事件から20年後の今でも世間を騒がせる男…酒鬼薔薇聖斗が足立区の『UR花畑団地』に現れた理由とは?

嘗て“犯罪多発地帯”と言われた時期もどこへやら、現在の犯罪発生率は新宿区・世田谷区・江戸川区のそれを下回り、イメージが変わりつつある足立区。しかし、“あの男”の出現で、そのイメージが再び覆された。酒鬼薔薇聖斗こと“元少年A”である。Aは何故、足立区の『UR花畑団地』に現れたのか? その背景には、誘引されたとも言えるような負の歴史が見え隠れしているのだ――。 (取材・文・写真/ノンフィクションライター 八木澤高明)

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2016年2月、嘗て神戸で5人の児童を殺傷した酒鬼薔薇聖斗こと“少年A”(※既に少年ではないが敢えてそう呼ぶ)が、東京都足立区のUR花畑団地で生活していることが『週刊文春』によって報道され、大きな話題となった。足立区といえば、Aの潜伏が知られる以前から、これまで他地域に増して数々の凶悪事件が起きてきた土地でもある。「最近は大きな事件が起きたとも聞かないな」と思っていたところに起きた元少年A騒動。あの陰惨な事件から20年近くが過ぎ、Aは既に33歳の大人となった。Aが暮していたUR花畑団地は、埼玉県草加市との境に接した場所にある。同年10月某日、筆者はその団地へと向かった。既に騒動から半年以上が過ぎていたが、人々にどのように記憶されているのか、この目で確かめてみたかった。UR花畑団地のある足立区北東部は、『つくばエクスプレス』が開通するまで、地元民をして“陸の孤島”と呼ばれ、甚だ交通の便の悪い土地として知られていた。団地の住民は、最寄りの東武伊勢崎線・竹の塚駅までバスか自転車を利用するのが一般的だというが、週刊文春のグラビアで、Aもまた竹の塚駅を利用し、バスで団地と行き来している姿をばっちり撮られていた。Aが暮らしていたUR花畑団地は、東京と埼玉の県境を流れる毛長川の畔にある。建物自体は老朽化が進んでいたが、近年リフォームされ、更に周囲には大きな公園もあって、のんびりとした空気が流れていること等から、近年は若い夫婦等も増えているという。Aは週刊文春記者の直撃取材に腹を立て、記者を追いかけ回したが、その舞台となったスーパーマーケットへも歩いて5分もかからない、生活には便利な場所だった。

筆者が訪ねたのは昼過ぎということもあり、人の姿はあまり見かけない時間帯だった。しかし、団地内の公園のべンチに腰かけている初老の男性を見かけたので、取材と断って声を掛けてみた。「いやぁ、あの時は大騒ぎだったな。記事が出るだいぶ前から、記者が色々と調べていたみたいだね。記者みたいな人が動いていることは、Aが住んでいた棟の住民は知っていたんだってよ。皆、調べているのがAとは知らなかったようだけどね」。当たり前だが、Aが暮らしていたと知った住民たちの驚きは如何許りだっただろうか。しかし、「ここは以前から人の出入りが激しいところだから慣れたのだ」と、この団地に40年以上暮しているという男性が言う。「うちの部屋の上にも1人、男が住んでいてね。3ヵ月ぐらい前に引っ越してきたと思ったら、つい最近いなくなっちゃったんだよ。動きがおかしくてね。自転車置き場にカゴ付きのオバさんが乗る自転車を置かないで、部屋まで態々持って上がるんだよ。きっと、やましいことがあったんだろうな」。男性によると、他にも住民によるトラブル等が少なからず発生しているそうだ。「先ず、ここは家賃が安いだろ? だから下っ端のヤクザが多くて、堂々とした顔して歩いているよ。この前も、Aが住んでいた棟の近くでヤクザ同士の喧嘩があったばかりでさ」(前出の男性)。Aは1997年に児童2人を殺害し、3人に重軽傷を負わせて逮捕された。その後、『医療少年院』に送致された。2004年に仮退院し、四国・東京都内・神奈川県内を転々としながら、足立区のUR花畑団地へと流れてきた。3年ほど前から「Aが東京都内にいるのではないか?」という噂は、ところどころで囁かれていた。その内の1つは、「東大和市の団地にいる」というもので、近隣のスーパーマーケットで働いていたという。潜伏生活をしていたAだが、 2015年に入ると蠢動を開始する。6月に自身初となる著書『絶歌』(太田出版)を出版し、その2ヵ月後にはブログまで開設したのだ。自己表現の場として、世の中に自分の存在をアピールしたかったのかもしれない。だが、それ以前に彼がしなければならないのは、何より被害者への償いである。著書にもブログにも、被害者に対する謝罪は一言も無く、そうした行動は見る者を不快にさせるに充分だった。ブログを始めるということは、インターネット接続が必要になる。その為にはプロバイダーとの契約が必須となる他、アパートの賃貸契約等は果たして誰がやったのであろうか? その点を住民たちに聞き込みしていくと、やはり“協力者”の影が見えてきた。UR花畑団地に暮らす60代の女性が言う。「あの男の人は殆ど見ることはなかったですけど、恋人だと思われる女の人がいました。その人が契約から何からやってあげたみたいですよ。支援者ががっちりガードしているから、記事が出たら直ぐに引っ越しちゃいましたけど。流石にもう東京にはいないって話ですけど、今度は越谷に行ったって噂が出ていますよ」。Aをサポートする人間が東京周辺の人間であれば、当然、彼の生活圏から遠く離れることはないだろう。隣近所の人間関係が濃密な田舎は、潜伏するには適さない。そうなると、身を潜めるには東京周辺のべッドタウンが好都合なのだろう。噂にあった越谷市は、竹の塚から東武伊勢崎線で僅か20分程度のところでもあり、如何にも信憑性を感じさせるものだ。

