゴンRは「嘗てのシンプルな美しさはどこへ行ったの?」って格好になっている訳ですね。「これって迷走?」という訳で、試乗会で新型ワゴンRのエンジニアを直撃したところ、一安心。新型が狙ったのは原点回帰でした。ズバリ、「あの素晴らしいワゴンRよ、もう一度!」作戦だったのです。

そいつが確信できたのは、数日借りて乗ってみたノーマルワゴンR。か~なり真剣に原点に立ち返っているのがわかります。ワゴンRといえば、初代の程よい楕円フォルムの中に鏤められた“真四角デザイン”がポイントでした。それが実用性と真面目っぽさを醸し出していた訳ですが、4代目・5代目はかなり今時なミーハー吊り目ライトや、流麗ディテールに毒されていました。けれど、新型はまさに初代のリボーン! 真面目な真四角へッドライトを左右にドカ~ンと備え、分厚くて横長なボンネットにキッチリ納めています。グリルも横長角張りフォルムで、リアもシンプル且つ低価格で収まるリアバンパー半埋め込み型です。一見派手ですが、お金がかかるバックドア埋め込み型や左右タテ型テールライト等、一切使っていません。唯一お洒落っぽいのが、何だかイルカの背鰭みたいなセンターピラーですけど、後ろの実用スペースをフロントのイメージと分ける為のデザイン的工夫。ちょっとルノー・カングーっぽいムードが漂っています(笑)。実は、新型ワゴンRで気に入ったのは、見た目よりもインテリア。正直、乗った瞬間に「予想より全然質感いいじゃん!」状態。ソフトパッド等は一切使われていないけれど、全面が決して安っぽくないクリーム系樹脂で覆われていて、更にフォルムは全域で横長の棚! 『フィアット』の初代『パンダ』や『ホンダ』の初代『シティ』もそうだったけど、明らかに実用優先なのに機能美まで感じられるもの。それでいて、グレードにもよるけど、軽初(!)のヘッドアップディスプレイや、『Apple CarPlay』対応のタッチスクリーンナビを装備。序でに、意外なクオリティーの高さで感心したのが、デジタルなフルオートエアコンパネル。シンプル且つオシャレで、操作もし易い。これはマジでよくできています。

気になる肝心の走りですけど、プラットフォームは現行の『アルト』から使われてる軽量高剛性のハーテクト。ビックリしたのは車重の軽さ! 全高1.6m台ながら全車850㎏以下で、最軽量のノンハイブリッドモデルは750㎏! なので、たった52馬力のノンターボ660㏄直3エンジンでもそこそこ走るんですね。扨て今回、スズキが得意とするマイルドハイブリッドシステムもリニューアルされて、良くなっています。モーターも電池容量も相変わらず小さいです。けれど、アルト用より強化された3.1馬力のモーターと、容量が約3倍になった120kWhのリチウムイオン電池を使って、見事にパワーアシストします。今回から約10秒のみ、EV走行も可能。超ノロノロですけど(笑)。ただ、マイルドハイブリッド付きならノンターボでも街中ではそこそこ速いし、モード燃費もリッター当たり33.4㎞! 軽のセミトールワゴントップの数字なのは勿論のこと、マジでストロングハイブリッドカーに匹敵するレベルに成長しています。正直、スゴい技術じゃないけれど、スズキらしいケチケチ軽量ボディ&プチハイブリッド技術で、『トヨタ自動車』の『アクア』に対抗できる燃費性能を誇ります。走り味は、同じ骨格を使ったアルトより微妙にしっかり。室内の広さはプラットフォームから一新しているので、前後シート間隔が35㎜伸びて、リアシートを一番後ろにスライドさせても、身長175㎝の成人男性が思いっ切り足を伸ばしても前席シートに付かないくらい。逆にスライドを前にすると、ラゲッジ容量は結構広く取れます。気になる価格は107万円からのスタート。マイルドハイブリッド付きの117万円スタートはマジで安いです。まさに完全復活! けど、そう言えるのはノーマルボディーだけですが(笑)。


小沢コージ(おざわ・こーじ) 自動車評論家・『日本カーオブザイヤー』選考委員。1966年、神奈川県生まれ。青山学院大学卒業後、『本田技研工業』に入社。1990年に『二玄社』に転職し、自動車雑誌『NAVI』の編集を担当。1993年からフリーに。『週刊自動車批評』(TBSラジオ)にレギュラー出演中。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)・『マクラーレンホンダが世界を制する!』(宝島社新書)等。


キャプチャ  2017年3月27日号掲載




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