根腐れ始めた自公連立――小池ショック“首都喪失”に為す術無し、“衆都ダブル選挙”というブラフ

20170329 08
「俺のことを“絶滅危惧種”と言っているもんがおるらしいが、俺が絶滅する訳ないじゃないか」――。自民党幹事長・二階俊博の怒りが収まらない。二階が刃を向けている相手が政調会長の茂木敏充であることは、自民党内の常識である。元々、茂木は“一言多い”軽さが玉に瑕。過去にも多くの政治家と軋轢を生んできたが、今回は相当深刻だ。先月初旬に発売された週刊誌が、一斉に二階を揶揄する記事を掲載したことで、二階の積年の茂木に対する思いが爆発した。二階の側近は、「発信源が茂木ということは調べがついている」と語る。具体的には、茂木が番記者との懇談の中で、二階をしばしば“ボケ老人扱い”しているという訳だ。確かに、茂木は才気溢れる政治家ではあるが、同時に徳に欠ける為、実力者になり切れない。経済産業大臣や選挙対策委員長等の要職を重ねながら、ポスト安倍の総裁候補に名前が挙がらない訳も、この辺りにある。首相の安倍晋三ですら、「権力がどこにあるかを嗅ぎ分ける能力は抜群」と周辺に漏らしたことがある。しかし、事は単なる痴話喧嘩ではない。政権与党の幹事長と政調会長の確執・不協和音は、“安倍1強”を内部から揺るがす重大事だからだ。しかも、二階と茂木の関係悪化は、次期衆院選を睨んだ主導権争いを呈していることも、事態をより複雑にしている。

先月14日付の産経新聞政治面のトップ記事は、こんな見出しを掲げた。『化学総連 自民を支援』。記事の内容は、昨年まで『連合』に加盟していた『全国化学労働組合総連合(化学総連)』が、次期衆院選で自民党を支援する方針を決めたというものだが、二階サイドが神経を尖らせているのは、「化学総連幹部が茂木と面会し、自民支持の意向を伝えた」という部分だ。自民党の選挙対策の最高責任者は幹事長。更に、二階自身が連合会長の神津里季生と極秘に会談する等、労組との連携強化は二階が地道に信頼関係を積み上げてきた領域。茂木の越権行為とも言えるスタンドプレーに、二階の怒りが増幅されたのは間違いない。この報道に関しては、連合側も強い不快感を抱く。「化学総連が茂木との会談で自民党の支持を明言した事実はない」というのだ。会談をセットした首相補佐官の衛藤晟一や、元法務大臣の森英介も困惑しているという。二階は、先月17日で満78歳になった。年齢との戦いは今に始まったことではないが、茂木の言動に腹を据えかねており、政権中枢に生じた不協和音を収める為、安倍の出番を求める声も出るほどだ。そして、政権内にはもう1つの不協和音が進行中だ。与党第二党の公明党との溝だ。昨年の臨時国会で成立したカジノ法の採決に際して、代表の山口那津男と幹事長の井上義久が揃って反対に回ったことが大きなきっかけとなった。その直後には、東京都議会でも公明党の掌返しが行われる。突如として、自民党東京都連と神経戦を続ける東京都知事・小池百合子の支持に転じたことだ。直接のきっかけは、議員報酬の削減案を巡る自民党との対立にあった。「連立で一貫してやってきたが、信義は完全に崩れた。独自の改革を進める」。昨年12月14日、都議会公明党幹事長の東村邦浩はこう述べて、自民党との“縁切り”を宣言。東村は更に、「小池知事が進める東京大改革は大賛成だ」と、小池と共闘する考えを鮮明にしたのだった。これにより、都議会の過半数を自公で占めていた勢力図は一変する。自民党は過半数に達しない第一党になった。都議会公明党の離反は、今年7月2日に投開票が行われる都議会議員選挙での生き残りが目的であることは、疑う余地がない。先月5日に実施された千代田区長選の結果も、自民党の公明党への不信感を加速させた。共同通信が行った出口調査によると、公明党支持者の自民推薦候補への投票は約1割に過ぎなかった。自民党は昨年の参議院選挙の結果、衆参とも自民単独で過半数を確保しており、党内には公明党との連立見直し論が燻り始めた。

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その反映だろうか、先月中旬、党内をある情報が駆け巡った。“衆都ダブル選挙”――。7月2日投開票の東京都議会議員選挙に合わせて、衆議院を解散するというものだ。密かに行われた自民党本部と『創価学会』幹部との話し合いが不調に終わった直後に流れており、尚もブラフの色彩が強いが、幹部の1人は「瓢箪から駒が出ることもある」と語る。それほど自公間の溝は深い。東京の自公選挙協力を巡っては、東京12区を公明党前代表の太田昭宏に譲り続けた結果、自民党都連の不満が蓄積され、今や我慢の限界に達している。公明党には、“任期中に69歳を迎えないこと”という定年制がある。太田は既に71歳。次の衆院選での自公協力を巡る焦点の1つであることは間違いない。更に、衆都ダブル選が取り沙汰された背景には、小池に対する方針転換がある。昨年7月の東京都知事選以来、自民党は小池に翻弄され続けている。「小池の強かさには呆れる」。都連幹部がいくら嘆いても、小池ペースでズルズルと引きずられ、為す術が無いのが実情だ。小池は巧みな立ち位置で、こうした状況を作り出した。小池は都連を“ブラックボックス”と切り捨て、徹底的に対峙する一方で、安倍及び二階とは融和的な姿勢を取り続ける。旧自由党以来、小池と長い因縁のある二階は、小池に対して寛容なところがあった。しかし、徐々に党内から二階の小池への対応に不満の声も増えてきた。茂木の“反二階”の動きも、今年9月にも想定される幹事長交代論に火を点ける狙いがあると見られている。加えて、二階と良好な関係を維持する官房長官の菅義偉は、依然として“反小池”を貫いており、二階と菅との関係にも罅が入りかねない。

