【科学捜査フロントライン】(18) 犯行声明文の筆跡から容疑者を割り出す…筆跡鑑定最前線

インターネットが無かった時代、犯行声明文が警察やマスコミに届き、世間を騒がせる事件があった。その度に筆跡鑑定が行われ、犯人の割り出しに貢献してきた。犯行声明がインターネット上で行われるようになった今でも技術革新は進み、筆跡鑑定は様々な分野に貢献している。 (取材・文/フリーライター 大室衛)

20170403 09
近年、筆跡鑑定が犯人逮捕の糸口となった事件として先ず思い浮かぶのは、1997年に発生し、日本全国を震撼させた神戸連続児童殺傷事件、別名“酒鬼薔薇聖斗事件”ではないだろうか。当時14歳の中学生だった少年Aが、兵庫県神戸市須磨区で数ヵ月の間に複数の小学生を襲い、2人が死亡、3人が重軽傷を負った事件だ。改めて事件の詳細を説明する必要はないだろうが、この事件の特異性は、犯人が中学生だったことや、その犯行の残虐さだけではなかった。それに加えて、“酒鬼薔薇聖斗”という名前の犯行声明文を遺体に添え、その後も警察に対する挑戦状とも言える手紙を、地元の『神戸新聞社』に送ったことが挙げられる。事件発生当初、「犯人は30~40代の男性ではないか」等と報道されていたが、その後の警察の捜査により、少年Aが容疑者として浮上してきた。そこで警察が、少年Aが書いた作文と2つの犯行声明文の筆跡鑑定を行ったところ、「類似した筆跡が比較的多く含まれる」という結果が出た(※但し同一人物によるものという結論にまでは至らなかった)。そこで警察は、少年Aに任意同行を求めて、事情聴取を行った。その際、犯行を否認する少年Aに対して、取調官が「作文と犯行声明文の筆跡が一致した」と告げると、観念した少年Aは犯行を認める供述を始めた――。現在はコンピューターや光学機器を使った解析等、先端の技術を駆使して分析している筆跡鑑定だが、実はその歴史はかなり古い。今から約2000年前の紀元前1世紀、初代皇帝のアウグストゥスが統治していた古代ローマ帝国で、役人や武将らによる公文書の偽造が横行していたことから、筆跡による鑑定が始まったのが最初とされている。日本でも、16世紀後半の安土桃山時代に、平安時代から鎌倉時代に書かれた古筆の真贋を判別する鑑定人が現れ、以降、その一族が様々な古筆の鑑定方法を編み出している。

