【政治の現場・安保法施行1年】(中) 尖閣の隙“グレーゾーン”

20170411 07
今年1月20日に発足したアメリカのドナルド・トランプ政権は、トランプ大統領、レックス・ティラーソン国務長官、ジェームズ・マティス国防長官が揃って、沖縄県の尖閣諸島が、アメリカの対日防衛義務を定めた『日米安全保障条約』第5条の適用対象になることを明確に認めた。安倍政権が2015年の通常国会で野党の激しい抵抗に遭いながら、安全保障関連法成立に拘ったのは、日本国憲法の範囲内で出来得る手だてを尽くすことで、こうしたアメリカのコミットメント(関与)を強化していく為だった。集団的自衛権の限定行使や後方支援の拡充を通じ、朝鮮半島有事等の際にアメリカ軍を支援する自衛隊の役割を広げる一方、尖閣諸島では日米が一体となって中国を抑止する――。こうした日本政府の狙いは、安保関連法施行によって、法的に実施が可能となった新たな日米防衛能力の指針(ガイドライン)や、実戦的な日米共同訓練によって実現しつつある。昨年11月、太平洋のアメリカ自治領テニアン島上空を、航空自衛隊F2戦闘機とアメリカ空軍B1戦略爆撃機が、轟音を立てながら通過した。“離島に上陸した陸自隊員の空爆支援を行う”との想定の訓練で、近くの無人島では日米の艦船や戦闘機が実射訓練も行った。自衛隊が戦闘機を海外に派遣して離島奪還訓練を行うのは初めてで、アメリカ軍関係者は「自衛隊の能力が少しでもアメリカ軍に近付いてほしい」と期待を口にした。

だが、備えは万全とは言えない。「大量の漁船が尖閣諸島周辺の日本領海に侵入し、一部は海上保安庁の巡視船の制止を振り切って上陸。中には重武装の偽装漁民が紛れ込んでおり、逮捕しようと迫る警察官を圧倒、島を占拠した」――。これは、日本政府が想定する“グレーゾーン事態”のシナリオだ。外国軍隊による武力攻撃とは言い切れない、曖昧(グレー)な侵害行為が起きる可能性は元々、民間の調査研究機関等が指摘していた。だが、中国側の海洋進出が年々強まり、昨年8月には200隻を超える漁船と、最大15隻の中国公船が尖閣諸島周辺に押し寄せたことから、政府も「最も現実的な危機」(関係者)とみて、具体的なシナリオ検証を急いでいる。ただ、安保関連法には、こうした事態への抜本策が盛り込まれなかった。与党協議の段階では、自衛隊に平時から領域警備の権限を与える法整備も議論されたが、海保と警察との縄張り争いもあって断念。当面は、初動対応を担う海保の態勢を強化すると共に、海保が対応し切れない場合に限定的に出動する自衛隊との共同訓練を繰り返す等して対応しているが、海保と自衛隊は組織が異なる上、武器使用も制約され、実際に対処できるかは不透明だ。アメリカ軍の支援も見通せない。抑々、安保条約の対象外であるグレーゾーン事態では、“5条適用”を繰り返し明言するアメリカ政府も、アメリカ軍投入を躊躇う可能性がある為だ。実際、海上自衛隊とアメリカ海軍が実施している図上演習でも、「グレーゾーン事態では日米の思惑が一致しないことが少なくない」(海自幹部)という。条約上の義務が無い状況下で、アメリカ側がどこまで関与するかははっきりしないままだ。「自衛隊による対処が難しく、アメリカ軍も介入し難いグレーゾーン事態を引き起こすことで、中国は尖閣諸島の実効支配を狙ってくるだろう」。日本政府関係者がこう懸念するように、今そこにある危機には課題が山積している。


⦿読売新聞 2017年3月31日付掲載⦿
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