【獅子の計略・習1強時代へ】(05) 祖国完全統一、遠い夢

20170323 02
中国指導者の執務室や住居がある北京・中南海。昨年末、習近平国家主席はその一角で、香港トップの梁振英行政長官を労った。習主席が“忠実な男”と評価していたとされる梁氏はその直前、3月の行政長官選への不出馬を表明していた。長官選の民主化を求める若者による2014年の道路占拠運動の収束には成功したが、「強硬姿勢が香港の独立を主張する勢力を助長した」とも批判されていた。「香港がイギリスから中国に返還されて20年となる節目の時期を任せるには力不足」として、事実上更迭されたとみられる。「新しい事業であり、問題が起きるのは正常だ」。習主席は梁氏にこう語りかけ、中国が香港に約束した20年来の『一国二制度』を“新事業”と呼んだ。今年後半の2期目政権発足を控えた返還記念日の7月1日には、節目の年の恒例となっている国家主席としての香港訪問を行い、香港統治の安定を強調する。将来的には、一国二制度による平和統一を台湾に呼びかける――。習主席にとって、未だ緒に就いたばかりの“事業”だ。習主席の強い意思を背景に、中国が香港支配を強める為の準備は着々と進む。長官選には、香港政府ナンバー2の政務官だった林鄭月娥氏(59)と、前財政官の曽俊華氏(65)らが出馬を表明している。香港メディアによると、中国共産党序列3位である全国人民代表大会常務委員長の張徳江氏が今月初め、香港と接する広東省深圳を訪れて、香港の財言人らを呼び出し、親中派の林鄭氏を「(最高指導部の)党政治局が支持する唯一の候補者」と持ち上げた。

民主派からも支持を得て、勢いを伸ばしそうな曽氏を牽制し、林鄭氏への投票を働きかける露骨な介入だった。香港では2015年秋以降、中国に批判的な書籍を扱う書店の関係者らが失踪し、少なくとも1人は香港で捜査権が無い中国当局に連れ去られた疑いがある。先月下旬には、党との繋がりが深い北京の大富豪・肖建華氏が香港で失際し、やはり中国当局が関与したとも指摘されている。事実であれば、香港の法規を無視した“越権行為”となる。香港住民は、中国への不信感を増大させている。香港大学の昨年12月の世論調査では、自分を中国人と考える割合は15.9%で、北京オリンピック直前の2008年6月(38.6%)の半分以下だ。こうした香港の現実を対岸から注視しているのが、台湾の住民だ。習主席は2014年11月、台湾の対岸に位置する福建省平潭県で、密かなパフォーマンスを行った。本来は必要な通関手続きを無視して台湾に渡る高速客船『海峡号』に乗り込み、台湾の住民と握手して回った。「自ら(台湾を中国の一部と見做す)“1つの中国”を体現した」(中国共産党関係者)という。習主席の政治スローガン『中国の夢』の核心は、“祖国の完全統一”だ。福建省で17年に亘って勤務し、歴代指導者で最も台湾問題に思い入れが強いとされる。だが、識者の間では、香港の道路点拠運動への対処党、習政権の強硬姿勢に対し、「表面上は勝利だが、台湾の住民の一国二制度への完全な失望という、統一戦略上、取り返しのつかない結果を招いた」との指摘も少なくない。先月、台湾の“国家”承認を目指す政党『時代力量』と、「香港の未来は香港住民が決めるべきだ」とする“自決派”の立法会議員らのシンポジウムが、台北で開かれた。道路占拠運動を率いた黄之鋒氏(20)が、「台湾と経験を分かち合いたい」と連携を呼びかけると、台湾の学生運動リーダーである林飛帆氏(28)は、「中南海(中国共産党の最高指導部)の匙加減だけで香港や台湾の運命は決められない」と気勢を上げた。習主席の“力による現状変更”の試みが、香港社会を揺さぶり、その波動が台湾の住民を中国から更に遠くへと押しやる。習主席の“夢”実現の道筋は尚見えない。


⦿読売新聞 2017年2月25日付掲載⦿
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