【男の子育て日記】(44) ○月×日

11月2日 一文、1歳の誕生日。ここまで長かったなぁ。生まれたばかりの頃は、作家の想像力を以てしても、1年後を思い浮かべることができなかった。感概一入。記子の実家からお祝いに紅白の餅が送られてきた。1個で800gもある。福山市の習わしらしく、これを担いで歩かせると「一生食べ物に苦労しない」という。ご丁寧に餅を入れるリュックまで付いている。無理矢理背負わせて歩かせようとするが、如何せん重くて転ぶ転ぶ。ギャン泣き。「これって虐待じゃないのか?」と思いつつ、動画を撮って義母に送る。

11月4日 毎月頭に保育園から配布されるたよりには、その月に誕生日を迎える子の名前が載るが、一文の名前が無かった。保育士さんから、「すいません。忘れていました」と謝罪を受ける。「全然気にしていませんから」と言いつつ、家では妻が「訴えてやる!」と息巻いていたとはとても言えず。

11月5日 テレビを観ていたら、自分の子供に“マリ”と名付けた親がいて、その理由が「マリー・アントワネットのように気高くあってほしいから」だって。おいおい、誰かこの親にマリー・アントワネットの末路とか、歴史を教えてあげてくれ。

11月6日 日曜日、家族でデパートを回る。「一文にニットキャップを買ってあげたくて」。11月にして、今年初めての家長の家族サービス。しかし、一文の頭がデカ過ぎてサイズが見つからない。父親に似て頭蓋骨が大きいせいだ。かといって、中身が一杯詰まっているかというと違うしなぁ。結局断念。しかも何故か、俺が妻にニットを買わされていた。帰りにドラッグストアに寄る。「偶にはオムツ代ぐらい私が出すよ。一文のオムツのサイズって何? Lサイズ!? もうそんな大きいの!?」。何度でも書きます。この育児日記に嘘・大袈裟・紛らわしい表現は一切ありません。全て事実です。

11月7日
このヤロウ、母親アピールのツイートをしやがって。それより、「もっと夫を讃える内容を書け」と言っているだろ。

11月9日 アメリカ大統領選でドナルド・トランプが当選。人種や性の差別を公言する男が世界のリーダーに選ばれた。恐ろしい世の中だ。アメリカだけではない。日本も含めて、世界中が極右化している。既にこの国にも経済的徴兵制が始まっている。親の務めとして、一文に十分な教育を受けさせてあげたい。妻とは「いつか日本以外に住んでみたいね」と漠然と話していたが、「どこがいいだろうか」と真剣に考える。「私なら英語も直ぐに喋れるだろうし、勉強したら簡単に医者になれるから。たけちゃん、任せてよ」。おばはん、頼りにしてまっせ(※『夫婦善哉』風に)。


樋口毅宏(ひぐち・たけひろ) 作家。1971年、東京都生まれ。帝京大学文学部卒業後、『コアマガジン』に入社。『ニャン2倶楽部Z』『BUBKA』編集部を経て、『白夜書房』に移籍。『コリアムービー』『みうらじゅんマガジン』の編集長を務める。2009年に作家に転身。著書に『日本のセックス』(双葉文庫)・『ルック・バック・イン・アンガー』(祥伝社文庫)・『さよなら小沢健二』(扶桑社)等。


キャプチャ  2017年3月23日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : パパ育児日記。
ジャンル : 育児

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR