骨の髄からのアウトロー、中勝美伝説…「舞鶴の事件は俺がやったんや」、和製ナチュラルボーンキラーの破天荒な生涯

舞鶴女子高生殺害事件で無罪を勝ち取った“冤罪ヒーロー”の本性は、殺人の前科があった札付きのワルだった。司法は何故、こんな危険な男を野放しにしてしまったのか――。 (取材・文/犯罪ジャーナリスト 響波速人)

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京都府舞鶴市で2008年5月に起きた女子高生殺害事件で、殺人等の罪で起訴された後、最高裁判所で無罪が確定し、別の殺人未遂事件で実刑判決を受けて服役していた中勝美(67・右画像)が2016年7月、大阪医療刑務所で病死した。散々社会に迷惑をかけまくった悪党にしては、不似合いなほどの“安らかな死”だった。実は、中が最初に世間を震撼させる事件を起こしたのは、1973年9月、滋賀県草津市で交際中だった女性(当時24)とその兄(当時37)を刺殺したというものだった。当時、中は25歳のバーテンだった。中は大阪のミナミでクラブのボーイをしていたが、そこにホステスとして入店してきた女性と知り合い、同棲生活を開始。事件の4ヵ月前にプロポーズしたが、今でいうDV男だった為、女性の母親や兄弟に反対され、彼女は京都市中京区の実家に戻っていた。諦め切れない中は、「今度こそ真面目に働く」と言って女性を連れて帰ったが、事件の4日前には再び家族によって連れ戻され、彼女は滋賀県草津市の兄の家に匿われていた。中はそのことを突き止め、「何度も会わせてほしい」と頼んだが、兄によって断られていた。事件当日、中は朝7時から交渉に訪れたが、兄に「会わせない」と冷たくあしらわれ、「殺してやる」と激高。近くの金物店に出刃包丁を買いに行き、家の前の道路で待ち構え、2人が外に出てきたところを滅多刺しにした。更に、近所の民家に押し入り、主婦(当時26)とその妹(当時24)を人質にして立てこもった。中の事件は日本中の注目を集め、テレビで生中継された。

中は人質に主婦に、「同棲していた女を、女の家族に引き離された。1週間考え抜いた挙げ句、やったんだ…」等と涙を浮かべて、事件の経緯を語り、姉妹に自首を勧められて、約6時間後に投降。殺人容疑等で逮捕された。裁判では、これらの経緯が考慮され、懲役16年という軽い刑で済んだ。実質的には12年で仮釈放されることになり、出所後に知り合った女性と結婚。一女を儲けた。だが、程なくして夫婦関係は破綻。その頃から、舞鶴市内で若い女性に対する猥褻事件を起こすようになった。1991年9月、中は自転車に乗った女性(当時21)に体当たりして襲いかかり、抵抗する彼女の顔等を鈍器で執拗に殴るという事件を起こした。悲鳴を聞きつけた通行人の海上自衛官2人が駆けつけ、逃げる中を40mほど追いかけて取り押さえ、警察に引き渡した。中は当時、43歳のグラインダー工員。この事件では懲役6年の実刑判決を言い渡された。この頃を知る懲役仲間は、次のように語る。「アイツは刑務所でも女の話ばかり。セックスの話も延々とする。『下着はこうして盗めばいい』みたいな講義を、皆の前で喜々としてやっとった。最初の事件については、『俺の事件は田舎でやったから、凄い騒ぎだった。出所後は、ヤクザが俺の顔を見るなり逃げ出した』等と自慢げに話していた」。その後、出所すると、舞鶴事件の現場近くの府営住宅で1人暮らしを始めた。生活保護を受給し、鉄屑拾いをして糊口を凌ぐ日々。だが、近所での評判は最悪だった。「自宅は有刺鉄線が張り巡らされていて、庭までゴミが溢れ、ちょっと注意しようものなら棒を振り回して大暴れする。感情の起伏が激しく、直ぐキレる危ない人でした。昼間から自転車でフラフラしていて、マスクにサングラスという格好も不審者そのもの。他人の家をジーッと見とる姿は不気味やったし、スコップで犬や猫を殴る等、動物虐待も日常茶飯事でした」(近隣の住民)。更に、“ヤマモト”という偽名で繁華街に繰り出し、ホステスにストーカー紛いの行為を繰り返していた。「『パチンコ屋におったやろ?』『○○と一緒におったやろ?』と何でも知っていた。何度、店を変えても、どこからか聞きつけてやって来る。いつの間にか自宅も突き止められて、『プレゼントを持ってきた。中でコーヒーでも飲ませてくれへん?』と頼まれたこともあった。カラオケの十八番は“ふたりの大阪”で、デュエットすると『股間を触ってくれ』と言われた」(付き合いのあったホステス)。そして2008年5月7日、女子高生の小杉美穂さん(当時15)が殺害される事件が起きる。遺体が見つかった場所は、中の自宅の目と鼻の先だった。防犯カメラに映った美穂さんの後をつけ狙う自転車の男は、中に酷似していた。

