【東京情報】 聖徳太子論争

【東京発】文部科学省が、小中学校の次期学習指導要領改訂案を公表した。そこでは、聖徳太子の呼称について、小学校では“聖徳太子(厩戸王)”、中学校では“厩戸王(聖徳太子)”と併記する方針だった。しかし、一部から不満の声が噴出。『新しい歴史教科書をつくる会』は、「律令国家形成の出発点となった聖徳太子を抹殺すれば、日本を主体とした古代史のストーリーが殆ど崩壊する」と批判。結局、文科省は記述を元通りに戻すようだ。フランス人記者が吐き捨てる。「頭悪いよな。聖徳太子は、没後100年以上経ってから付けられた呼称だろう。お伽話は別として、史実を学ぶ学問の場で“厩戸王”という呼称を使うのは当然だろう」。アメリカ人記者が同意する。「呼称以前に、聖徳太子の実在自体が疑問視されている訳でしょう? 日本の歴代天皇は、推古天皇辺りまでは実在を疑う声もある。聖徳太子は推古天皇の摂政なんだから、聖徳太子が存在しなかった可能性も十分にあるわ」。確かに、有名な旧1万円札の聖徳太子の肖像画も、当時の日本人の服装とは違う。あれは中国の絵を流用したものであり、長い髭も後から描き加えられたものだ。有名な『十七条憲法』は、儒教精神に基づく官吏の心得である。推古朝時代には官僚制度のシステムは完成していないので、“官僚こうあるべし”という法文が出てくること自体変だ。当時の日本には、文字を使うことのできる人間は殆どおらず、『古事記』は記憶力の良い人間が暗唱し、伝承されていた。ヤマトタケルやスサノオノミコトと並んで、“古代史の英雄”に数えられる聖徳太子の呼称について議論すること自体がナンセンスだろう。つまり、聖徳太子はイギリスのアーサー王と同じ。「我々の先祖には凄い人物がいるんだぞ」と言いたいが為に作られた伝説なのだ。

アメリカ人記者が続ける。「厩で生まれた王というのは、どう考えてもイエス・キリストのことよ。『原始キリスト教の伝説がシルクロードを経由して中国に伝わり、それが日本に入ってきて聖徳太子像が作られた』と考えるのは、それほどおかしなことではないわ」。アルバイトの小暮君が反論する。「僕は中学校の修学旅行で、奈良の法隆寺に行きました。子供心に、『昔の日本には凄い人がいたんだな』と感心した記憶があります。其々の国には物語がありますよね。『我々は世界で一番の民である』という教育は、日本に限ったことではありません。イギリス国歌の“God Save the Queen”だって、国の誇りを前面に打ち出したものでしょう。勿論、歴史学や考古学では実証的な研究をしなければなりませんが、小学生くらいだったら歴史に興味を持つように、聖徳太子を英雄化しても害は無いと思います」。歴史を学ぶ子供にとって重要なのは、当時の日本と隋の間係を頭に上手く思い浮かべることだろう。そういう意味では、聖徳太子をフィクションとして切り捨ててしまうのはもったいない。問題は、小学生レベルの大人が多いことだ。神話と事実、ライトノベルや講談と歴史を混同してしまう。中国との貿易が活発になった室町時代、足利義満は交易をスムーズに行う為、自ら“王”と名乗った。王は皇帝の下に位置するので、中国に遜った訳だ。本居宣長等といった江戸時代の国学者は、これを「日本を貶める行為だ」と批判した。そこで、それまで注目されてこなかった聖徳太子が担ぎ出されることになる。聖徳太子が隋の煬帝に「日出処の天子、書を日没処の天子に致す」という書を出して、激怒させたとの話が典型だ。江戸時代の日本人は、「当時の日本には中国と対等に渡り合った大人物がいた」というエピソードを歓待したのである。フランス人記者が頷く。「自信を喪失すると、それを慰める為の史観が必要になる。新しい数科書がどうこうという連中が、この問題に口を出すのもそういうことだ。当時の国学者は、推古天皇の時代は不明なことが多いので、勝手に伝説を付け加えていったのだろう。その出所が中国の肖像画と官僚制度だったというのは皮肉だけどな」。

アメリカ人記者が笑う。「明治の開国の時代になると、今度は列強に対してコンプレックスを抱く日本人のプライドを喚起する為に、自慰史観が利用されるようになる訳ね。それがナショナリズムに繋がったというのは短絡的だけど、少なくとも日本人のドメステイックな意識を定着させるのには一役買っている筈よ」。歴史とは本来、わかり難いものだ。だから、慎重に扱う必要がある。しかし、多くの人は“わかり易い物語”を求める。そこに目をつけた司馬遼太郎は、「一介の浪人が近代日本の礎を築いた」という物語を作った。『竜馬がゆく』が書かれた高度経済成長期は、「これからは官僚や財閥ではなく、俺たちサラリーマンが主役なんだ」という空気があった。司馬は、それを上手く取り込んだのだ。小暮君が食い下がる。「わかり易い物語にすると、童話や紙芝居がそうであるように、正義の味方と悪役を設定する必要が出てきます。これは“司馬史観”等と批判されますが、それでも歴史に目を向けるきっかけになると思います。“リバティ・バランスを射った男”という西部劇の中に、『ここは西部だ。事実と伝説があれば、伝説を事実にするんだ』という言葉が出てきます。多くの人は、事実より伝説のほうを好むんです」。アメリカ人記者が毒を吐く。「バカね。それこそ“ポスト真実”じゃないの。歴史が悪用されることが問題なのよ。日本人は歴史上の偉人に学びたがる。書店に並んでいるビジネス書や自己啓発書も、そんなのばかりだわ。少し前に坂本龍馬ブームがあったけど、感化されて自分のことを『平成の坂本龍馬だ』なんて言う輩が沢山出てきた。“龍馬プロジェクト”とかいう変な政治家の集団もあるし、それこそ“日本維新の会”は典型。そういう連中に碌なのはいないわ」。フランス人記者がオチをつけた。「その坂本龍馬だって、西郷隆盛の使い走りの1人に過ぎなかった。松井一郎や橋下徹も精々、安倍晋三の使い走りだろう」。 (『S・P・I』特派員 ヤン・デンマン)


キャプチャ  2017年3月30日号掲載
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

橋下・慰安婦・侵略・安倍 [ 野崎ほし ]
価格:842円(税込、送料無料) (2017/3/30時点)


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

できそこないの男たち [ 福岡伸一 ]
価格:885円(税込、送料無料) (2017/3/30時点)


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【送料無料】聖徳太子 5000円札 未使用
価格:8640円(税込、送料無料) (2017/3/30時点)


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

送料無料 田村竹世 聖徳太子 掛け軸 掛軸
価格:12501円(税込、送料無料) (2017/3/30時点)


スポンサーサイト

テーマ : 教育問題
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR