【政治の現場・安保法施行1年】(下) 駆けつけ警護、次へ一歩

20170411 08
先月10日夜、安倍晋三首相は、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊の5月撤収を表明した。丁度同じ頃、南スーダンの首都・ジュバの自衛隊宿営地では、柴山昌彦首相補佐官が約300人の隊員を前に撤収方針を説明した。「“百里の道も九十九里をもって半ばとせよ”との格言がある通り、これからの任務こそが重要だ。最後まで気を抜かずに、締め括りの任務に取り組んで下さい」。気温42℃の中、身動きもせずじっと耳を傾けていた隊員らの表情には、驚きと安堵が交錯していた。この部隊は、安全保障関連法で可能となった“駆けつけ警護”と“宿営地の共同防護”の新任務が与えられた。武装集団に襲われた民間人から要請があれば助け、襲撃を受けた宿営地を他国軍と共に守る――。PKOの現場では当たり前の任務が、安保関連法施行前の自衛隊にはできなかった。正当防衛や緊急避難以外の武器使用は、相手が国や国に準ずる反政府組織であった場合に、憲法が禁じる武力行使に当たる恐れがある為だった。安保関連法では、自衛隊員の任務の妨害を排除する為の武器使用に道を開いた。昨年9月に新任務実施に向けた訓練を開始し、政府は2ヵ月後の11月に新任務付与を決定した。ただ、他国軍部隊は駆けつけ警護の対象外とし、近くに他国の歩兵部隊がいないケースに実施を限る等、運用に高いハードルを設けた。新任務の意義は、国会論戦では霞みがちだった。

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ジュバでは、昨年7月に死者が270人以上出る大規模な武力衝突が起きた。その後、比較的平穏な状況が続いたが、野党側は「PKO参加5原則が守られているのか?」等と批判を強めた。2月に入ると、陸自部隊が作成した日報に“戦闘”との表記があったことが明らかになり、国会は紛糾した。一旦は「廃棄した」と説明した日報が、「統合幕僚監部で見つかった」と公表。実際は陸自内部に保管されていたが、「整合性が取れない」として、その事実を統幕幹部が伏せていたことも判明した。防衛監察本部が調査に乗り出す事態となり、国会では防衛省の稲田朋美大臣が連日、野党側の追及を受けた。政府は、撤収の判断を“1つの区切り”と説明するが、部隊のリスク回避に加え、国会での野党の攻撃材料を摘む思惑もあったとみられる。ジュバの治安は比較的安定していることもあり、新任務が実施されないまま撤収の日を迎える可能性が高い。ただ、任務付与が無駄だった訳ではない。昨年12月下旬、ジュバの宿営地で自衛隊員と各国軍による会議が開かれた。宿営地の共同防護に関する“事態対処演習”だった。実動訓練ではないが、今後起こり得る事態についてどう対処するか、各国の担当者が議論を交わした。自衛隊がこうした会議に参加したのは初めてだった。これまでは、宿営地の共同防護の訓練の打診があっても何もできず、「肩身の狭い思い」(自衛隊幹部)をしてきた。防衛省幹部は、「次に繋がる一歩を踏み出せた」と語った。今回の撤収で、自衛隊のPKOへの部隊派遣はゼロになる。最近では、PKOの任務の中心が、国造りから文民保護活動に形態が変わり、先進国は部隊派遣に消極的になっている。国際社会の平和と安定に、自衛隊がどう貢献していくのか。積極的平和主義を掲げる安倍政権の課題である。

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石田浩之・松下正和・岡部雄二郎が担当しました。


⦿読売新聞 2017年4月2日付掲載⦿
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