【大機小機】 景気回復の悲惨な実態

景気の良し悪しの判断には、フル稼働した時の日本の生産力(=潜在生産力)と需要とのギャップが重要な指標になる。経済活動がそれを下回れば景気刺激策が必要だし、上回れば景気過熱やインフレを心配する。しかし、景気対策はそれでは不十分だ。潜在生産力も内生的だからだ。景気の先行きが不安なら、企業は投資を控えるから、生産設備の拡充も高性能化も進まない。これが長期間続けば、景気が回復して稼働率が100%になっても、実現できる生産量は低いままだ。機械設備よりも、人材育成への影響は更に深刻だ。勤労習慣・オンザジョブトレーニングの欠如・技術の伝承の停止等、人的資本の蓄積が阻害される。貧困が教育機会を奪うことによるマイナス効果も見過ごせない。例えば東日本大震災以降、公共事業が増え、建設労働者や技術者が足りず困っている。これは、橋本龍太郎・小泉純一郎両政権時代からの建設業の縮小政策が生んだ結果である。震災需要に頼っても一時的だ。若い世代が世界をリードした土木技術を受け継ぎ、磨こうとも思わないだろう。通常、景気回復とは「需要が伸びて生産能力をフル稼働させる状態に近付く」と考えられている。しかし、今の景気回復は、需要は伸びずに生産性が落ちて、需給ギャップが縮小する状態になっている。実際、「雇用は改善した」と言うが、消費も国内総生産(GDP)も横這いだ。つまり、生産性は下がり、潜在生産能力は下がっている。生産力維持の重要性を物語る一例がある。『伊勢神宮』で20年毎に行われる式年遷宮だ。主な目的の1つが技術の伝承で、2013年の遷宮では500億円超もの費用をかけたとされる。現政権は成長戦略を主張するが、景気回復の兆しさえ見えない。これでは、いつまで経っても生産力の維持拡大に着手できない。潜在生産力は劣化する一方だ。販売の拡大が見通せない状態では、企業は生産力を引き上げる筈がない。生産力を維持してもらうには、政策的に需要を作り出すしかない。どうせなら、今後、世界中で益々必要になる高齢化対策はどうか。この分野は、介護士の技能は勿論、医学・薬学からロボット技術まで幅が広い。 (魔笛)


⦿日本経済新聞 2017年4月11日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR