【遺伝子検査の死角】(下) “質”確保へ、国の規制急務

20170404 06
「質の確保に必要な施策を検討したい」――。今月15日の参議院予算委員会。野党議員から、遺伝子検査ビジネスにどう関与していくかを問われた厚生労働省の塩崎恭久大臣は、そう強調した。遺伝子検査を民間業者が行う場合、「医療ではない」との理由から、従来は経済産業省の関わりが強かった。だが、2015年11月に始まった政府の有識者会議では、医療関係者から「このままでは悪質な業者が野放しになりかねない」等と批判が噴出した。「病気のリスク等を調べる検査は、顧客の生命や健康に影響を及ぼす恐れもある」「科学的根拠の確保等の制度設計に、厚労省も取り組む必要がある」。昨年10月の最終取り纏めは、撤退した業者が持つ遺伝子情報の管理の問題も含めて、国による規制を促す内容となった。厚労省の研究班は、これを受けて、遺伝子検査業者に検査手法や顧客への説明方法等を尋ねる実態調査を行っており、今月中に結果を纏める予定だ。規制強化の動きに対し、業界側の危機感は大きい。遺伝子検査に携わる37社が加盟する『個人遺伝情報取扱協議会』の別所直哉理事長(『ヤフー』執行役員)は、「現状では社会的混乱等は起きておらず、新たな法規制は必要ない」と話し、「業界としては自主規制で対応する」との考え方を示す。2006年に設立された同協議会は、経産省の指針に基づき、情報管理や顧客対応等の“自主基準”を作成。基準を満たした企業の認定制度を2015年から始めている。

自主規制に拘るのは、医療並みの法規制をかけられれば、検査コスト等が上昇し、インターネット等を通じて多数の顧客に安価なサービスを提供し難くなるからだ。ヤフーや『DeNA』等、遺伝子検査を重要な成長分野と位置付ける大手IT企業もある。ただ、これまでに協議会の認定を受けたのは9社しかない。今年1月に締め切った追加申請も1社しか名乗りを上げず、会員企業の大半は未認定のまま事業を続けている。別所氏によると、「申請に必要な費用が壁になっている」という。業界に対する懸念の声の高まりを受け、協議会は来月から電話による利用者相談窓口を設ける。国とは別に実態調査も行っている。最高裁判所は2014年7月、DNA鑑定で血縁が否定された場合に、法律的な父子関係を無効にできるかが争われた訴訟の判決で、子供の身分関係の法的安定を保つ観点から、「無効にならない」とする初判断を示した。鑑定の精度が問題となった訳ではなかったが、山浦善樹裁判官(当時)は補足意見で、「私的に行われた鑑定結果に基づいて子の将来を決めるのは、躊躇いを覚える」と述べた。退官後、弁護士に戻った山浦氏は、「検体の扱いが杜撰だったり、低価格で鑑定して、裁判所がそれに頼ってしまうのは拙いと思った」と振り返り、「しっかりしたルール作りが必要だ」と訴える。欧米では、遺伝子検査は医療の一環と考えられており、ビジネスは保健当局が厳しく規制している国が多い。アメリカでは2000年代に参入企業が増えたが、『食品医薬品局(FDA)』が2010年に「病気リスクを調べる検査キットは医療機器に当たる」と各社に通達。2013年、最大手企業にキットの販売中止命令が出された後は、ビジネスは事実上禁止された。厚労省研究班による調査に携わる北里大学の高田史男教授(臨床遺伝医学)は、こう指摘する。「根拠の乏しい検査ビジネスを行う悪質な業者を排除するには、医療かビジネスかを問わず、遺伝子検査を1つの法律や規定の下に管理していくべきだ。その上で、検査結果を客観的に審査したり、評価したりできるシステムを創設すること等が、対策として考えられる」。

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矢野誠・尾島崇之・松山翔平が担当しました。


⦿読売新聞 2017年3月21日付掲載⦿
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