中国等アジア各国に大きな差…食品規格の統一目指す国際企業、出遅れた日本はシェア縮小も

20170405 08
食品流通の広域化・複雑化等により、世界中で食中毒等の食品安全リスクは、これまでになく高まっている。そうした中、欧米の大手食品関連企業を中心に、世界の様々な食品安全規格を統一しようとする動きが加速している。その流れを作っているのは、食品業界における世界最大の業界団体『グローバルフードセーフティーイニシアティブ(GFSI)』である。GFSIを主体的に動かしている理事会には、アメリカの『ウォルマート』、イギリスの『テスコ』、ドイツの『メトロ』等のメガスーパーマーケットや、フランスの『ダノン』、アメリカの『コカコーラ』、スイスの『ネスレ』といった国際的な食品メーカーの他、外食では『マクドナルド』等も参加する。日本からは、流通大手の『イオン』が参加している。近年はアジア企業も増えており、食品小売りでは、中国最大手の『コフコ』、香港の『バンガード』が参加する。更に、2016年から通販世界最大手の『Amazon.com』が加わった。これら国際企業が食品規格の統一に乗り出した狙いは、①食品の安全水準の確保、②安全管理にかけるコストの軽減――だ。流通のグローバル化と共に、食品の原料調達先や最終消費地は世界に広がった。食品に関わる人・組織・輸送保管施設が増える分、安全面のリスクも高まる。この為、食品企業や小売企業は、取引先の取り組みの確認を強化しており、工場への監査回数が増加している。その結果、企業が安全管理にかけるコストが増加している。コスト削減の有効手段が、食品安全規格認証の活用だ。食品・小売企業が第三者機関による安全の取り組みの確認、即ち規格認証を取得することで、取引先を自ら監査する手間を省くことができる。

20170405 09
ただ、世界には国毎に数多くの食品規格が存在している。食品メーカーも小売りも、自分たちの取引先に対して、互いに異なる食品安全規格への対応を要求していると、工程管理が煩雑化し、結果的にサプライチェーン全体でのコストが上昇する。業界内で規格が共通化されれば、コストは低下し、規格認証の取得も進み易い。その結果、安全レベルの底上げも推進され易くなる。そこで、GFSIが2000年に立ち上がった。GFSIを立ち上げたのは、消費流通財における世界最大の業界団体『コンシューマーグッズフォーラム(CGF)』である。CGFは、消費財メーカーと流通業で様々な標準化や効率化を目的とした組織であり、世界70ヵ国に400社以上の会員企業を持つ。会員企業の売上高の合計は約300兆円にも上る。現在、ヨーロッパ・アメリカ・日本の3極に事務局を構えている。GFSIは、CGFの謂わば“食品安全分科会”に当たる。現在、GFSI理事会の議長はアメリカの穀物大手『カーギル』が努め、理事には日本のイオンも参加している(図2)。GFSIは新たな規格を立ち上げるのではなく、自ら策定した安全基準に適合する既存の規格を承認する形を採っている。現時点で、イギリスの『BRCグローバルスタンダーズ』やオランダの『FSSC22000』等、9つの国際的な食品規格を承認している(図3)。この何れかを取得すれば、世界展開がやり易くなるという取り組みだ。GFSIの標準化の対象は、農場から食卓までの食品の全ての生産・製造・流通過程に及び、将来的にはGFSI承認規格をあらゆる食品取引で活用できるようにすることを想定している。GFSIで技術的な評価検討を行う会議には、世界中のグローバル食品企業を中心に100社以上が参加する。また、規格認証を取得している食品工場は、全世界で7万7000、農場は15万にも及ぶ。近年、世界各国でGFSI承認規格の認証を取得する企業が急増している。世界展開を目指す日本の食品メーカーにとっても、GFSI承認規格は無視できない存在になっている。

20170405 10
京都の名産品として知られる宇治茶の製造・販売を手掛ける『共栄製茶』(大阪市北区)は、2010年代に入って、取引先の外資系食品メーカーから、ある食品規格を取得してほしいとの要請を受けた。その規格とは、前出のFSSC22000だ。GFSIは、図3にあるように、このFSSC22000をGFSI承認規格の1つとして認めている。GFSIの取り組みは、世界に数多く存在する既存の食品規格の中から、自らの要求水準に合うものを選定するものである。具体的には、①科学的な食品安全管理の要求事項を備えている、②常に改善しつつ管理する食品安全マネジメントシステムが含まれている、③国際的に認められた第三者認証機関が認証を行う――等が必要条件であり、世界中の食品安全規格のレベルを同水準に収斂させていくべく、機能している。ある国の規格で安全と認められた食品でも、他国の別の規格では安全と認められない場合がある。そこで規格への違反が起きれば、メーカーや輸入・販売した小売店のブランドは地に落ち、行政から営業許可を取り消される恐れもある。国際企業と雖も屋台骨が揺らぎかねない。従って、小売企業や食品企業としては、どの国でも認められ、且つ食品の安全を証明できるような規格の取得が望ましい。共栄製茶は、取引先の要望を受けて、2013年にFSSC22000を取得した。同社取締役の立開康司氏は、「GFSI承認規格を取得することで、海外企業との商談が進め易くなった。取得後、海外企業との取引は着実に増えている」と話す。立開氏の言葉通り、食品企業の中では、GFSI承認規格が実質的な国際規格として機能している。GFSI承認規格が普及するほど、世界展開を目指す企業は取得の必要性が高まる。例えば、日本茶はこの30年ほど国内需要が減り続けている一方で、海外では抹茶を使った菓子の売れ行きが好調で、輸出は年々大きく増加している。また、世界の飲料メーカー各社が緑茶の展開に注力しており、原料としての日本茶の需要が増えている。