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事件当日に中がスナックを出た時間や、当日の服装も合致していた。更に、「中と美穂さんらしき女性が路上で会話している様子を目撃した」という2人のトラック運転手も現れた。それなのに、中は犯行を否認した。「公判では、証人として出廷した目撃者に対し、『犯人はコイツです』と指差したり、『被害者の母親が保険金詐欺の目的で殺害した』という持論を繰り広げ、悲痛な心情を述ベる母親に対し、『真犯人の癖に何言うとんねん』と暴言を吐いたりした。1審判決では、『被告が犯人であることに疑いを差し挟む事情はない』として無期懲役が言い渡されたが、中は『裁判長、私は無罪です!』と何度も叫んでいた」(京都地裁詰め記者)。ところが、2012年12月の大阪高裁での控訴審判決で、逆転無罪を言い渡されるのだ。“疑わしきは被告人の利益に”という刑事裁判の原則に立ち返ったもので、「間接証拠から、被告人が犯人でなければ説明できない事実があるとは言えない」というものだった。奇しくも、中に無罪判決を言い渡したのは、大阪教育大学附属池田小学校児童殺傷事件で宅間守(享年40)に死刑判決を言い渡した川合昌幸裁判長だった。「私は無実です。今日の判決には満足している。警察や検察に対しては犯人扱いされ、強い憤りを持っている」。一躍、“冤罪のヒーロー”になって拘置所から釈放されたにも拘わらず、中は半年もしないうちに、大阪市西成区のコンビニでアダルト雑誌を万引きしたという窃盗容疑で逮捕された。この事件で懲役1年2ヵ月の実刑判決を受け、大阪刑務所に服役している時に、舞鶴事件が最高裁でも「被告人を犯人だとするには合理的な疑いが残る」として、無罪になったことを聞いた。68歳で出所した当日、「これからどうしようか?」と考えていた時、JR堺市駅のホームで声をかけてきたのが、殺人未遂事件の被害者となる女性(当時38)だった。女性は大阪市北区兎我野町でホテルを経営していたが、慢性的な従業員不足に悩み、「刑務所を出てきた人なら仕事が無いから無条件で働いてくれる」と風俗店のキャッチをしていた知人からアドバイスを受け、如何にも“それ”だとわかる中に声をかけた。

案の定、中は「住むところも働くところも無いので困っている」と言うので、女性は住む場所と食事を提供するという条件付きで、月給6万円で働くことを了承させた。ところが、中は客を部屋に案内したり、電話対応をしたりといった簡単な仕事もできず、僅か2日後にはクビを宣告された。しかし、中は「ボランティアでもいい。偶に美味しい食事を食べさせてくれればいいから」と言って食い下がり、女性はしぶしぶ承諾したが、その後も客とのトラブル等が絶えず、遂にはっきりと「辞めて下さい」と告げた。それでも中は小遣いをせびりに来たり、「洗濯機を使わせてほしい」と頼みに来たりした。「兎に角、いつもお金に困っている様子だった。『3000円でも5000円でもいいから貸してくれ。(生活)保護が出たら返す』と言っては、お金を無心された。元々取っつき難い性格で、一癖ありそうな感じだったので、『関わりたくない』と思い、貸さなかった」(中と同じ福祉マンションに住んでいた住民)。そして、中は2014年11月5日、女性が泊まっているホテルの一室に押し入り、いきなりナィフで切りつける事件を起こしたのだ。「『お前が好きや』と言われ、キスをされて胸を揉まれまくった。ナイフを首に突きつけ、『服を脱げ。脱がないと刺すぞ』と脅され、上半身を裸にされたが、セックスを断るとナイフを振り下ろしてきた」(女性)。女性は、一旦はナイフを奪い、中に馬乗りになって電話の子機で殴る等して応戦した。しかし、中は直ぐにナイフを取り返し、女性の右頬を横から突き刺した。しかし、彼女はここで怯むどころか、口の中に溜まった大量の血を中の顔に向けて吐き出した。そして、一瞬の隙を突いて部屋を飛び出し、向かいのヘルス店の従業員に助けを求めた。中は駆け付けた警察官によって、殺人未遂容疑で逮捕された。「女性のほうが先に攻撃してきた。無言のまま突然、服を脱いで裸になり、棚に置いてあったナイフを手に取って襲ってきた。更にベッドに押し倒し、電話の子機で100回くらい殴ってきた」。中はこんな風に言い訳したが、大阪地裁は「被告人の供述は不自然且つ不合理で信用できない」として、懲役16年を言い渡した。寧ろ、「シャバでの生活よりマシだ」と思ったのか、中は控訴することなく服役した。「中は舞鶴の事件についても、『本当は俺がやったんや。あの子には顔を見られたからな。凶器のバールを埋めたのは、警察が捜索した場所とは山一つ違うから、探しても絶対見つからんよ』等と言っていた。内縁の妻とその兄を殺した事件についても、『実はあの2人はデキとったんや。だから殺してやったんだ』なんて言っていた」(中と同房だった元受刑者)。中が関与した殺人事件は他にもあると言われているが、最早真相は闇の中だ。ただ1つ言えることは、「25歳の時に事件を起こした時点で、もうシャバに戻してはいけない人物だった」ということだろう。


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