このように、長い歴史を持つ筆跡鑑定だが、人の目による鑑定であった為、いくら鑑定人が修練を積んでいたとしても、誤判断は避けられなかった。その為、その誤判断を減らすべく、現在ではコンピューターや光学機器を使った筆跡鑑定が主流となっている。今回、取材協力を得た『法科学鑑定研究所』では、筆跡鑑定も行っており、鑑定の客観性を担保する為に、筆跡のコンピューター解析・数値解析を行っている。最近の筆跡鑑定について、冨田光貴所長に話を聞いた。「従来の筆跡鑑定は、鑑定人が筆跡のハネ・止め・ハライ、それに筆の運ぶ角度を見て、鑑定人の主観によって、同一人物が書いたものか、本物か偽造か等を判断していました。しかし現在、当社で行っている筆跡鑑定の方法は、コンピューター解析により文字を図として捉え、其々の書き始めから書き終わりまで、ハネ・止め・ハライ以外にも、線の流れ等を座標にして、その特徴点を数値化して分析しています。数学的な要素も加わってくる為、これを詳しく説明する為には、本が1冊書けてしまうほどです」。そう前置きした上で、冨田所長は簡潔に説明してくれた。「例えば、ある文章について、Aさんが書いたものなのかどうかを鑑定する場合、先ずはAさんが書いた文章の文字全てを高解像度でスキャンし、文字の筆跡を座標として捉え、多変量解析という手法(※複数の結果変数からなる多変量データの関連性を仮説に基づいて明確にする統計的方法)を用いて、統計的な判断から筆跡の癖等をデータ化して、Aさんが書く文字の個人的な変動の幅を捉えていく。同じ人が書いた文字でも筆跡が全く同じになることはないので、『この人が書く文字というのは大体これくらいの変動の幅の中で収まりますよ』『この漢字ならこうですよ』という統計的なデータを取っているのです。そこから、問題になっている文章の文字と比較して、この文字はAさんが書く文字の変動の中に収まるのかを見て、変動の幅から外れていれば別人が書いたもの、収まれば当人が書いたものという判断をしていく訳です」。人が書く文字のどこまでが個人の変動の幅なのかを判断するには、膨大なデータの蓄積が必要になる。法科学鑑定研究所では、長年に亘って集めた筆跡のデータベースがあり、それを元に分析が行われている。「従来の筆跡鑑定では、画数が多い漢字だけが対象になっていましたが、この手法なら、アルファベットやサインでもその特徴を捉えることができれば、データ化することができます。既に、この手法は高い精度で判別することができるので、筆跡鑑定の結果が科学的な証拠として、裁判でも十分に採用に値するという流れに、これから更になっていくと思います」(同)。とはいえ、デジタル化やコンピューターでの処理によって、誰にでも筆跡鑑定ができるという訳ではなく、筆跡鑑定の専門家はやはり必要になってくる。「コンピューターにデータを入れれば、誰でも結果が出せるというものではありません。DNAも、機械が分析するからといって、専門の研究員が不要になる訳ではないのと同じです。この分野の専門家がやらないと誤判定を招く可能性もあり、そこにはやはり専門家による目で見た判断も重要で、目視が不要になる訳ではありません。そういった意味でも、筆跡鑑定の専門家を育てていくことも重要になってきます」(同)。因みに、冨田所長によると、インターネットで“筆跡鑑定”・“文章鑑定”といったキーワードで検索して出てくる鑑定人の内、90%はエセ鑑定人。こういった鑑定人は、科学的な手法で鑑定するのではなく、依頼者の意向に沿った鑑定結果を出すだけのことが多いのだという。

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法科学鑑定研究所に持ち込まれる案件の8割は民事における依頼だが、筆跡鑑定においてもそれは同様。その中で最も多いのが、遺言書と契約書の鑑定だという。「遺産相続額や契約金額等、どちらも金額的に大きなものとなる為、民事裁判で争う為に鑑定が持ち込まれるケースが殆どです。遺言書の場合は、遺族の間から複数の遺言書が出てきて、其々書かれた時期が異なったりします。その場合、どれが本物でどれが偽造か、又はどれも本物であるかという鑑定になります。また契約書では、例えば契約書自体は確かに本物だが、『書かれてある年にこんな契約書は作っていない』等ということで持ち込まれたケースもあります。こういった場合は筆跡ではなく、インクの成分を分析して、染料や鉛の量の違いを見たり、赤外線・紫外線・蛍光等を使った光学的な分析でアプローチすることで、真贋を判別することができます。その為、筆跡鑑定はコピーでもできることはありますが、契約書等はコピーでは不可能で、原本でなければできません」(同)。また、文章が書かれた紙を分析することで、真贋を鑑定することもできる。有名なところでは、1983年にドイツで起こった『ヒトラーの日記』事件。アドルフ・ヒトラーが生前に書いた日記とされるものが発見され、筆跡鑑定の結果、本物と認定されたが、ドイツ警察の法科学者たちが日記の用紙を化学分析したところ、戦後に開発された漂白剤が使われていたこと等から、偽物と判明している。筆跡鑑定で本物とされたのは、ヒトラーの筆跡サンプルとして持ち込まれたものが抑々偽物だったからだという。日本においても、犯行現場に僅かに残っていた広告チラシや新聞紙の印刷内容等の分析により、配布地域を割り出して犯人の絞り込みに成功し、逮捕に至ったケースは多い。一般人が思っている以上に、紙・印刷物・筆跡からは様々な事柄を割り出すことができるのである。


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