コカコーラ等の大手飲料メーカーはGFSIを推奨している。そこで、国内展開のみだった日本茶の生産者やメーカーの中には、共栄製茶のようにGFSI承認規格を取得し、海外市場に活路を見い出す企業が出てきている。たとえ国内でしか取引をしていない企業であっても、GFSIの影響は無視できない。GFSI承認規格によって規格がある程度統一されることは、規格の取得・維持でもメリットがあるからだ。GFSIの承認規格の認証を1つ取得すれば、国内でも取引先の監査が免除されたり、簡素化されることが増えている為である。また、食品企業はこうした認証規格の他に、国の規制への対応が求められる場合もある。工場への監査は、取引先の企業の他、保健所等公的機関も行う。そこで、GFSIは各国政府とも協調し、GFSI承認規格を取得すれば、国が義務付ける規制と共通の部分は自動的にクリアできるように、すり合わせを行っている。例えばカナダでは、GFSI承認規格を含む民間の認証を、規制当局である『カナダ食品検査庁』が活用するようになった。更にGFSIは、アメリカの食品安全規制当局である『食品医薬品局(FDA)』と、食品安全強化法の運用に関して協議を行っている。「グローバルに展開するメーカーは、規格の管理コストが大きな負担になる」(『日本ハム』品質部マネージャーの内藤光弘氏)といった課題の解消も進めている。この流れはアジアでも加速している。昨年、中国の国家規格である『チャイナハサップ』が、アジア発の規格としては初めて、GFSIの承認規格として認められた。チャイナハサップは中国政府が管理する規格であり、民間主導で国境を超えて規格を統廃合しようとするGFSIの意向とは、厳密には異なる。そこで、既存の規格と同じ扱いではないが、内容的には同レべルを満たす規格として位置付けられている。世界一の人口を人口を抱える中国のチャイナハサップが認められることで、アジアにおいてもGFSIの影響力が一気に広がることが推測されている。チャイナハサップは任意の認証、即ち必ずしも取得が義務付けられている訳ではない。しかし、認証を持っていれば中国への輸出の手続き等で、中国当局との関係において有利に働く等のメリットも十分考えられる。中国に生産拠点を置き、食品を輸入している日本企業が取得に動く可能性もある。中国にとって、自国の規格のGFSIの承認は悲願だった。中国産の食品は、食品の大消費地である日本や欧米で、安全性に対する懸念が非常に強い。中国は自国産の食品の安全レベルを向上させ、世界に認めさせる為、GFSIに対して3年以上、交渉し続けてきた。GFSIも中国の食品安全レベルの向上を積極的に支援しており、連携を強めている。また、台湾の規格『TQF』も、来年のGFSI承認を目指している。『セブンイレブン』やマクドナルドもTQFを支持しており、世界的な食品関連企業を巻き込んだ活動となりつつある。このような世界的流れを受け、日本では今年1月に食品関連企業18社が中心となって、日本発の食品安全規格である『JFS規格』の開発・運営・管理を行う『食品安全マネジメント協会』が設立された。更に、9月には『日清製粉』の鶴見工場がJFS規格認証取得の第1号となった。JFS規格は、日本の法令や事業環境に配慮した日本企業にとって取り組み易い内容を実現することで、日本の食品企業の食品安全レべルの向上に寄与することを目的としている。将来的には、GFSI承認規格となることも目指す。実現すれば、JFS規格認証取得企業は、輸出先の食品安全の考え方に合わせて新たな仕組みへの対応を迫られるといった不必要なコストを被ることなく、海外展開が可能となる。

20170405 11
ただ、日本は規格認証を取得する側でも、規格を作る側においても、GFSIへの対応で周回遅れの状況にある。先ず、規格認証を取得する側については、現時点で日本はGFSI承認規格の認証取得で、アメリカ・『ヨーロッパ連合(EU)』・アジア各国に大きな差を付けられている(左表)。一方、規格を作る側としては、アメリカ、イギリス、ドイツ等がGFSI承認規格の運営本部を擁しているのに対し、日本には無い。自国の規格がGFSI承認規格となるメリットは上述した通りだが、規格の統一というGFSIの目的を考えると、承認のハードルは高い。つまり、他の規格との差別化・連携可能性・世界市場への貢献度等から、真に必要とされる規格でなければならない。食品安全マネジメント協会の設立で漸く日本は端緒についたが、これからどれだけ追い上げられるかがカギになる。また、各企業のGFSI承認規格の取得も進んでいない。農家向けのGFSI承認規格『グローバルGAP』取得の支援を行う『ファームアライアンスマネジメント』(東京都千代田区)の松本武社長によると、「世界のグローバルGAP取得生産者の内、アジアは10%を占めるが、日本は0.15%に過ぎない。取得生産者数はアジアでも急激に増えており、この1年で日本はベトナムにも取得企業数を抜かれた」と話す。GFSIへの関心の低さは、「日本の食品は世界一安全であり、だから世界が欲している」という認識から抜け切れていないことが原因だ。安全であることが競争力だった時代は、既に終わっている。GFSIの唯一の日本人の理事であるイオン品質管理部の岸克樹部長は、「食品安全は最早、競争分野ではない」と指摘する。GFSIは「食の安全は非競争分野である」という考えを打ち出し、安全を標準化することに成功したのである。つまり、食品安全は競争領域でなく、競争する為の最低限の必要条件になろうとしているのだ。国際標準が確立しつつある市場では、自らの規格を標準として世界のルール形成の一翼を担うか、又は既存の標準規格に準拠しなければ勝負にならない。日本の食品の存在感を打ち出す為にも、業界が結束してGFSIへの対応を真剣に議論すべきだ。 (取材・文/『三菱総合研究所』主任研究員 氷川珠恵)


キャプチャ  2016年12月13日号掲載
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