【トランプ主義・揺れる不法移民】(下) それでもアメリカを目指す

20170323 01
メキシコ国境に接するテキサス州マッカレン。先月下旬、中米出身の15人が、教会が運営する移民支援施設に到着した。皆薄着で、荷物を詰め込んだスーパーマーケットの袋を大事に抱えていた。扉を開くと、ボランティアに拍手で迎えられた。「ようこそアメリカへ!」。施設内に溢れる無料配布の衣類・靴・玩具を見て、エルサルバドルから来た元警備員のアントニオ(44)が喜びの声を上げた。「俺はアメリカにいるんだ!」。麻薬密売組織への協力を断ったことで、ギャングに妻を殺された。自身も銃で14発撃たれ、重傷を負った。息子(15)の身を案じ、安全なアメリカへ逃げようと決めた。2人でバスやタクシーを乗り継ぎ、メキシコとアメリカの国境までの約1800㎞を9日間で移動した。深夜、リオグランデ川を小舟で渡り、アメリカの国境警備隊の車を見つけて“出頭”した。「手っ取り早く衣食住を確保する最善の方法」だと言う。国境警備隊も、薬物密輸等犯罪への関与が無ければ摘発せず、移民支援団体に連絡して解放するのが、これまでは慣例だった。施設では2014年から、不法入国者に衣類や食事を提供し、在留許可を得られるかどうか、支援者の弁護士に相談するよう呼びかけている。教会のシスターであるノルマ・ピメンテル(63)は、「ドナルド・トランプ氏が当選して以降、不法移民対策が具体化するまでの“駆け込み入国”が殺到しているようだ」と話す。1日十数人だった受け入れ者数が、400人を超えた日もある。近年は、不法入国者のほぼ全てがグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルの中米3ヵ国からだ。過去5年で激減したメキシコとは反比例で急増している。

背景には、貧困からの脱出に加え、アントニオのように、犯罪組織による極端な生活破壊の常態化がある。アントニオは、在留資格等には関係なく生徒を受け入れてくれるアメリカの学校で、息子に勉強させるのを楽しみにしている。トランプ政権の不法移民対策については、「心配しても仕方がない」と楽観的に言う。「何故って、アメリカが自分の国よりもいいのは絶対変わらないからね」。ピメンテルも、支援を続ける意思は変わらない。「誰が大統領であっても、来る人は来る。人の流れを堰き止めるのは難しいのです」。メキシコ北部の国境の街・ティフアナ。アメリカからの強制送還者向けシェルターには現在、定員の4倍近い155人が入居する。建物の外にテントやブルーシートで寝床を設けて対処しているが、「追いつかない。何人かは野宿状態だ」とシェルター運営者のホセ・ガルシア(50)が嘆いた。実は、入居者にはメキシコ人はいない。ほぼ全員がハイチ人で、しかも殆どがブラジルからやって来て、アメリカ入りを窺う。何故か? テント生活を送るマケンソン(28)は、2010年のハイチ大地震で仕事を失い、サッカーW杯とリオデジャネイロオリンピックを控えて沸くブラジルへ渡った。ブラジル政府は人道支援として、2011~2016年にハイチ人約6万5000人を受け入れた。建設作業員として働き、妻と子供3人が暮らす母国へ送金を続けた。だが、ブラジルの景気低迷と同時に失職。ハイチに戻っても復興は進んでおらず、仕事も無い。仲間内で「アメリカは景気がいいぞ」という話になり、アメリカへの玄関口らしいティフアナに来た。ペルー、コロンビア、パナマ、コスタリカ、グアテマラを経て、ティフアナまで3ヵ月以上。昨年末に到着した。「バラク・オバマ大統領の時に入るつもりだったが、間に合わなかったよ」と笑う。ブラジルから北上するハイチ人は、昨年半ばから後を絶たず、「ティフアナには現在、1万人前後が滞留している」との情報もある。マケンソンも何れ、国境を越えるつもりだ。フロリダ州で働き始めた知人がいる。「アメリカ人がやらない仕事が山ほどあると聞く。トランプが何かしても、自分がアメリカに行かない理由にはならないよ」。安全で自由で仕事があるアメリカを彼らは目指す。その国でトランプ大統領は、「国民に安全や雇用を取り戻す」と訴えている。 《敬称略》 ※本人たちの身の安全を考慮し、氏名は一部のみにしています。

               ◇

ロサンゼルス支局 田原徳容が担当しました。


⦿読売新聞 2017年3月4日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR