【崩壊する物流業界】(06) 脱宅配依存の『佐川急便』と投函型に注力する『日本郵便』

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インターネット通販の拡大で、宅配便の需要は増加の一途を辿る。だが、業界2位の『佐川急便』に異変が起こっている。2015年度は32.3%(2012年度38.9%)とシェアを落としているのだ。佐川が展開するブランド『飛脚宅配便』の取扱個数は12億個と、2013年度から横這いが続く(左図)。その一方で、デリバリー事業の営業利益は急激に改善した。売り上げに当たる営業収益は、シェアの高かった2012年度以前より減っているにも拘わらず、だ(右下図)。一体、何が起こっているのか。答えはシンプルだ。値上げを積極的に進めているのである。2013年度に打ち出して以降、昨年度まで単価は49円ほど上がった。値上げを受けて、『Amazon.com』を始め、多くの荷主が『ヤマト運輸』や『日本郵便』へ切り替えたが、佐川にとってはプラスに働いた。というのも、固定費として自社でドライバーを多く抱えるヤマト運輸と比べて、佐川は配達を外部の運送会社に委託するケースが多く、荷物が増えれば増えるほど費用が膨らむ収益構造だ。また、営業拠点が全国に約400ヵ所と、ヤマト運輸の10分の1に過ぎない中、荷物の増加に伴う再配達が負担になり、採算が厳しくなっていた。そこで、明確な戦略転換を図った。「ラストワンマイル(宅配)は、最終的には価格勝負になる。それより、もっと広域にお客さんと付き合って利益を上げよう」。佐川の親会社『SGホールディングス』の町田公志社長が打ち出したのは、元々強みを持っていた企業間物流への回帰だ。2月中旬の午後3時、本誌記者が取材した東京都江東区にあるSGの東京本社会議室は、ピリッとした空気に包まれていた。

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佐川急便、3PL(企業物流の一括受託)の『佐川グローバルロジスティクス』、決済を担う『佐川フィナンシャル』に『SGシステム』…。集まったのは、SG傘下の会社の幹部たちだ。「揚重(※金庫等をクレーンで持ち上げて運ぶ)作業を(昨年5月に提携した)日立物流さんはできます。六本木の会社の本社移転でも唯一、外部に頼んだ作業ですが、今後は我々で全部できるようになるのは非常に大きい」「例の件を進めたいと思っていますが、フィナンシャルさん、数字を開示してもらえませんか?」。各社の代表が其々の立場から、侃々諤々の議論を繰り広げる。これは、町田社長肝煎りの戦略“GOAL”の会議風景だ。GOALは簡単に言えば、SGグループ内の会社に横串を通して、「お客さんの物流を全部我々に任せてもらうことだ」と、GOALを束ねる佐川急便営業開発部の山本将典部長は言う。東京だけでなく、大阪や名古屋等全国に60チームあり、1チーム3~4人。会議では、情報交換や案件の紹介を行う。GOALが始まるまでは、各社が別々に顧客を訪問し、見積もりを出していたが、「其々の会社が自分たちに利益が残るように費用を積み上げて計算するので、プロジェクト全体では競争力が無かった。今は先ず、全体から考えてコストダウンを図り、利益をシェアする」(山本部長)。成果は着実に表れている。あるアパレルメーカーは、店舗の拡大に伴い、商品管理や配送面の効率化に悩んでいた。その話を聞いた佐川のドライバーは、GOALのプロジェクトチームに相談。GOALのメンバーが、SGグループ各社のノウハウを駆使して対応した。その結果、佐川が持つ倉庫と配達網を使い在庫管理から店舗配送まで一括で引き受ける大型案件に成長した。こうした成功体験を同業他社にも水平展開し、案件の獲得を拡大していく考えだ。GOALがスタートしたのは2014年。初年度は250件のプロジェクトを実施した。その後、チーム数が増加し、昨年度は1000件を超える多くのプロジェクトが実現した。

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「矛盾するように映るかもしれないが、やはり佐川の強みは川下のデリバリーがあること。他の物流企業では、最後はヤマトや佐川に任せざるを得ないが、我々は最後まで一貫して提供できる。“できません”という案件は無い」と自信を見せる。SGホールディングスは目下、今年中の上場に向けて準備を進めているところだ。上流を得意とする『日立物流』との経営統合も見据えており、宅配だけでない総合物流企業への脱皮を図っている。宅配便とは一線を画す佐川急便に対し、着実に取扱個数を伸ばしてきたのが日本郵便だ。2010年7月に『日本通運』から『ペリカン便』を引き継ぎ、シェア3位に浮上し、その後も個数は増え続けている(右下図)。ただ、この1~2年は勢いが鈍った。『ゆうパック』の伸びは、2015年度は前年度比5.8%増に留まり、2年連続の2桁増から減速。今年度も、4~12月期で6.1%増(※10~12月は『ゆうパケット』含む)と迫力に欠ける。『SMBC日興証券』で物流業界を担当する長谷川浩史アナリストは、「伸びが鈍いのは値上げしているからだろう」と分析する。日本郵便の宅配事業は2010年以降、値上げが最大のテーマだった。ペリカン便を吸収したが、ゆうパックとの統合に伴う費用が先行。更に、ペリカン便が抱えていた不採算の大口先の影響で赤字に陥った。2011年には郵便再生本部を設置し、収益改善を最優先に、「大口の採算割れ先の値上げに加え、既存のゆうパックでも価格を上げる」(郵便・物流商品サービス企画部の指宿一郎部長)対応に追われた。黒字化したのは、統合から5年後の2015年度だった。危機的状況は脱したが、ゆうパックは未だ病み上がりの段階だ。「今年度は最低賃金のアップで人件費が上昇している。値上げは続けざるを得ない」と、福田聖輝副社長は言う。ゆうパックは、取扱個数が増えても、規模の経済が働き難いという。届け先が多く、毎日ほぼ決まったルートで配達できる郵便に比べ、ゆうパックは現状では数が少なく、日によって届け先が大きく変わる為、効率の良い配達のルートに固定し難いのだ。ゆうパックの価格を下げて、荷物の増加を狙う戦略も考えられるが、「無理にシェア拡大に走るつもりはない」(同)。

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目下、収益率を上げる為に取り組むのは、「中小口の事業者への営業を戦略的に強化することだ」(同)。「これから本格的に通販を拡大したい」と考えている中小事業者は多いが、物流全般のノウハウを持たない為、商品配送に加え、周辺ビジネスに日本郵便が入り込む余地がある。例えば、営業を担当する郵便局員が、商品の梱包や倉庫での在庫管理の相談を受けて対応する。発送システムの提供やDM作成を請け負うケースもある。全国39ヵ所のソリューションセンターを軸に、2014年4月から営業を強化している。配送以外の分野で手数料収入を増やす戦略だ。利益を圧迫する要因の芽を摘む対策にも、積極的に取り組む。特に再配達は、「ゆうパックに加えて、郵便では書留も対面で渡している。重大な問題」(同)と位置付ける。対策の1つが、2014年に開始した法人向けの小型宅配便『ゆうパケット』だ。特徴は、厚さが3㎝以下で、郵便受けへの投函が可能という点にある。郵便局でゆうパケットの専用宛名シールを入手し、梱包した荷物に切手と共に貼る。そのままポストに投函すれば、送り先の郵便受けに配達される。不在であっても、配達員は持ち帰る必要がない。フリーマーケットやオークションの市場拡大に伴い、昨年10月からは個人向けにもサービスを展開し始めた。個人向けの料金は、厚さに応じて250~350円と幅があるが、対面手渡しのゆうパックより安い。安さと手軽さから、インターネット通販業者にゆうパケットの利用が広がっている。例えば、Tシャツ等のアパレル品は、上手く畳めば厚さ3㎝以内に収まる。「送ってみたところ、クレームも無く、ポスト投函が好評だった」と評価され、対面式の宅配便からの切り替えが進んでいるという。ゆうパケットは、昨年10~12月の3ヵ月間で5500万通と、前年同期に比べ1.7倍に増加し、日本郵便の宅配便取扱個数の1割を超えた。また、宅配ロッカーの普及にも力を注ぐ。独自に開発した宅配ロッカー『はこぽす』を、郵便局内や『JR東日本』の駅等56ヵ所に設置している(※2月21日時点)。戸建て住宅用宅配ボックスも、『大和ハウス工業』やポストメーカーの『ナスダ』と開発した。宅配便だけでなく、事前に申請すれば書留の受け取りも可能だ。今年度は、外形標準課税に社会保険料率の拡大、更に人件費の上昇と、宅配業者に逆風が吹いている。やっと実現したゆうパックの黒字を維持すべく、採算改善に向けた取り組みは続く。 (取材・文/本誌 鈴木良英)


キャプチャ  2017年3月4日号掲載




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