年末興行でも警察沙汰、大震災を悪用した窃盗も…ボクシング・格闘技界に蔓延る“悪の連鎖”を暴く!

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ボクシングや格闘技のトレーニングジムが、“青少年の育成”や“不良少年の更生の場”等非行防止を売り文句に宣伝しているのをよく見かけるが、残念ながら実態はその真逆で、場所によっては寧ろ不良たちの連帯感を深め、犯罪の温床となっていることすらある。昨年はプロボクシングの世界タイトルマッチ興行が4つも重なって盛況だったが、実はその1つで警察沙汰の事態が起きていた。世界チャンピオンも所属するジム会長が、他のジム関係者とトラブルになり、チャンピオンクラスの所属選手に命じて相手を羽交い絞めさせる暴力行為をやらかしたのである。被害者が警察を呼んだ為、観客の目前で大騒ぎとなったが、後に関係者が選手や業界に配慮して、被害届を取り下げた。現地担当のスポーツ紙記者・ボクシング専門誌のライター・中継に訪れたテレビ局のスタッフらは、騒動を見ていても一様に“無かったこと”として一切、言及していない。それどころか、興行に関わっていた業界人も見て見ぬ振りをしているのだ。「加害者側が世界チャンピオンを持つ有力ジムなので、敵にすると興行の協力をしてもらえなくなるから仕方ない」(大阪の某ジム経営者)。要するに、善悪よりも自己の利害を優先した訳だ。日頃、青少年の育成等と言いながら、 やっていることは身勝手そのもので、こんな現実が若者の良い手本になる訳がない。プロボクシングでは、10年ほど言から“暴力団排除”を大々的に標榜しているが、実のところ「関係しない」と誓約書を書かせるようになったのは最近のこと。しかし、実際に暴力団関係者が試合会場等から締め出された例は皆無だ。昨年行われた関西での世界タイトルマッチでは、暴力団との関係が深いことで知られる元世界チャンピオンの渡辺二郎氏が堂々と観載。同氏は4年ほど前、暴力団関係者であることを隠してゴルフ場を利用したとして、指定暴力団『山口組』幹部と共に逮捕された。事件自体は嫌疑不十分で不起訴になったが、ヤクザとゴルフをしていたことは表沙汰になっているのに、場内では試合関係者が渡辺氏と笑って立ち話をする有様だった。

年が明けて1月17日には、現役のボクシングチャンピオンが振り込め詐欺のメンバーとして逮捕されるという事件があった。長野県警に逮捕されたのは、INNOVATIONスーパーフェザー級王者のRYOTA(本名・寺田亮太)。難道によると、RYOTA容疑者は昨年7月、詐欺グループのメンバーとして同県在住の70代女性に息子を名乗って電話をかけ、「トラブルでお金が必要」と嘘を言い、別のメンバー(逮捕)に現金1000万円を受け取らせた疑い。こちらは業界が直接関わっている事件ではないが、「詐欺グループの一部メンバーが応援団だった」という話が聞かれた。「RYOTAには不良っぽいヤンキー系の応援団がいて、彼が試合に出ると150人ぐらいは彼の試合だけを目当てに集まっていた。その中に(準暴力団指定の)“半グレ”メンバーがいたという噂もあって、相手選手を応援していた人たちが怖がっていたこともあった」(キックボクシング関係者)。この応援団というのが曲者で、たとえ不良集団だろうと“神様”扱いされるのがこの業界である。抑々、スポーツ興行というのは、野球でもサッカーでも突き詰めればカネ儲けであり、チケットを売る集客こそが第一に優先される。プロ野球では長年、私設応援団が暴力団と関係していたことがタブーとされてきた。私設応援団は、元は熱心なボランティアが作ったファンの連絡会的な組織だった。しかし、その過程で生まれたのが観戦チケットの一括大量購入であり、主催者側がこれに配慮して、優先的に良い席を提供。それが一種の利権となって、場内で横暴な振る舞いをしていても咎められなくなり、ヤクザやチンピラ同然のグループがのさばるようになってしまったのである。応援団の存在は、試合の主催者のみならず、球場の経営にも影響を及ぼした。そのカラクリは、球場側が場内に掲示した広告収入に関係する。広告料は年間入場者数の規模によって上下する為、それこそ空席だらけの“ガラガラ”では済まされない。経営側には、タダでもいいからチケットをバラ撤いて入場者数を増やさなければならない事情があり、集団の結束力を持っている応援団に依存してきた。読売新聞が購読者に観戦チケットをバラ撤いているのも同じ事情だが、確実に球場に足を運ぶ応援団は、規模が大きいほど球界で幅を利かせていたのである。これに比べれば格闘技の世界なんて規模は小さいが、それでも仕組みは似たようなもの。ボクシングや格闘技の興行には、よくガラの悪い応援団が出入りしていることがあるが、満員でも1700人ほどしか入らない『後楽園ホール』のような小会場でさえ、追い出されるようなことは先ずない。筆者は過去、同会場のボクシング興行で、リングにものを投げ、他の客に暴力を振るっていた客を取り押さえたことがあったが、それは警備員が見て見ぬ振りをしていたからだ。事態に気付いた警備員が主催者に「暴れている客がいる」と伝えたにも拘わらず、主催者は「あの人たちは例外」と何もしなかった。暴れていた男は、出場選手を通じてチケットを200枚も捌いた後援者の息子という“お得意様”だったのである。

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こういう仕組みから、纏まった数のチケットを買い取ってくれる選手ほど、試合が多く組まれていく。大口のスポンサーがいたり、学生時代の仲間が大勢で詰めかけてくれるような選手もいるが、確実に仲間を招集できる不良集団と関係を持つ選手は、グループのリーダー格が野球でいう私設応援団の団長のような役割を果たし、主催者でさえ一目置かなければならない存在と化している。その場合、その選手の対戦相手は矢鱈“格下”だったり、負けを重ねてもタイトルマッチができたりと優遇される。純粋な若者が憧れを持ってプロを目指しても、いざその世界に入ってみれば、単純に優劣を競う仕組みにはなっていないことを知るのが、日本のプロスポーツなのだ。前述のRYOTA容疑者(左画像)も、浅いキャリアの割にタイトルマッチが組まれていた。未だ24歳なのに、金髪で髭を生やしたヤンキー系のルックスで、戦績は16勝(4KO)6敗。決してKO率が高くはないから、世間一般で人気が出るタイプとは言えない。しかし、山梨県甲府市にある『マイウェイジム』所属で、“山梨の新星”と呼ばれ、地元のスター選手ではあった。2009年のデビュー戦こそ黒星だったが、キックボクシング団体の1つである『MA日本キックボクシング連盟』の興行を主戦場に勝ち星を重ね、翌年の新人王トーナメントで優勝。同連盟は後に分裂騒動を起こし、2013年に新興団体『JAPAN KICK BOXING INNOVATION』が立ち上がると、RYOTA容疑者はこれに参加。同団体の初代フェザー級王座決定戦に出場する優遇を受け、勝利した。このべルトは翌年、初防衛戦で初回KO負けにより陥落したが、昨年11月には又もスーパーフェザー級の王座決定戦に出場するチャンスを与えられて勝利、2階級制覇している。「チャンピオンに挑戦して王座を奪ったのではなく、2度とも空位の王座決定戦に出してもらえたのは、RYOTAが試合に出ればチケットが確実に売れるから」(前出のキックボクシング関係者)。

精々数百人の観客が集まれば御の字の地方興行では、RYOTAの応援団が150人程度であっても重要な収入となる。抑々、キックボクシングは収益のパイが小さい為、チャンピオンがそのファイトマネーで食べていくのは至難の業だ。世間的に無名のキックボクシング王者のファイトマネー相場が10万~20万円程度だったりするから、1ヵ月分の生活費としてもギリギリである。選手がチケットを売る場合、定価の3割引きほどで即してもらい、差額を収入にできるが、強力な応援団が付いている選手の場合は、それを率いるリーダー格が利益を手にすることが多い。しかし、当の選手にしてみれば、チケットを買っ もらっている仲間にその都度“借りを作る”ことになる。「応援団が犯罪をやらかしたのかはわかっていないけど、本人が振り込め詐欺なんかやりたくなくても、若し応援してくれていた仲間に誘われていたら逆らえなかったでしょう。特に地方だと述げ場も無いし」(同)。1月下旬の取材時点では未だ捜査中の為、詳細はわかっていないが、電話で偽の息子役を演じる等というのは、詐欺グループの下っ端がやることだ。現役チャンピオンがそんなことまでしていたとすれば、仲間内では決して“トップ”ではなかったことが伺える。格闘技興行を通じた妙な“カネと人脈”の流れが出来上がるのは、業界が基本的にどんぶり勘定だからだ。これがアメリカであれば、格闘技興行は、主催者側が州管轄の行政のコミッションにきちんとチケット収入やファイトマネーを申告しなければならず、その興行収支も丸裸にされる。しかし、日本では抑々興行を行うのに、公的な申請や審査の必要が全く無い。試合会場を1日レンタルし、出場者を集めれば、興行は誰でもできてしまう。極論すれば、素人同士の喧嘩でも、会場を整えれば興行になる。収益の一部を暴力団に納めても、「収支は赤字でした」と申告すれば、査察を受けることは無い。そのせいで近年は、不良グループが自ら格闘技団体を旗揚げすることで、“シノギ”化するケースも増えてきた。それが暴力団のマネーロンダリングとなっているケースもある。RYOTA容疑者がそんなヤクザ興行に出ていた訳ではないが、一部の若者の間で興行の仕組みが闇ビジネスとして扱われるようになっているのは確かだ。特に近年は、反則規定が最小限の総合格闘技が人気となっており、専門的な知識が無くとも、見よう見真似で開催するものも増えた。勿論、格闘技団体や応援団が皆悪党という訳ではないが、徒党を組んだ若い連中が暴走するのは世間でよくあること。特に格闘技のような荒っぽい世界では、その傾向が生まれ易い。例えば、アイドルのコンサートやミュージカルで、同様に集団を作って応援する人々がいても、こちらに不良グループの姿は見られない。不良集団でなくとも常識的な歯止めが無いから、冒頭で明かした昨年末の事件のように、指導者が若者に悪さをさせるようなことも平然と行われているのである。

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少し昔の話になるが、ボクシングの元日本&東洋太平洋王者・保住直孝(右画像)が、警察官を相手に大暴れして、2007年と2008年に2度の公務執行妨害事件を起こした際、ライセンス停止処分を受けている。保住は元々、高校時代にインターハイ2連覇を達成したアマエリート選手だった。『ヨネクラジム』から1993年にプロデビューするが、5年後には暴行容疑で逮捕。1999年には日本チャンピオンになったにも拘わらず、2年後にカジノ店での賭博罪で逮捕(不起訴)。こうして、長年ボクシング界で育った者も、更生はなし得なかった訳である。2014年、ボクシングの元日本王者・三谷将之が、ジム会長らと共に傷害容疑で逮捕されたことがあった。この事件は、ジムを辞めたがっていた24歳の男性を、会長と共に暴力で脅し、包丁を出して「指を詰めろ」とまで迫った悪質な事件だった。不良の応援団どころか、ジム自体が犯罪の温床になっていた訳だ。他にも、元日本ランカーが初めてKO負けした際に、網膜剥離を患って引退するや生活態度が荒れ、父親を殴り殺すという事件もあった(※懲役6年の実刑判決)。この種のボクサー・格闘家の暴力犯罪は、調べれば大量に見つけられると思うが、大半は素行不良が直らないまま、周囲も口を出さず放置していたことが原因だった。スポーツジムの指導者が、若者に礼儀作法やモラルを学ばせるというのは理想的な話でも、現実にはそんないい話は殆ど転がっていない。問題を起こしても、「人気選手だから」とカネの為にそれを隠蔽するケースのほうが圧倒的に多いというのが、格闘技を内外から30年間見てきた筆者の実感だ。ジムでの練習を通じて更生した元不良も確かに存在するが、逆に、その拳が犯罪の役に立ってしまった例も多数なのである。

