【儲かる農業2017】(01) 期待外れの『全農』の自己改革…購買縮小・販売拡大方針に抵抗

政府は昨年11月、『農協』改革のボールを『JA全農』に委ねることを決めた。だが、本誌が入手した計画の原案は、“改革の意志”が感じられないどころか、焼け太りさえしかねない内容だった――。

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昨年12月27日、コメの流通業界のドンたちが、銀座のレストランで神戸ビーフのステーキを食していた。会合の呼び掛け人は、JA全農の中野吉實会長。本来は出身地の名産である佐賀牛を好むが、その日は「オープンして間もない新店がよい」ということで、JA全農兵庫の直営レストランを選んだ。招待されたのは、米御最大手『神明』の藤尾益雄社長、業界第2位の『木徳神糧』の平山惇社長の2人。JAグループからは、全農の子会社で米卸業界2位の『全農パールライス』の大貝浩平社長、それに北海道のコメを牛耳る『ホクレン』の箱石文祥常務も出席した。コメの流通業界のトップが勢揃いした訳だ。「出資も含めた提携を前向きに考えてほしい」。世間話もそこそこに、中野会長が本題を切り出した。全農の説明は大まかなところ、こうだった。「政府から、農産物の買い取りや直接販売を増やすよう求められている。米御がやってきた精米・販売に全農が本格参入すれば、中小の米御は淘汰されるだろう。これは望ましいことではあるが、淘汰の過程で過度な価格競争等の混乱が生じる可能性がある。だから、コメの流通でトップシェアの全農と大手米御は、しっかり“連携”してやっていこう」。米業界のドンたちは、全農の提案を受け、どんな密約を結んだのか。本誌は、来賓の社長2人を直撃した。

本徳神糧の平山社長は、「『無理な戦いは止めよう』と言って、良い雰囲気でお開きになった」と淡々と話した。全農との提携については、「既に精米工場を相互利用しており、その延長線上で資本提携もあるかもしれない」と前向きだった。一方、全農を通さない独自のコメの調達に力を入れる神明の藤尾社長は慎重だ。「『出資させてくれ』と言われても、何をやる為の出資かがはっきりしない。戦略無き資本提携は株主に説明できない」と話す。確かに、神明が全農から出資を受けるのはリスクが大きい。第一の懸念として、全農が政府に「改革をやった」とアピールする為のダシに使われて終わる可能性がある。全農は、流通企業を買収する等して、農産物の販売力を高めるよう政府から求められており、実績作りに必死なのだ。そして最大の懸念は、全農が描く“焼け太り”作戦に乗せられてしまうリスクである。本誌が入手した全農の農協改革に関する内部資料には、コメの販売事業の改革について、「パートナー卸(※実需者への安定した販路を確立している卸)経由での販売を拡大する」と記されている。これは、「全農が大手米卸に資本参加することで囲い込み、下請け化する」という意味を含んでいる。全農のコメの取扱量は日本全体の3割、地域農協まで含めると4割のシェアがあり、集荷力で業界を牛耳る潜在力は十分にある。神明からすれば、全農に取り込まれてコメの仕入れまで依存することになれば、価格・品質共に全農や全農パールライスより優位に立つことは難しくなる。実は、米御再編に積極的な農林水産省も、全農の“焼け太り”戦略に異を唱えることはない。寧ろ、全農改革を機に中小零細の米御を淘汰することで、「卸間で転売されるトレースできないコメや、“くず米”と呼ばれる低品質なコメを市場から一掃したい」と考えているのだ。JAグループによるコメの産地偽装の疑いや、投げ売りの実態を放置したまま全農が勢力を伸ばすことに、国民の理解が得られる筈はない。自民党農林部の小泉進次郎会長も、「全農が“改革をやった感”だけを演出して、出資話を持ち掛けているならば、期待している自己改革とは異なる」と話す。今後、改革の真偽を見極めていく構えだ。右上図を見てほしい。抑々何故、全農改革が必要なのかがわかる筈だ。全農は、肥料や農薬等の農業資材で圧倒的なシェアを持つ。本来はバイイングパワーを使って安く農家に提供しなければならないのに、韓国に比べて割高なのだ。つまり、農家の所得を圧迫し、日本の農業の国際的な価格競争力を低下させている。

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全農も流石に、生産資材の価格低下に 取り組むようだ。コスト高の原因である、3万ある肥料の銘柄を集約する。これで肥料メーカーの淘汰も進むだろう。このように、他企業の淘汰には積極的なのに、全農本体が身を切る改革は、残念ながら見えない。先ず、全農は生産資材の日韓の価格差や、韓国農協の優れた農家サービスを知っているのに、開示していない。全農は昨年、農水省から日韓の資材価格差を調べるよう依頼され、「日本は4%ほどしか高くない」と報告した。これに農水省の奥原正明事務次官が激怒。結局、調べ直して右上図のような価格差が公表された。こうした経緯を知ると、全農の改革姿勢を疑いたくなる。また、JAグループの内部資料によれば、韓国農協は肥料・農薬について、「同じ銘柄でホームセンター等のほうが安い商品があった場合には、中央会(※韓国農協の上部組織)に申請することで、その差額分が払い戻される仕組みがある」という。日本の家電量販店を上回る素晴らしいサービス精神ではないか。韓国農協が資材の安さで日本のJAグループを凌駕しているのも、当然と言える。全農は、こうした事実を把握していながら、積極的に情報公開しないことが問題なのである。全農改革の最大のポイントは、農家相手に資材を売る“ドル箱”の購買事業の体制を縮小し、農産物の販売事業にシフトすることだ。購買事業の縮小は、本誌の担い手農家アンケートでも、賛成が反対を大きく上回った。だが、全農の動きは純い。“ドル箱”に胡坐をかき、変革をしなければ、組織の存在意義が間われることになる。


キャプチャ  2017年2月18日号掲載




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