【トランプ主義・揺れる不法移民】(上) 国境に引き裂かれる家族

アメリカのドナルド・トランプ大統領は施政方針演説で、移民を巡る制度改革を進め、「アメリカとメキシコとの国境に壁を建設する」と改めて強調した。“社会の安全”の為に不法移民の排除を掲げるトランプ政権。国境周辺で不安定な立場に揺れる人々の姿を追った。

20170322 09
メキシコ北部の国境の街・ティフアナには、不法移民としてアメリカから強制送還されたメキシコ人の為の生活支援施設が点在する。その1つ、『移民の家』で2ヵ月余りを過ごしたカルロス・ロザノ(24)は先月下旬、妻子が暮らすカリフォルニア州に戻ることを諦めた。「警備が厳しいし、上手く入り込めても怯えながら生きるのは辛い。未来が無い」。ロザノは2歳の時、仕事を探す両親に連れられ、アメリカに不法入国した。同州サンタパウラで育ち、高校卒業後は飲食店等で働いて、アメリカ国籍の女性と結婚。長男も授かった。「地味だが幸せな生活」が暗転したのは昨秋。魔が差したのか、自分用の靴を万引きし、逮捕された。釈放されたが、職を失い、家賃が払えなくなって、一家はホームレスに。年末、道路の不法占拠の疑いで警察官に自分だけ連行され、数日後に強制送還された。不法移民の若者を強制送還の対象外とするバラク・オバマ前大統領の大統領令『DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals)』の申請対象者だったが、不法入国した両親らの情報を知られるのが怖くて、申請していなかった。『移民の家』で何もせず過ごすうちに、「このままでは妻子に会えない」と考え、夜間に国境で密入国の機会を窺った。密配業者は4000ドル(約45万円)で密入国を請け負い、お金が無くても仕事を手伝えば助けてくれるという。その仕事とは違法薬物の運搬。危険過ぎる。本当に一生、妻子に会えなくなる。「DACAを申請していれば」「万引きなんかしなければ」「ホームレスになっていなければ」――。様々な思いが過る。でも、最後に行き着く思いはいつも同じだ。「トランプが大統領にならなければ」。

アメリカ側では、「当局が不法入国者の摘発に躍起になっている」との噂も闇こえてくる。「アメリカはもう、不法移民の自分がいられる場所ではない」。そんな空気の変化を思い知らされた。メキシコ中西部のグアダラハラにいる親族に連絡すると、「仕事と住まいを用意する」と約束してくれた。親族に航空券を買ってもらい、「落ち着いたら妻子を呼びたい」と言って、記憶の無い“故郷”へと旅立った。4年前から『移民の家』運営に携わるアメリカ人牧師のパトリック・マーフィー(65)は言う。「国境管理を強化し、不法移民を敵視するトランプ大統領の姿勢は変わらないだろう。彼が大統領である限り、ロザノのようなメキシコ人の受難は続く」。ティフアナから国境を越え、高速道路を北に約10分も走ると、カリフォルニア州サンディエゴの市街地に入る。周辺を含む一帯の人口の3割強をヒスパニック(中南米)系が占める。サンディエゴ州立大学に通うDACA対象者のイツェル・ギイェン(22)が、メキシコシティーでの貧しい生活を捨て、母親らと国境を越えたのは4歳の時だった。母は清掃作業員と子守の仕事を掛け持ちし、兄とイツェルを育てた。「母はいつも、『このまま帰って来ないこともある』と言って仕事に出かけていった。たまらなく不安だった」。自身の境遇を知ったのは高校生の時。運転免許証や、友人らとティフアナに遊びに行く為の旅券の取得申請が却下された。ショックだった。そんな時、DACAが導入され、飛びついた。「自分が何者か、認められた気がした」。だが、トランプ氏が大統領に就任すると、不安が再来した。不法移民を雇う会社や飲食店が全米各地で摘発され、DACA対象者でも当局に拘束されるケースが相次ぐ。サンディエゴでは警察官の目を恐れて、買い物や通学を控える人もいる。「一番心配なのは母親」。当局に狙われそうな清掃会社に所属し、免許証も無い。母親に電話し、無事を確認するのが日課になった。「万一の時は、家族でメキシコに“行く”ことも考えている。油断せず、慎重に生きていくしかない」。表情に悲壮感が漂った。 《敬称略》


⦿読売新聞 2017年3月3日付掲載⦿
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