【獅子の計略・習1強時代へ】(06) “対日改善”駆け引き

20170330 02
「ドナルド・トランプ大統領は、ノーベル平和賞を取るかもしれない。中国と日本を和解に導いた功績で、だ」――。昨年11月のアメリカ大統領選から暫くの間、中国人識者の間ではこんなジョークが囁かれてきた。「トランプ大統領という共通の不安要因を“媒介”に、日中の歩み寄りが可能になる」という見立てだ。安倍晋三首相がトランプ大統領と2度会談して、“日米蜜月”を先ず優先し、アメリカと協力して中国の海洋進出を牽制したことから、“日中接近”の機運は遠退いたかに見えた。だが、中国の習近平国家主席は今も、「“日本は手元に引き付けておくべき対象”という認識だ」と中国外交筋は解説する。トランプ大統領は、習主席が今年後半の第19回共産党大会で発足させる2期目体制の盤石化に向けて、「1㎜も失敗が許されない」(中国共産党関係者)という局面で登場した。中国外交を取り巻く不確実性を減らす上で、日本等の周辺国との安定した関係作りは喫緊の課題だ。カレンダーも悪くない。今年は国交正常化45年、来年は平和友好条約締結40年と、「重要な節目」(中国の王毅外務大臣)が続く。「『この2つの年を活用し、関係改善を進めたい』との安倍首相の言葉に印象付けられた」。習主席も、昨年11月に会談した安倍首相に、対日関係改善への意欲をはっきり伝えた。

習主席は2012年、日本政府の沖縄県尖閣諸島国有化を巡る日中対立が激化した直後に、中国トップに就任。2年後、北京での『アジア大平洋経済協力会議(APEC)』で漸く実現した安倍首相との会談での“仏頂面”の印象が強いが、習主席周辺は「(本人は)日本に悪印象は持っていない」と口を揃える。それを窺わせるのが、2015年5月、自民党の二階俊博総務会長(現在の幹事長)が約3000人を伴った訪中時の対応だ。その最中、安倍首相の昭恵夫人が自身のフェイスブックで、靖国神社を参拝し、併設の戦史展示施設『遊就館』を訪れたことを写真付きで紹介した。北京で訪中団の対応に当たっていた関係者は凍りついた。「『親中派の二階氏に対中外交の主権を握らせない』という言相周辺の意思」とも受け止められ、二階氏が切望していた習主席との会議や首相親書の手渡しは“絶望的”との観測が広がった。だが、習主席は人民大会堂で3000人の前に姿を現し、「中日関係を重視する基本姿勢は今後も変わらない」と言い切った。日本の対中世論を分断する狙いがあったにせよ、“抗日戦争勝利70年”で反日的な宣伝戦を仕掛けている最中に、中国のトップが“対日重視”を明言する影響は小さくない。その後、全面改装された盧溝橋の『抗日戦争記念館』には、3000人の前で演説する習主席の大きな写真が展示された。だが、中国共産党が政権の正統性を主張する為に長年利用してきた“反日”の火種は、些細なきっかけで再燃する可能性がある。官民の日中交流が動き出していた今年1月には、旧日本軍による南京事件を巡る『アパホテル』のボイコット騒きが起き、冷や水を浴びせた。「結局、どこまでも中国にとって日本はリスク」(外交筋)との懸念は消えない。習主席は2023年3月までの2期10年、安倍首相は3選なら最長2021年9月までと、共に長期政権を睨む。「習主席の権力が強まれば、敏感な対日間題での習主席の裁量も広がる」(外交筋)との期待がある一方、習主席は南シナ海の軍事拠点化のような“力による現状変更”による強国外交を加速している。“航行の自由”を主張し、中国の軍事的台頭を視野に国防強化を図る安倍首相とは相容れない。欧米の内向き傾向が続く中、世界の“1強”も視野に入れた習主席の中国と、国際舞台で存在感を増す安倍政権との長い駆け引きが続く。 =おわり

               ◇

五十嵐文・竹腰雅彦・鎌田秀男・蒔田一彦・中川孝之・幸内康が担当しました。


⦿読売新聞 2017年2月27日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 中朝韓ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR