【変見自在】 吉田清治ショック

朝日新聞は今更のようだけれど、面白くない。ただ面白くないだけでなく、中身が無い、新鮮味が無い。何というか、古本屋で見る古雑誌のようで、古色蒼然とさえしている。何故、そんな印象なのか。新聞記事の8割は、官庁の発表ものとか、各社共通ネタでできている。紙面化されても差は無い筈だが、時に記者の筆力とか新聞社の姿勢とかでかなり違ってくる。例えば、先日の全人代だ。ネタは退屈な会議だが、産経新聞は習近平と李克強が握手するか、目を合わすか、見どころを教える。朝日は支那に気を使うから、そういう嫌味な楽しみ方は書かない。ところが、その記事が支那を痛く刺激したらしい。閉幕後、恒例の首相記者会見があったが、産経の記者だけが取材禁止。会場から摘み出された。産経はそれを報じ、抗議もしたが、朝日は産経記者が追い出された顚末を書かなかったから、ひたすらつまらない紙面になった。新聞は、共通ネタの他に2割程度、特ダネを含む独自ネタを入れて、他社との差別化を図るのが形だった。朝日は、この分野で一時は他社を圧倒した。昭和25年、地下に潜行した共産党幹部・伊藤律を、朝日の記者が伝手を辿って、遂に六甲山中でインタビューに成功した。GHQが全警察に命じて追っかけていた男だ。それを嘲笑うように朝日の記者が出し抜き、たった3分間とはいえ話を聞いた。皆、「朝日は凄い」と思った。朝日の特ダネはそれだけじゃあない。下関の労務報国会の職員・吉田清治が、「陸軍兵士を指揮して昭和18年5月、済州島に上陸し、205人の若い女を強制連行した」「女たちは支那と戦う皇軍兵士の慰安婦にされ、最後は皆、殺された」ことをスクープした。吉田は、日本軍の記録にも無い戦時中の恥ずべき行為を、白日の下に曝した。

他社が驚く中、松井やよりが「釜山でも若い女が拉致された」と報じ、植村隆も「平壌でも日本軍が若い女を戦場に連れ去った」と畳みかけた。ほぼ30年間、他社の追随を許さない独走スクープだった。未だある。西表島沖の名物の大珊瑚に“KY”の落書きがあるのを、その日に潜った朝日のカメラマンが発見した。毎日潜っている竹富島の漁師も知らなかった大特ダネだった。朝日は、「日本人の記念碑になる。精神の貧困の、すさんだ心の…」と日本人を論した。四倉幹木はレイテを訪ね、95歳老人の首の後ろに、日本軍兵士に殴られてできた頭出腫が未だ残っているのを見つけた。四倉は、それを朝刊にカラー写真で紹介した。一見して金日成と同じ脂肪瘤風だが、兎も角、半世紀以上も隠されてきた残忍日本軍の生きた証と主張した。そのうち、『学び舎』の教科書に載るかもしれない。朝日の強さを示す数々のネタだが、ただ、そのどれもが記者の提造した嘘っぱちと判明した。現社長の渡辺雅隆は、「記事は事実を書け」と命じた。記者は、「独自ネタは創るもの」と教わってきた。事実を書けったって取材も裏取りも知らないから、記事の書きようもない。“吉田清治”取り消し以降、朝日から独自ネタが消えた。スカスカの紙面をどうするか。先日は、池澤夏樹とかが琉球新報に載せたコラムをそのまま載せた。「何で地方紙の二番煎じを読ませられるのか?」。読者は首を傾げたが、まぁ本土では独自ネタになる。昔、連載した夏目激石の小説も再掲した。それで記事の再利用を思いついたか。再利用なら裏取りも取材もいらない。その典型が、連載『新聞と9条』だ。「土井たか子が燃えた」とか、「中曽根が侵略を認めた」とか、先日は藤尾正行が“韓国の無責任”を言って文部大臣を解任された話が載った。今なら正論だが、紙面に今の視点は無い。昔の暴走自虐史観そのままが載る。こうしてみると、昔から嫌な新聞だったんだ。


高山正之(たかやま・まさゆき) ジャーナリスト・コラムニスト・元産経新聞記者・元帝京大学教授。1942年、東京都生まれ。東京都立大学法経学部法学科卒業後、産経新聞社に入社。警視庁クラブ・羽田クラブ詰・夕刊フジ記者を経て、産経新聞社会部次長(デスク)。1985~1987年までテヘラン支局長。1992~1996年までロサンゼルス支局長。産経新聞社を定年退職後、2001~2007年3月まで帝京大学教授を務める。『高山正之が米国・支那・韓国・朝日を斬る 日本人をますます元気にする本』(テーミス)・『アジアの解放、本当は日本軍のお陰だった!』(ワック)等著書多数。


キャプチャ  2017年3月30日号掲載
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