日本中がその惨状に手を差し伸べた2011年の東日本大震災でも、被災地で窃盗に明け暮れた総合格闘技グループがいたことが先日、新たに判明した。このグループのメンバーだった30代の男の告白によると、当時、『東京電力』福島第1原発から20㎞圏内にあった福島県浪江町等で、大半の住民が避難した中、盗難を繰り返していたというのだ。「行き来が制限されている地域だったけど、仲間から侵入できる経路の地図を貰い、バイク等で現地入りして、宝石店等の商店のガラスを破って、現金や金目の物を数日間に亘って大量に盗んだ。総額6000万円以上になって、一部は東京都内に新ジム建設の費用にも充てたほど」(元メンバーの男)。当時、避難民が命辛々最低限の荷物のみを持って出て行っていた為、現金の預貯金がそのまま残っていた邸宅もあった。福島県警の関係者は、「確かに対応が遅れていた」と話し、こう続ける。「災害対策本部に盗難の目撃情報等が届いていたんですが、自衛隊は人命救助が最優先で、警邏によるパトロールはできていなかったんです。安全宣言が出ない限り、警察が避難地区に入って活動することもできず、外からの進入車両を止めたりはしましたが、全ての通路に検問を敷く余裕もない。後から盗難被害が山ほど報告されたんです」。つまりは“無法地帯”だったという訳だ。前出の元メンバーは罪悪感から、この話を警察にも届けているが、知人によれば、元は「学生時代の非行歴はゼロ。補導されたことすら無いし、大人になってからも悪い意味で警察の世話になったことは一度も無かった」という人物。運動不足解消の為に入門した格闘技のジムは、表向き人気選手が運営者だったが、実のオーナーは半グレ系の人物だった。「その人がジムに遊びに来ると、『アイツとアイツでやれ』という風に、グローブを付けて実戦形式で無理に戦わされていた。だから、骨折・怪我・嘔吐もしょっちゅう。そのうちに、対立するグループを襲撃したり、借金取りのアルバイトをさせられ、その極めつけが震災の火事場泥棒だった。一度、救援物資を運ぶトラックを襲撃したことがあって、それが罪悪感となってグループを抜けたけど、その際には“脱退料”といって200万円を支払わされた」(同)。問題の団体は、所属選手から逮捕者を出して自然消滅しているが、オーナーは直ぐに別の格闘技団体を旗揚げしている。こういうアウトロー系の新興団体は、既存の勢力からは“自称格闘家”と見下されるが、だからといって、その既存勢力のほうも健全とは言い難いのが実情だ。ある千葉県内のボクシングジムでは、「他のジムに移籍したい」と言った若い所属選手に対して、会長が数百万円の移籍金を要求。「支払わなければ試合を組まず、飼い殺しにしてやる」と脅し、3名から計600万円を受け取ったという話がある。これに納得できなかった別の選手が先日、千葉地裁で民事訴訟を起こしたが、決着まで2~3年の間、試合ができない状態が続く。こういう酷い話を若者たちが見て、何を思うか。まさか先輩たちを尊敬することなどあり得ないだろう。ある総合格闘技のジムでは、組織的にドーピング薬を売買しており、しかも、それを承知で同ジムの所属選手を起用している団体がある。その試合はテレビ放映もされている。ボクシングも格闘技も真っ当に打ち込めば素晴らしい競技だが、残念ながら、そこに生きている人々が皆善人とは限らない。それを食い止める仕組みも皆無なのだ。 (取材・文/フリージャーナリスト 片岡亮)


キャプチャ  2017年3月号掲載




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