【激流韓国】(01) 「アメリカの要求にもNOを」

現職の大統領が罷免され、失職するという憲政史上初の異常事態を迎えた韓国。未曽有の激流の先に見えるものは何か。

20170328 06
昨日午前9時23分、ソウル中央地検に到着した韓国前大統領・朴槿恵(65)は、無数のフラッシュを浴びた。「国民の皆様に申し訳なく思う。誠実に聴取に臨む」。短くそれだけを述べて庁舎内に入り、一般用のエレベーターに乗り込んだ。2代9年続いた保守政権の終焉を印象付けた。「韓国はアメリカにNOと言うことを覚えるべきだ」。今月11日付の『ニューヨークタイムズ』に大きく掲載された最大野党『共に民主党』前代表・文在寅(64・右画像)のインタビュー記事が波紋を広げた。この発言は取材でのものではなく、1月発刊の対談集から引用された。“ポスト朴”の世論調査で、支持率首位を独走する文。対談集では確かに、「アメリカの要求にもNOと言える外交が必要だ」と述べている。朴に惜敗した前回2012年の大統領選で、「任期1年目に南北首脳会談を推進する」と打ち上げた。北朝鮮の党委員長・金正恩(33)を「対話の相手」と明言。保守層からは“従北”(※チョンプク=北朝鮮の思想や政治理念に従うとの意味)と非難の集中砲火を浴びている。現在の北朝鮮出身の文の両親は、1950年に勃発した朝鮮戦争で韓国側に逃れてきた“失郷民”だ。休戦の年に生まれた文は、大学在学中に民主化運動に身を投じる。収監中に司法試験の合格通知を受け取り、人権派弁護士として労働者の権利保護に取り組んだ。北朝鮮との対話に積極的なのは、「韓国が韓(朝鮮)半島の問題を主導して解決すれば、アメリカや日本への発言権が強くなる」との信念がある。朴の友人・崔順実(60)による国政介入事件のような不正が何故、繰り返されるか。それは、解放後に日本統治時代の“親日”勢力が“偽の保守”勢力となり、韓国を支配してきたからだ――。文はそんな話もよくする。

昨年末に釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦を象徴する少女像を地元自治体が一時撤去したのも、“清算されない親日行為”と映る。1月、少女像を訪れ、「像が寂しがらないよう共に関心を持って守っていこう」と呼びかけた。日米にとって、韓国に埋められた外交・安全保障の“時限爆弾”が、着々と時を刻んでいる。「これ以上は何もするな」。今月13日、革新系の金大中・盧武鉉両政権で統一・外交・安全保障を担当した左派系の元閣僚や学者グループが、緊急声明を発表した。中国の報復を招いたアメリカ軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備を始め、朴が去った代行政権にあらゆる政策・決定を中断するよう求めた。1998年から10年間の金・盧両政権で、北朝鮮への包容政策を推進した顔ぶれ。大統領選で革新勢力が政権を奪還した場合、南北問題や外交政策に影響を与えるとみられる。「敗戦国に一方的な指示を下す占領軍気取りだ」。保守系最大手紙の『朝鮮日報』は、強く批判した。アメリカ議会調査局は、韓国大統領選に関する報告書で、THAAD配備の反対から、「次期政権で決めるべきだ」と言葉を選ぶようになった文について、「幾つかの問題で前回大統領選時より中道的な立場を取っている」と指摘した。一方で、文を含む左派系野党候補の主張は「北朝鮮・中国・日本に対する政策で、既存のアメリカのアプローチとは著しく異なる」と断じ、「朴の退場は、北東アジアのアメリカの利益に短期的・中期的な影響を及ぼす可能性が高い」と懸念する。5月9日の新大統領誕生まで50日足らず。今月23日まで訪韓中の北朝鮮核問題を巡る6ヵ国協議のアメリカ首席代表は、革新系候補本人や陣営幹部との面会も求めた。「参与政府(盧武鉉政権)の成功と失敗の教訓を胸に刻み付けている」。今月13日のテレビ討論会で、文はこう切りだした。盧政権は権威主義打破で評価を受ける一方、不動産価格暴騰等の経済失策で支持を失った。大統領秘書室長等で盧に寄り添っていたのが文だった。それから約10年、今は自分が表舞台に立つ。朴が弾劾された2日後の今月12日、記者会見した文の表情は、いつになく強張っていた。THAADは米中の板挟み、最優先課題の“公正な社会”でも躓けば、朴を罷免に追い込んだ民心の矛先は自分に向かう――。その重圧と闘っているようだった。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2017年3月22日付掲載⦿
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