しかし、自民党内の不安定化を見透かしたように、小池が打つ先手先手の仕掛けに、自民党はいいように翻弄され、妙案が無いのが現状だ。千代田区長選に続き、元都知事の石原慎太郎に照準を合わせて挑発した小池の狙いは、ズバリ的中した。“小池劇場”は今も千客万来だ。産経新聞が行った直近の世論調査によると、小池の支持率は77.5%。驚くような数字を維持している。こうした状況に危機感を抱いた自民党最高幹部の1人が、安倍にこう進言した。「このまま放置しておくと、次は総理に対して刃を向けてくるかもしれません。一度、きちんとけじめをつけたら如何ですか?」。東京都議会は先月22日の本会議で、築地市場の豊洲移転問題を検証する調査特別委員会(百条委員会)の設置を全会一致で決めた。小池にいいようにあしらわれてきた石原が証人喚問されるのは確実。百条委の設置には都議会自民党も賛成せざるを得ず、都議選の主導権は小池に握られたまま、本番に突入する可能性が高まっている。先月中旬、都議選に関する2つの情勢調査結果が出回った。公明党と小池サイドが実施したものとされるが、何れも『都民ファーストの会』等小池グループは圧倒的な強さを窺わせる。定員127の内、小池グループは単独で過半数に迫る59議席(※公明調査は60)。自民・公明は同数の23議席ずつ(※公明調査は自民25・公明21)。以下、日本共産党15(※同18)、民進党6(※同3)という数字が並ぶ。小池のワンサイドゲームを予感させる。勿論、自民党が手を拱いている訳ではない。「4月になれば、反小池に向けた仕掛けが動く。どうぞよく見ていて下さい」。自民党選対幹部の長老は、こう語る。その仕掛けが何なのかについては、「秘中の秘」と言うだけ。都議選で小池の圧勝を許せば、次期衆院選への影響は計り知れない。既に大阪では、自民党が前市長・橋下徹主導の『大阪維新の会』の風下に立たされて久しい。ここで都議会が小池のコントロール下に置かれることになると、日本を代表する東西の巨大都市で自民党の空洞化が現実のものになる。しかし、今の自民党には「党全体が一丸となって小池と真正面からぶつかり、撃破しよう」というエネルギーが無い。その最大の要因は、衆議院の解散が事実上の任期満了選挙になる見通しがほぼ確実になってきたからだ。党内に緊張感が無く、弛緩し切っている。昨秋から年末にかけて吹き荒れた解散風が去った後、党内の大勢は2017年秋から2018年頭解散の見方をしていたが、それも大幅修正されたとみていい。安倍も、周辺に対してこう断言した。「もっともっと先だよ」。つまり、安倍の頭の中にある解散時期は、2018年9月の自民党総裁選を越えた同年秋。解散時期の先送りの背景にある最大の要因は、天皇陛下の退位時期にあるとみられている。退位については、“天皇陛下1代限りの特例法”が今国会で成立の見通しで、それを受けて退位に伴う新元号の制定等、様々な準備が始まる。

20170329 10
新天皇の即位は2019年1月1日でほぼ動かない。それを視野に、「新元号については2018年6月頃に決定する」との見方が有力だ。安倍が繰り返す“静かな環境の下での準備”を考えれば、法律制定後の代替わりに向けた“移行期解散”は極めて難しい。確かに、安倍とドナルド・トランプとの日米首脳会談で合意した、トランプの年内来日に合わせた“トランプ解散”の可能性が無い訳ではないが、選挙基盤が脆弱な多くの1・2年生議員を抱えた自民党にとって、早期解散のリスクは大きい。寧ろ、「衆参共に安定的な議席を確保している現状を維持しながら、政策を前進させたほうが得策」との判断が働く。菅も口癖のように、「この時期を逃したらできない政策も多い」と語る。民進党の支持率低迷も、解散先送り説を補強する。同党代表・蓮舫の求心力低下は目を覆うばかりで、野党間の選挙協力は一向に進展せず。寧ろ、蓮舫が提唱した“2030年原発ゼロ”に、連合会長の神津が異を唱える等、足元が大きく揺れている。安倍には尚、時間がある。その一方で、自民党内で活発化しているのが、派閥再編の動きだ。副総理兼財務大臣の麻生太郎が中心となって動く大宏池会構想や、額賀派の会長交代への動き、二階派の膨張作戦等、派閥を巡る政治ニュースが目に付く。しかし、こうした動きは総選挙に向けた準備ではない。自民党長老の解説に説得力がある。「今起きている大宏池会構想等、派閥が動き始めたのは、来年の総裁選での安倍総理の再選を睨んだものです。『我々はこれだけのことをしました』と総理にアピールする為に数を揃えているという風に理解して下さい」。つまり、総裁選後の人事が早くも始まったことを意味する。具体的には、選挙を采配する幹事長ポストを巡る功名争いと言ってもいいかもしれない。二階と茂木の確執の核心もそこにある。 《敬称略》


キャプチャ  2017年3月号掲載

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