【ヘンな食べ物】(30) 謎の怪魚とカレー

私にとって、インドカレーとは“悲劇の料理”である。先ず、出会いからして悲惨。私は人生初の海外旅行がインドだったのだが、現地の食堂のカレーがあまりに辛くて、殆ど食べられなかった。今の若い人には信じられないかもしれないが、1980年代半ば、私の身の回りには唐辛子の入った料理や食品は皆無。それがインドに行くと、どんなにライトなカレーでも、日本のカレーライスの辛口より遥かに辛い。大体、二口か三口で口の中が火の海になり、置いてある水をがぶ飲みするが、舌が痺れて半分も食べられない。しかも、不慣れな唐辛子のせいか、食堂の水のせいか、毎日激しい下痢。私は食事を取らなくなった。サモサ等スナックの類い(※これらは辛くない)を屋台で買って食べるだけ。でも、流石にこれでは体力がもたないから、「せめて夕食くらいはちゃんとご飯を食べなければ…」と思った。なので、日が暮れて食事時が近付くとたまらなく憂鬱になった。2回目にインドへ行った時はタイに暮らした後だったので、唐辛子の辛さには慣れていたものの、どうにも刺激が強いだけで味は単調だし、「インド米はタイ米よりパサパサして不味い」という印象しかなかった。そして、3回目のインド。この時は、インド東部の海岸で目撃された謎の怪魚探索が目的だった。日本人の目撃者によれば、怪魚は漁師の網にかかっていた。全長2mくらい、シーラカンスに似ていて、全身に鋭い棘がびっしり生えていた。「この怪魚、一体どうするのか?」と漁師に訊いたら、「カレーにして食う」とのこと。「こんな未確認生物のような凄い魚もカレーなのか」と、目撃者の人も呆れたという。俺も「その怪魚カレーを食べたい!」と思った訳ではない。若しかしたら、未だ知られていない古代魚の生き残りかもしれず、「世紀の大発見をするぞ!」という意気込みだった。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2017年3月23日号掲載
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