【霞が関2017春】(06) 財政の議論、どっち向き?…“榊原財制審”に映るもの

国の予算の使い方を議論する『財政制度等審議会』(※財務大臣の諮問機関)の会長に、『日本経団連』の榊原定征会長が就いた。財務省は、経済界へ睨みが利く大物に議論を委ね、増え続ける社会保障費の負担を企業にも求める道を探る。一方で、国民に幅広く負担を求める税制を話し合う『政府税制調査会』の活動は停滞気味だ。明暗分かれる2つの会議の姿には、いつも“首相官邸向き”な議論を強いられる霞が関の悲哀が映る。「(財制審が提言した社会保障改革のメニューは)全て実現しないといけない」。榊原氏は7日の記者会見で、意気込みを語った。年末の予算編成に向けて、これまで財制審が提言してきた社会保障の歳出カット等のメニューを実行に移すよう、厳しく政府に迫る構えを示した。従来の財制審は、経済界の大物をトップにするのが慣例。民主党政権は、審議会が政治主導を歪める原因として、経済界の大物を排除し、学者を会長にしてきた。榊原氏は、首相直轄の『経済財政諮問会議』の委員も兼ねる。財制審会長を兼任する経済界トップは、榊原氏が初めて。2つの会議に睨みを利かせる。財制審が経済界の大物をトップに仰いだ時代は、財務省に反発する経済界の意見を会議が押さえ込み、財政の議論に大きな影響力を誇った。今でも語り継がれる大物が、2001~2003年に会長を務めた今井敬氏(※現在は経団連名誉会長)。当時、企業負担が増す健康保険組合の保険料上げに経済界の委員が反発したが、同席していた別の委員は「最後は今井氏が咳払い1つで議論を纏めていた」と振り返る。各省が求める予算額を前の年度よりも減らすマイナスシーリング(※1983年導入)も、財制審が纏めた大きな成果だ。過去の財制審は、各省庁が持つお財布の大きさを決める場ですらあった。

ところが、力を持ち過ぎた財制審は“財務省支配の象徴”とも捉えられ、霞が関の不評も買った。“官邸主導”を謳った小泉純一郎政権になると、首相直轄の経済財政諮問会議に議論の舞台を少しずつ奪われていく。更に、政治主導を進めようとした民主党政権で、財制審の存在感は低下。財務省には、「榊原氏の会長就任を機に、財制審をもう一度議論の檜舞台に持ち上げたい」という思いがある。一方、同じく財務省が主導する形で税制改革を議論する政府税制調査会は、停滞感が漂う。地盤沈下ぶりが際立ったのが、専業主婦世帯を優遇する配偶者控除の見直し議論だ。2015年の税調は廃止案を含む3案を提言したものの、専業主婦世帯と共働き世帯の対立が生じ易いテーマで政治を押し切るだけの力が無い。首相官邸は何れも採用せず、提言は提言に留まった。結局、昨年末の与党の税制調査会の議論で、パート主婦が年収150万円まで働いても減税額が変わらない仕組みでの小手直しが決まった。政府税調のある委員は、「本来議論すべきこともできていない」と嘆く。消費税率の10%への引き上げや軽減税率の議論は、安倍政権の発足後、政府税調では議論ができていない。国民にとってとても大切な議論でも、官邸を刺激しそうなテーマは素通りするのが今の政府税調だ。来月には所得税改革等のテーマの議論を再開する見通しだが、大改革を進める機運は未だ乏しい。予算編成の匙加減で無駄な歳出を抑えることは、国民の受けも良く、延いては首相官邸の受けも良い。法人税下げ等で官邸に“借り”がある経済界は、官邸との関係を考えると、負担増の議論にも乗るだろう。一方で、法律の力で国民に負担を強いる税制改革への官邸の意向はどうなのか。財制審と政府税調の舞台回しをする財務省が向いているのは、官邸か国民か。政府税調の委員がどう見ているかは…言うまでもないだろう。 (飛田臨太郎)


⦿日本経済新聞電子版 2017年4月11日付掲載⦿
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