【科学捜査フロントライン】(19) 死亡事故の検挙率は90%超…交通警察ひき逃げ捜査

車による人身事故はあくまでも事故だが、被害者を助けずに現場から逃走すれば、それは“交通事故”から“ひき逃げ事件”に変わる。2014年に日本全国でひき逃げ事件は1日平均で25件も発生しており、犯人たちの逃げ得を許さない為にも、科学捜査はフル活動している。 (取材・文/フリーライター 大室衛)

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これまでご紹介してきた最新科学捜査の数々は、多くの一般市民にとっては殆ど縁がなく、ドラマや映画、将又“警察24時”のようなドキュメンタリー番組で見る世界でしかない。極普通の生活を送っていれば、こういった科学捜査が必要になるような犯罪に巻き込まれることは先ず無いからである。しかし、交通事故だけは違う。どんな人でも、ある日突然、交通事故に巻き込まれる可能性があるからだ。どんなに日頃から安全に注意して、自分では事故を起こさなくても、他の運転者の不注意等により事故に巻き込まれてしまう可能性は誰にだってあるのだ。警察庁が発表した統計によると、2015年に日本全国で発生した交通事故の発生件数は53万6789件、死傷者数は66万9243人(うち死亡者数4117人)となっている。交通事故件数では、過去最悪を記録した2004年の95万2720件に比べて6割弱にまで減っており、死者数も年々減り続けているが(※2015年は前年に比べ微増)、政府が『第9次交通安全基本計画』(2011~2015年度)で目標に掲げていた年間死亡者数3000人以下の目標に達することはできなかった。そして、その交通事故において科学捜査が最も活躍するのが、ひき逃げ事件である。道路交通法では、車両の運転中に人身事故を発生させた運転者とその乗務員に、負傷者を救護する等の措置を義務付けている。それを行わずに現場から逃走することがひき逃げで、これは犯罪行為となる(※人の死傷を伴わない事故で現場から逃走したものは“当て逃げ”になる)。警察は、現場に残った事件証拠等から、科学捜査の様々な手段を駆使して犯人の車両を割り出し、その持ち主を捜し出していくのだ。法務省が作成した『平成27年版犯罪白書』によると、平成26(2014)年に全国で発生したひき逃げ事件の発生件数は9231件で、そのうち被害者が死亡した事故は148件となっている。上のグラフを見て頂くとわかるが、平成26年のひき逃げ事件全体における犯人の検挙率は52.2%と、辛うじて半数を超える程度だったが、死亡事故検挙率となると102.7%と、100%を超えている。

