【遺伝子検査の死角】(中) 同一人物、鑑定一致せず

20170404 05
「同じ遺伝子を検査しているのに、どうして結果が違うんですか?」――。2010年、東京都内の会社経営の男性は、上海にある遺伝子検査会社の巨大な施設を訪れ、中国人幹部に2通の鑑定書を示して問い質した。施設内には多数の検査器具が並び、従業員が動き回っていた。鑑定書は、男性自身が口の中の粘膜を2回に分けて同社に送り、依頼したものだった。信頼性を確かめる為、うち1回は親戚の名前で送っていた。その頃、同社は「遺伝子で潜在的な才能が99%わかる」と宣伝し、日本でもテレビ番組等で紹介されて人気を集めていた。男性は、同社の日本代理店として、仕入れた検査キットを1個約6万円で販売しており、鑑定に問題が無いかが気になっていたという。結果を見ると、遺伝子18個の型は2通で全て一致する筈なのに、2個は一致しなかった。妻も同様の方法で2通依頼したが、やはり2個が不一致だった。幹部は、「もう一度検査する」と取り繕うだけ。男性は「誤差の範囲内だ」と割り切り、2013年に事業から撤退するまで販売を続けた。「いい加減なものを売ってしまった。反省している」。上海の会社が鑑定するとしていたのは、“学習・知能”・“音楽”・“絵画”・“運動”・“ダンス”・“EQ(心の知能指数)”の6項目だ。2012年度の経済産業省の調査で確認された遺伝子検査業者87社の内、同社の代理店は19社を占めた。

この内の11社は既に代理店を辞め、4社は法人登記が無いことが取材で判明。残る4社は取材を拒否したか、回答が無かった。2013年頃まで代理店を営んでいた関西の業者の担当者は、「どの顧客の検査結果も似ているので、上海側に問い合わせたが、『日本人の傾向』としか答えなかった」と話す。関東の代理店の経営者は、「新手の占いだと思ってキットを売っていた」と言い切った。『理化学研究所』プログラムディレクターの林崎良英氏は、同社の鑑定について、「難聴や色覚障害に関する遺伝子を見て、本来、この遺伝子からはわからない音楽や絵画の潜在能力を判定する等、結果によっては子供の将来への影響が大きい項目が含まれている」と問題視する。同社の事業は現在、中国の別会社が継承している。所在地を上海市郊外のビルの一室に移したとしているが、ロビーに表示されている社名は異なる。責任者だという男性は今月、取材に対し、「遺伝子検査は子供の教育と発達の為に価値がある」「(鑑定の誤りは)極稀に発生するが、無料で再検査を行っている」等と説明した。日本向けのビジネスについては、「これまで2000人以上検査したが、新規開拓はできていない。検体は3ヵ月保存した後、廃棄している」とした。遺伝子検査ビジネスの“品質”には、多くの医学会や専門家から懸念が示されている。昨年5月、『日本医師会』の生命倫理懇談会は、「『一般の人に比べて(病気のリスクが)何倍』等という単純な報告では、誤解を生みかねない。国民が安心して生命科学技術の恩恵を受けられる体制作りが急務だ」との声明を出した。実害の恐れもある。家庭裁判所の関係者は、「精度の低い鑑定結果が、親子関係を巡る調停に証拠提出される例もある」と明かす。裁判所から依頼された鑑定を多く手がける『法科学鑑定研究所』(東京都新宿区)の幹部は昨夏、ある検査業者が行った父子鑑定の結果について、依頼者の男性から意見を求められた。A4用紙に記された結果は、実の父子である確率を“51.9917%”としていた。幹部は、「現在の技術水準なら、100%か0%のほぼ二者択一。出鱈目な検査だ」と話す。この業者に男性が問い合わせても、回答は無かったという。


⦿読売新聞 2017年3月20日付掲載⦿
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