【男の子育て日記】(45) 11月某日

怒り頂点の日。記子が、「岸和田まで裁判所に行く序でに、逮捕の連絡があった男のところに顔を出す」という。「お前、まさかまた一発ヤッたことがある男とかじゃないだろうな?」「…一発ぐらいは」。本当にこの女、1秒でも早く死なないかな。俺のことが好き、2人目の子も欲しいとか言うけど、俺が嫌がることばかりしやがんの。そんなの断われよ。喜んで送り出す男は、1万人に1人もいないよ。本当に人の気持ちがわからない女だな。よく夫に話せるよ。お前の旦那は、全てを許してくれるマリアじゃない。「あっちから頼んできたことだ」と言うけれど、簡単にヤれたことがある弁護士だから頼み易いだけ。面会に行ったら行ったで、「コイツ、未だ俺に気がある」と男は思うものなんだよ。先日の消防士といい、いつまでも昔のセフレやヒモに優しくするな。お前は『ホテルルワンダ』の主人公か? 彼はホテルマンとしての職業倫理から、ツチ族等の1200人をホテルに匿って、命を助けた。お前は『帰ってきたウルトラマン』の『怪獣使いと少年』の回のパン屋の女の子か? 皆が差別する男の子にもパンを売る理由を訊かれた彼女は、「だってあたし、パン屋だから!」と答えた(※詳しくは町山智浩さんのブログで検索して下さい)。「ケツの穴の小さい夫より、目の前の困っている人を助ける職業倫理を優先させる」ってか? そりゃあ御立派なことだ。

あのな、ヤリマン過去のことは問わないけど、お願いだから現在まで継続させないでくれ。俺は過去の女と誰一人連絡を取っていないし、たとえ川で溺れていても飛び込まない。他の人に任せるよ。そんなの当たり前だろ。お前は、その当たり前もできていないんだよ。あーあ、早くこの女が死んで、一文と2人で人生をやり直せないかな。俺が癌になったら全部、三輪記子のせい。俺が早死にしたら皆、お前のせいだって思うよ。一文の本当の父親も俺じゃないだろって思われているよ。俺だって信用できないよ。こんなヤリマンの深情けを。どうせ、どうして俺がここまで怒っているかもわからないんだろ? 自分が学歴コンプレックスの塊だから、「東大女の優秀な遺伝子を残したい」と思って結婚して、一文を産んでもらった。それには感謝しているし、幸せだけど、それ以外は大後悔。地獄。お願い! 死んで! 頼むから!…と、ここまで書いたところで妻が起きてきた。「朝の5時だよ…眠れないの?」「怒りのあまりな」。しょうがないなという感じで、記子が股を開く。怒張ペニスで痛めつけるようにヤる。半泣きで膣内射精。記子と出会う前、「いつか檀一雄の“火宅の人”や、島尾敏雄の“死の棘”のような小説を書きたい。俺なら書ける」と思っていたけど、何かもうイイ線来ているような気がする。いや、まだまだだな。鳥羽口にさえ立っていない。コイツとの全面戦争は、これからが本番だ。


樋口毅宏(ひぐち・たけひろ) 作家。1971年、東京都生まれ。帝京大学文学部卒業後、『コアマガジン』に入社。『ニャン2倶楽部Z』『BUBKA』編集部を経て、『白夜書房』に移籍。『コリアムービー』『みうらじゅんマガジン』の編集長を務める。2009年に作家に転身。著書に『日本のセックス』(双葉文庫)・『ルック・バック・イン・アンガー』(祥伝社文庫)・『さよなら小沢健二』(扶桑社)等。


キャプチャ  2017年3月30日号掲載
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