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更に取材を進めていくと、Aが暮し始めたと思われる2015年夏前後から、団地周辺では動物を殺害する猟奇事件が頻発していることがわかった。毛長川を渡った草加市内に暮らす60代の女性が言う。「私はよく、犬の散歩で、彼が暮らしていた団地の周りを歩いていたんですが、一時期、鳩の羽だけが散らばっていたり、首を切られた猫の死体を見たりしたことがありました。それまで、この周りに猫に餌付けをする人がいたことから、野良猫が沢山いたんですけど、1年くらい前からそれが急にいなくなったんです。それで、公園に“猫狩りをしないように”と貼り紙がされていました。1匹・2匹の話ではなく、20匹は死んでいると思いますよ」。猫を殺害していたのがAだという確証は無い。しかし、彼がこの団地を去ってから、不思議なことに、鳩や猫が殺害される事件はぷっつりと無くなったそうだ。中学生だったAは、児童を殺害する前に、猫の首を切り、頭を踏み潰すと、射精するほどの快楽を得たことを自書で記している。猫殺しが児童殺害へと繋がっていったのだ。不思議なことに、Aが著書を出版し、ブログを開設したその時期は、足立区だけでなく、都内で猫殺しが頻発していた。そこから考えてみると、「猫殺し等の動物虐待は、Aの蠢動と何らかの繋がりがあるのでは?」と勘繰ってしまう。東京都心部の周縁に位置する足立区は抑々、荒川と毛長川に挟まれ、一帯が葦の原であった。それが、江戸時代初期に全国から集まった浪人らの手によって開発が始まると、彼らも住み着くようになり、江戸時代の末期には新撰組の隊員たちが逃亡先に選んだような“流れ者の土地”になる。言葉は悪いかもしれないが、流れ者たちによって築かれたと言う側面を持っているのだ。そして、高度経済成長が始まると、田園地帯は宅地化され、全国各地から東京に職を求める人々が次々に流入。今や、足立区だけで70万人が暮らすようになる。その一方、日本経済が作り出した新しき街故に、食い詰め、職にあぶれた者たちも少なくない。嘗て都内屈指の犯罪発生率を誇っていた背景には、そんな歴史と無縁ではないだろう。“陸の孤島”と呼ばれた利便性の悪さも、無関係ではない筈だ。不便であればあるほど住宅の賃料等も安い筈で、真面な職に就けない者たちが集まる素地は、充分にあった訳だ。それらを考え合わせると、「日本社会を流浪する元少年Aが、この地へと来るのは必然だった」と筆者には思えてくるのだ。


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