【「佳く生きる」為の処方箋】(45) 病院ランキングの裏事情

手術数の多い病院を紹介する“ランキング本”や所謂“名医本”が、多数出版されています。私もよく取材を受けますが、この手の本には手術数やその内訳等の具体的な数字が載っていますから、病院や医師の実績を客観的に知る目安になり、病院選びにとても役立ちます。但し、情報を正しく活用するには、読む側の“読解力”が必要です。最近流行りの言葉を使えば“リテラシー”。情報を適正に活用する能力のことで、この場合は“ランキング本リテラシー”と言えるでしょう。例えば、基本的なことですが、読む時には先ず、編集記事と広告の記事とを見分けます。意図的かどうかはわかりませんが、記者が取材をして書いた編集記事なのか、広告の記事なのか、素人目にはよくわからないものもあります。一般に、広告の記事の場合は、ページの欄外等に小さく“広告”とか“AD”と入っているようですから、チェックしてみて下さい。また、症例数については、どんな調査法に基づくのか、数字の根拠を確認してほしいと思います。そして、医療機関や医師に関心を持ったら、インターネットでその病院のホームページも是非確認して下さい。最近は診療実績を紹介しているところが多いですから、本には無い情報も得られるかもしれません。ランキング本の情報は有用ですが、実は数字には“裏事情”があることも知っておいてほしいと思います。外科医の腕は、どれだけ手術をしたかに比例しますから、症例数は外科医の実力を推し量る材料になります。しかし、中には未だ必要でない手術をして数字を稼いでいる医療機関があるのも事実です。手術数の増加は病院の利益に直結し、知名度アップに繋がります。

ランキング本が市民権を得た今、それに載ることが病院の宣伝にもなる訳です。例えば、検査技師が異常を発見した段階で即手術という医療機関もあります。幸い、医師の腕が良いのでトラブルにはなっていませんが、「手術は本当に必要だったのか?」という疑問は残ります。以前も書きましたが、元気な心臓に対する手術ほど成功率は高いものです。こうした医療機関では、積極的に手術をし、成績も良いということで、症例数は右肩上がりです。“やり過ぎの医療”に対しては、何かトラブルでも起きない限り、中々歯止めが利きません。止められるのは医師の良心しかないからです。勿論、裏事情も何も無く、ランキング本の数字がそのまま医療機関の実力を表している場合もあります。実際にはそちらのほうが多いでしょうが、患者さんがそれを見極めるのは至難の業。やはり、最終的にはセカンドオピニオン等で専門家の意見を聞くのが得策でしょう。私は、患者さんが「この病院で手術を受ける」と決めた時点で、患者さん側にもある程度の“自己責任”が発生すると考えています。これは、交通事故の“過失割合”の考え方に似ています。仮に、交差点で車同士の衝突事故に遭った場合、こちらが交通法規を守って運転していたとしても、過失がゼロになることは先ずありません。交差点に進入した段階で安全確認等の義務が発生する為、通常は2割程度の過失割合があると見做されるのです。つまり、加害者と被害者の過失割合は8対2という訳です。これを医療に当て嵌めてみると――。患者さんが病院を選んだことは交差点への進入に相当しますから、その時点で自己責任が“2割”生じることになります。この場合の自己責任とは、自分で自分の命を守るということ。たとえ相手が医師であろうと、自分の命を丸投げしてはいけないのです。この自己責任を果たす為にも、ランキング本等の情報を適正に活用してほしいと思います。


天野篤(あまの・あつし) 心臓外科医・『順天堂医院』院長。1955年、埼玉県生まれ。日本大学医学部卒。『亀田総合病院』『新東京病院』等を経て、2002年に順天堂大学医学部心臓血管外科教授に就任。2012年2月18日に天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀。2016年4月より現職。著書に『一途一心、命をつなぐ』(飛鳥新社)・『この道を生きる、心臓外科ひとすじ』(NHK出版新書)等。


キャプチャ  2017年3月30日号掲載
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