【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(37) 中国公安と民主化運動組織の二重スパイ…“李宇宙”という男

タイの入管施設に拘留された時のことは、前回でも書いた。ここで筆者は、忘れることのできない1人の男と出会った。中国人政治犯の李宇宙である。少し長くなるが、彼の物語を、彼の言葉のまま再現してみたい。

私は国家安全保障局の二重スパイでした。“民主化運動へ潜入した公安のスパイ”と報道されていますが、それは違います。1976年、山東省の貧しい農家に生まれ、苦労して中国人民大学に進みました。大学では民主主義の思想に傾倒し、軈て民主化運動に参加するようになりました。国家安全保障局が主導する新青年会に参加したのも、彼らの情報を得る為であり、決して民主化運動の妨害をする為ではない。中国では、中国共産党の脅威となり得る学生を調査する為、国家安全保障局が学生スパイを潜入させています。北京大学や清華大学等、エリートが集まる大学には特に注意しています。いつしか私は、北京大学を中心とする民主化運動グループの指導者的立場になっていきました。勿論、地下組織です。そして、2000年にインターネット上に公開した記事が公安当局を刺激し、厳しい尋問を受けました。これが国家安全保障局との取引、つまり公安のスパイになるきっかけです。勿論、表面的な服従の姿勢で、私は逆に公安当局や中国共産党の情報を入手し、利用しました。軈て、中国共産党や公安当局の重大な不正と、民主化運動に対する弾圧の計画を知ったのです。私は直ぐに仲間たちとその情報を公開しようとしました。ところが、私たちのグループにも公安のスパイが潜入していました。この計画は露見し、仲間が数人逮捕され、行方不明になった者もいたのです。「直ぐに中国から逃げろ」。同じ容疑で逃亡中の仲間が、潜伏先で公安に突入される寸前、私に電話してきました。私は身の危険を感じ、すぐさまバンコクへ逃れました。これが2001年のことでしたが、その後、私は家族と静かに暮らしていました。しかし、その日は突然やって来たのです。2008年9月、武装した警官隊がドアを破り、私を逮捕しました。それ以来、4年間もの間、私はここにいるのです――。

彼は中国の民主化を願う活動家で、筆者は只の暴力団員だったが、李宇宙とは気が合い、友人になれた。反社会的勢力という意味では、同じだったからかもしれない。バンコクの牢獄では、現金だけが頼りだった。カネを出さなければ、不衛生な水道水を飲まなくてはならない。この水道水を飲み続けると、最初は下痢と腹痛に苦しみ、軈て歯がボロボロになるそうだ。食事は支給される。が、朝昼晩、365日同じメニューだ。ウリ科の野菜を煮たものに、重油臭い飯。「私は4年ここにいるが、違う食事を見たことがない」。李宇宙は笑いながら、出前の中華料理を勧めてくれた。食事に限らず、カネさえ払えば何でも手に入った。但し、収容施設の儲けが加算される為、割高になる。「カネがある」と思えば、担当者は色々な物を売りに来た。マリファナや覚醒剤も売っていたし、売春婦の斡旋までしている。ここに無いのは自由と人権だけだろう。李宇宙は、4年の間に2度の自殺未遂をしていた。彼の手首には、その傷痕が生々しく残っている。「ここを出る時は、中国で死刑になる時です」。筆者が日本へ送還される前日、彼はそう言って私に封筒を手渡した。中身は、『国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)』の身分証明書と、家族に宛てた手紙だった。別れの時、彼は“Good luck.”と笑顔で筆者を送ってくれた。彼には幸運を望めない。だから、筆者は手を振るだけにしておいた。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2017年3月21日・28日号掲載
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