中国で溢れ返る使用済み核燃料――大都市近郊で工場立地の無謀、再処理無き原発依存の危険な実情

20170412 09
原子力依存を進める中国で、使用済み核燃料の扱いが深刻な問題に浮上している。3年後の2020年には、現存の使用済み核燃料プールが満杯になる見通しにも拘わらず、再処理プラント建設が住民の反対で宙に浮くという衝撃的事態が起こり、原発推進計画に大きな影を投げかけている。事件があったのは江蘇省連雲港市。中華人民共和国成立以前は“海州”と呼ばれ、春秋戦国時代から中国史を彩った。この歴史的港町の中心部で、昨年8月6日夕、数千人が“核燃料廃棄物施設を拒否する”と書かれた横断幕やプラカードを持って、デモを行った。抗議行動の模様は多くの市民が撮影し、インターネット上に投稿。数千人規模と見られる治安当局が介入して、暴力的に解散させようとした映像が世界に伝えられ、中には当局者が拳銃のようなものでデモ参加者を脅す場面もあった。翌7日、連雲港市政府は声明を発表し、「(使用済み核燃料再処理)工場建設は用地選定の段階であり、最終決定ではない」ことを市民に告知した。この後、市民の大規模デモは伝えられていないが、再処理プラント建設の具体的な動きも止まっている。中国駐在の長い大手紙記者は、「連雲港市の対応は例外的に早いと言える」とした上で、「土地収用とは別次元の非常に厄介な問題だけに、抗議行動が一気に拡大するのを恐れたのではないか。市は計画について“白紙撤回”とは言っていないので、時間をかけて反対派を切り崩す戦略に切り替えたと考えられる」と言う。

市民が反対したのは、『中国核工業集団公司(CNNC)』とフランスの原子力事業大手『アレバ』が共同で計画する使用済み核燃料再処理プラントだ。連雲港市の東約30㎞には『田湾原子力発電所』があり、ここに隣接して建設する予定。2020年に着工し、2030年までに完成させる計画だ。「大都市(※連雲港市の人口は約480万人)の直ぐ傍に巨大原発があるだけでも不安なのに、放射能が高い使用済み核燃料の再処理工場なんてとんでもない」。デモ参加者の1人は後に、西側メディアの取材に対して、匿名でこう語った。東日本大震災時の『東京電力』福島第1原子力発電所事故が、港湾都市の市民に消し難い衝撃を与えたのは間違いない。中国政府は“フクシマショック”後の数年間、それまで急ピッチで拡大してきた原発建設を控えていた。しかし、昨年から再び原発拡大路線を鮮明にし、現在稼働する36基に加えて、20基を建設中だ。構想中のものを合計すると200基以上になる見通しで、『世界原子力協会(WNA)』のアニエッタ・リーシング事務局長は昨年10月、「向こう10~15年で、中国は世界一の原発大国になる」との予測を公表した。中国は原発数では目下世界4位だが、トップ3のアメリカ・フランス・日本を一気に追い抜くというのだ。この野心的計画の背景には、世界に悪名を轟かす深刻な大気汚染がある。電力需要の急増、大気汚染の深刻化、温暖化ガス排出といった多重危機を脱する道が、原発と電気自動車(EV)という訳だ。中国政府は、電力の原発依存を現在の3%から、2030年までに10%超に引き上げることを目論んでいる。だが、この構想のアキレス腱が使用済み核燃料の処理問題である。中国には、軍事目的の再処理プラントが1970年代から稼働しているが、商業用の再処理プラントは未だ稼働していない。業界団体である『中国核エネルギー産業協会』の推計では、現存する使用済み核燃料貯蔵プールは2020年末までに満杯になり、その後は年間1000トン以上もの使用済み核燃料をどうするかが深刻な問題になるという。同推計では、国内にある全ての原発の貯蔵プールを使っても、2025年には満杯になる見通しだ。前出の連雲港市近郊での施設建設計画は、その解決策の1つ。他にも候補地がある模様だが、前出の大手紙記者は「中国政府は原発に関して極端な秘密主義なので、市民の原発アレルギーは日本よりも遥かに強い。中国の原発の多くは、沿海部、しかも人口密集地帯に近いところに立地しており、連雲港市のような反対デモはどこでも起こり得る」と言う。中国の業界関係者の間では、「人口希薄な西部の砂漠地帯等に高濃度放射性物質の貯蔵施設を作る」との見方がある。

20170412 10
勿論、使用済み核燃料の問題は、日本を含め、世界中が苦慮するところだ。しかし、遠からず世界最大になる原発大国が、確固たる核燃料再処理の計画を持っていないとなれば、これは国際政治上の重大課題である。昨年訪中したアメリカ合衆国エネルギー省のアーネスト・モニツ長官(当時)は、「核拡散の観点から明らかに望ましくない」と中国側に伝えた。使用済み核燃料の山が積み上がれば積み上がるほど、ここから軍事用プルトニウムを抽出して核爆弾を作る危険性も高まる。中国政府が「核弾頭を増やしたい」という誘惑にかられることも、プルトニウムがテロリストの手に渡ることも、国際社会にとって“好ましくない”という訳だ。これだけ不安を抱えながら、中国政府の野心には限りがない。先月中旬に開かれた第13次5ヵ年計画(2016~2020年)原発産業発展計画大会では、予てから計画中の移動式海上原発が、遠洋油田開発や離島の電力供給に極めて重要なものと位置付けられた。『光明日報』によると、中国国家国防科技工業局の王毅靭副局長は「今後は適切な時期を見計らい、関連部門と模範プロジェクトの建設を始める」と述べて、今年中にも海上原発建設に着手することを示唆した。計画では、合計20基の海上原発が作られる。主要な設置場所は南シナ海。中国政府は、周辺諸国との間で領有権争いが過熱する海域に、安全性が検証され尽くしていない海上原発を次々と浮かべていく方針なのである。中国の原発建設ラッシュは、日本企業に一時、“大きな商機”と希望を抱かせた。だが、『東芝』傘下の『ウエスチングハウス』は「最大で10基の契約が受注できる」と目論んで中国事業を拡大し、巨額赤字の山を築き上げてしまった。ウエスチングハウスが受注したのは、10年前に契約した4基だけで、何れも当初の運転開始予定から2~3年遅れ、未だに1つも稼働に至っていない。中国の原発はビジネスリスクでもあったのだ。隣国で進む、無軌道で、得体の知れない原発事業――。その行方は、今や核拡散・安全性・天災のリスク・市場リスクと、あらゆる観点から厳重監視が必要になっている。


キャプチャ  2017年3月号掲載
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