これはどういうことかというと、検挙件数には前年以前に発生した事件の検挙が含まれることもある為、検挙率が100%を超える場合があるようだ。何れにしても、死亡事故におけるひき逃げ事件の検挙率は90%以上で、100%に近い数字となっていることは間違いない。これには、科学捜査の手法や技術力のアップが大いに貢献しているであろうことは想像に難くない。但し、死亡事故での検挙率の高さに比べ、重傷事故では72.3%、ひき逃げ事件全体では52.2%と低い数字となっているのは、死亡事故に比べて発生件数が60倍以上とかなり多いことと、やはり被害者の被害度合いによって、警察側の犯人捜しに対する気合いの入れ具合も変わってくるからだと思われる。では、そんなひき逃げ事件の捜査はどのように行われているのだろうか。事故現場では、警察の交通部交通捜査課の交通鑑識係が、物的証拠の採集や鑑定に当たる。主に集めていくのは、タイヤ痕・擦過痕・オイル痕・血痕・車両の部品・事故車両の損傷等である。それと同時に、目撃者の証言も集め、事故発生時の状況・逃げた車両の色・車種・ナンバー等を聞き出していく。ここで車の詳しい情報が得られれば、犯人逮捕までは近い。状況によっては、直ぐに現場付近の道路に検問をかける必要も出てくる。ただ、真夜中に発生した事故や、人通りの少ない場所での事故の場合、犯人の手掛かりとなる目撃情報を得ることは難しいケースが多い。そこで重要になってくるのが、事故現場で採集された証拠物件である。現場では、鑑識係官たちが文字通り、地面を這いずり回るようにして道路に落ちた破片を探していく。こうして見つけた証拠物件を科学的に分析していくことで、車種の特定に迫っていく。事故現場に残っているものの中で、犯人を特定する為の証拠として代表的なものといえば、車の塗膜片である。「警察の話によると、爪の先ほどのほんの小さな塗膜片でも、車種をほぼ特定できると言います」(全国紙地方支局記者)。車の塗装は基本的に下塗り・中塗り・上塗りの3層からなり、車種によって其々使われている塗料が異なる。そこで、採集した塗膜片に赤外線を照射したり、走査型電子顕微鏡で断面を見たりして、塗料の元素分析を行っていく。警視庁の科捜研には約2万件に及ぶ塗料のデータが蓄積されており、それらと照合することで車種を特定していく。ただ、「最近は違う車種でも同じ塗料を使うこともが多くなり、塗膜片での特定は難しくなっている」と、『法科学鑑定研究所』の冨田光貴所長は言う。「今は、1つの塗料が色々な車に使われています。極端なところでは、車種どころかメーカーも異なるのに、使っている塗料は同じということもあります。その為、ある程度の絞り込みはできますが、車種の特定までするのは難しい。ですが、車の色は識別できますし、犯人の車が特定できた際に塗膜片があれば、同じ塗料かどうかを鑑別することができます」(同)。また、車が急ブレーキをかけた時等に付いたタイヤ痕も、重要な証拠となる。タイヤの接地部分に刻まれた溝には、その特性によって様々なパターンがある。更に、道路に残ったタイヤのゴムの成分を分析することにより、タイヤのメーカーや種類を判別することもできる。

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「監視カメラ等が設置されていない場所で起こったひき逃げ事件で、被害者の衣服に僅かに残ったタイヤ痕が採取されたのですが、科捜研が調べても成分がわからなくて、うちに持ち込んで分析したところ、わかったということもありました」(同)。また法科学鑑定研究所では、ひき逃げ犯の逃走ルートを監視カメラに残った映像から判断する依頼も受けているという。「現場、又は現場付近からの逃走ルート上で、街中にある防犯カメラが捉えた容疑者のものらしき車両が、捜査線上に出ている容疑者の車と同一かどうかといった画像鑑定のお手伝いをすることがあります。それらの画像は、コンビニや一般家庭等色々なところにある防犯カメラのものですが、画像鑑定に耐えられる最低ラインの解像度があれば、車種・特徴・年代を割り出していくことは可能です」。但し、それは大変な作業になるという。「動画を見るのではなく、フレームの静止画を1枚1枚見ていくのですが、1秒間のフレームの内、2~3枚しか撮れていないと、ブレ過ぎて判別できません。テールの形や大まかな外観等から特徴を当て嵌めていき、メーカーや車種を絞り込んでいくことで、容疑者の車と同一の車種かどうかを判断していきます」(同)。それ以外にも、解像度の低い防犯カメラに写ったボヤけたナンバープレートの数字も、パターン認識によって、かなりの確率で当てることができるようになっているという。「静止画像ではもう殆どドットしか見えないようなナンバープレートでも、第1候補から第3候補といった感じでナンバーを出していくことができる方向に進んでいます。こうなると、どんなに読み難いナンバープレートでも判別できるということになる。今のシステムや技術を使えば、ひき逃げ犯はもう殆ど逃げ切れなくなっています」。とはいえ、今のところは、こういった科学捜査が犯人を完璧に特定してくれる訳ではない。科学的な分析等で得られた結果から、捜査員たちが更に地道な捜査を進めていって初めて、犯人逮捕に至るのである。「技術革新と捜査員たちの努力が、死亡事故のひき逃げ犯検挙率100%近い数字になって現れている」と言える。


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