【海外の最新教育事情】(07) あの話題の教育法はその後どうなった?

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■タダが売りだった『MOOC』に有料化の波が迫る
アメリカの名門大学の授業をインターネットでタダで見られる『MOOC』が本格スタートして4年。「教育の機会均等に繋がる」と期待された夢の教育システムだが、有料化が大きな流れになりつつある。2012年にスタートしたMOOCのうち、BIG3と呼ばれるのが、最大手の『コーセラ』、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学が創設した『エドエックス』、ロボット開発者でもある『Google』副総裁が始めた『ユーダシティー』だ。3社の合計受講者数は昨年、2400万人を突破した。最も特徴的なのがユーダシティーだろう。アメリカの教育メディアによれば、大学との提携を止め、最近はハイテク企業と協力して作った有料の『ナノ学位』に力を入れている。特定分野や技術に特化した学位で、IT企業の就職で有利になるという。コーセラは大学との提携を続けているが、やはり就職に有利な有料の修了証が手に入る授業を増やし、エドエックスは企業等に自社の講義システムを有料提供している。MOOC最大の課題が、10%以下に低迷する修了率だったが、企業に役立つ学問に狙いを定めたユーダシティーは60%以上に伸びた。教育の機会均等という理想は変わりないが、経営や就職という現実も避けられない。

■自宅と学校を逆転…“反転授業”を小学生に
授業の動画を自宅で視聴するのが宿題で、学校ではディスカッションやプレゼンテーション等の高度な内容の演習を行う“反転授業”。アメリカでは中学・高校の授業で導入され、学力の低い生徒の底上げに効果を挙げてきた。「基本的な部分は家で予習し、教室ではより高度な内容に取り組む」「教師から教わるだけでなく、学校で他の生徒に自ら進んで教えることで、自分の理解を深める」――。いいこと尽くめのように思えるが、各家庭のインターネット環境の格差や保護者の負祖増がネックとされてきた。そんな中、世界的にも注目される試みが2014年に日本で始まった。佐賀県武雄市が、市内の全小学生にタブレット端末を貸与。3年生以上の算数と4年生以上の理科で、家で動画を見て予習し、学校で話し合い等をする反転授業を始めた。昨年、2~4年生の国語も対象になった。反転授業を始めて1年後のアンケートでは、算数の授業が「よくわかる」「大体わかった」と答えた児童の割合は90%を超えた。ただ、初年度のデータで反転授業と成績向上の正の相関関係は見られなかった。小学生に反転授業は有効なのか。“実験”の結論が出るまで、もう少し時間がかかりそうだ。

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■“落ちこぼれ防止法”が葬り去られた理由
2002年にブッシュ前政権が成立させた『NCLB(落ちこぼれを作らない)法』。半ば強制的な手段で公教育のレベルアップを狙った連邦法だが、昨年末にオバマ大統領の手で葬り去られた。NCLB法は、「初等・中等教育における学力低下がアメリカの国際的な競争力を低下させている」と危惧した連邦政府が、州政府や学区に任せていた教育行政に大きく介入することを規定したもの。“落ちこぼれを作らない”という名称の通り、最大の目的は全米の児童・生徒の学力格差をなくすことだ。特に低所得者層、人種・障害・言語に基づくマイノリティー層の学力向上を掲げていた。理想を高く掲げたこの法律は、成立時から州や地方の反発に晒されていた。抑々、アメリカでは歴史的に、教育は州が管轄すべき事項と考えられている。そこにNCLB法で連邦政府が介入し、州・地方・各学校が行うべき教育政策を一律に定めたことで現場が混乱した。例えば、NCLB法は重要科目として、“読解力”や“算数・数学”等の習熟レベルを設定。その測定の為、州政府を通して各学校に年次テストの実施を義務付ける。一定のレベルに達しない学校は“要改善”を言い渡されて、教師に結果責任が課されることになっていた。しかし、アメリカは地域による学力格差が著しい。そんな教育現場に一律の尺度を持ち込んで底上げしようとすること自体が現実的でない。“ペナルティー”を怖れて、学校側が試験対策型のカリキュラムに偏重し、学力の低い学校に無気力が蔓延するといった弊害が生じた。州や現場からの反発で、オバマはNCLB法を撤回。NCLB法を改正する形で昨年、『ESSA(全ての生徒が成功する法)』が成立した。引き続き、州に対して学力テストの実施と、“要改善”策の実施義務を課すものの、学力の低い学校への連邦政府の介入を認めないことになった。更に、オバマは今年、新たな梃子入れ策としてIT教育の強化を提言。“全ての子供にコンピューター科学を”という計画を発表し、各州への総額40億ドルに加えて、各学区にも総額1億ドルの予算を計上した。教育現場に過度の競争原理はそぐわない。しかし、競争原理が働かなければ人間は前へ進まない。NCLB法が突き付けた矛盾が、オバマのESSAやコンピューター教育重視政策で解決できるかはわからない。

■タイガーママが厳しく育てた娘たちの成長ぶり
2011年にアメリカでベストセラーとなった『タイガー・マザー』(邦訳は『朝日出版社』)は、中国系アメリカ人でイェール大学法科大学院教授のエイミー・チュアが、2人の娘を中国式に育てる様子を綴った本。そのスパルタぶりは大きな批判も招いた。では、娘たちの気になるその後は? 批評家が懸念したように、「友達がいなくて、ロボットみたいで、精神的に病んでいて、自殺願望がある」人間になったのだろうか? チュアは娘を罵倒しながら猛勉強させ、友だちとの遊びを禁止して、ピアノやバイオリンの練習を強いた。姉のソフィアはピアノの神童となったが、妹のルルは13歳で母親を前に爆発する。モスクワのカフェで「こんな生き方は嫌。お母さんなんか大嫌い!」と叫び、グラスを叩き割った。そのルルは、周囲の心配を余所に、人間味溢れる女性に育ったようだ。ハーバード大学に通う彼女は、周囲の証言によれば、心優しくユーモアがある人気者。母親との関係も良好で、しょっちゅうメールをしているとか。ソフィアは昨年、ハーバードを卒業し、オンラインで生徒に個別指導を行う会社を立ち上げた。その名も『タイガークラブ』。母親から受けた厳しい教育に、疑問は全く無いようだ。


キャプチャ  2016年3月22日号掲載


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