中高生52万人が陥ったインターネット依存症――外出せず昼夜ゲームで“生きた屍”、死にかけのお爺ちゃんみたいな血液検査結果

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東京都内のホテルで相対した女性は、とても憔悴していた。森山久美さん(仮名・51)。中学3年生の長男・大輝君(仮名)が“普通の中学生”の暮らしを一切止め、バーチャルな世界に浸かる生活を始めて3ヵ月になる。「今日は私が家を出る時、未だ起きていました。昨日寝たのは14時で、20時に起きてずっとゲームです。夜中、真っ暗な中に、タブレットのブルーライトの光と声だけが響くんです。スカイプで“フレンド”と、電話みたいに喋りながらゲームをやり続けています」。食事は1日1食、歯も磨かず、爪は伸び放題。全て、ゲームをやる時間が惜しいからだ。家から全く出ない生活故に、お風呂に入る必要もない。「陽の光も浴びていないし、歩くといってもトイレと食卓までの移動。生活の場面で、走ることも登ることも手を挙げることも無い。タブレットを持っているだけです。食事は夜中に食べるので、夕食はテーブルに置いて寝るのですが、私が朝起きてもラップのまま。食べていない。だから、どんどん痩せています」。トイレに行く時は『ニンテンドーDS』を手に音楽を流し、食卓についても『Wii U』のタブレットが欠かせない。これで、『YouTube』の動画サイトにアップロードされているゲームの対戦動画を見ては、攻略法を考えている。「寝ているか、ゲームをやっているか。カーテンを開けると、『眩しいから閉めて』って言います。電気も明るいから嫌みたいで、昼から家の中が真っ暗なんです」。マンションはフルオープンなので、個室に引きこもることはないが、布団を敷き、クッションの上に寝そべって、タブレットを操作する。「最近、頻りに『お尻が痛い』って言うんです。痩せ細って、お尻に肉が何も無い。骨がぼこっと見える。同じ体勢でやり続けているから、床擦れのようなものができているんしゃないかと思うんです」。胃が小さくなっているのか、老人のようにどんどん食が細くなる。前日にピザトーストを2枚食べたのに、翌日は1枚しか入らない。「もうお腹が一杯だ」と。大輝君はまさに、“インターネット依存”と言われる1つの典型例と言っていい。最早、単なる“やり過ぎ”ではない。“依存症”という、治療が必要とされる状態にまで陥っている。

2013年8月、厚生労働省研究班の調査で、インターネット依存に陥っている中高生は51万8000人という推計値が発表された。前年10月からこの年の3月まで、全国の中学校140校と高校124校の生徒約14万人を対象に初めて実施された調査で、インターネットの使用が“病的”だと認められた生徒が8.1%に上った。この割合を基に、全国でインターネット依存の中高生は51万8000人と推計されたのだ。この調査に先立つ2011年7月、アルコールや薬物依存等の専門治療機関である『国立病院機構 久里浜医療センター』に、日本初の“インターネット依存外来”が新設されている。樋口進院長は、国内初となるインターネット依存外来設立の経緯を、こう語る。「私どもは5年に1回、“飲酒実態調査”を行っています。全国から成人7500人を無作為に抽出して、聞き取りをする本格的なものです。2008年の調査で興味があったので、インターネット依存のテストを初めて入れてみたんです。その結果、男性の2.0%、女性の1.9%がインターネット依存に該当、国民レべルで推計すると271万人。この推計値は驚きでした。『依存症治療のノウハウがある私たちこそ、何とかしないといけない』と」。同年11月には、全国から患者が殺到。今は新規予約をストップし、一定の期間だけ受付けるが、それでも何ヵ月も待つ。患者は大学生や中高生でほぼ男性、最近は低年齢化が進み、中には小学2年生の患者もいる一方、スマホ依存の女性患者も増えている。樋口院長は言う。「インターネット依存は未だ、病名として明確に確立していません。一般の方は、『単なる使い過ぎ・やり過ぎだから大したことない』と。インターネット依存というとチャラいイメージがありますが、アルコール依存と肩を並べるほど重大且つ深刻な問題です」。全ての依存症に言えることだが、インターネット依存にも明確な定義がある。それが次の3点だ。①生活全てがインターネット中心で回っている②使い方のコントロールができていない③インターネットによって問題が起きていることを知っているが続ける。久里浜のインターネット依存外来は、医師・臨床心理士・看護師・精神保健福祉士の総勢7名のチームで治療に当たっているが、臨床心理士の三原聡子さんは、その実態をずっと間近で見てきた。「スマホのゲームは、イべントの時間帯が毎日変わるんです。夜中だろうが明け方だろうが、そこでログインするとプレゼントやキャラクターが貰える。すると子供たちは、ゲームのスケジュールに合わせた生活になるんです。学校のスケジュールではなく。学校行事で遠足があろうが体育祭があろうが関係ない」。

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開設当初から700例以上の患者を診てきたが、当初はPCで行うオンラインゲームが主流で、最近はスマホが3~4割ほどに増えている。樋口院長は言う。「機械への依存という意味で、パチンコやスロットと似ている要素もあるのですが、オンラインゲームには“人”がいるのです。故に、普通のギャンブルと違った意味での依存のパターンがあります」。オンラインゲームには、バーチャルな世界でチームを組んで対戦していくゲームが多い。チームメンバー次第で、寝る時間が4時にも5時にもなる。当然、起きられないから学校へ行けない。学校を休めば1日中、ゲームができる。こうして昼夜逆転となり、リアルな生活からインターネット中心の生活へ移行。あっという間にインターネット依存が出来上がる。一方、スマホ依存は部屋に引きこもることがない為、一見、露見し難い。しかし、実態はゲーム・チャット・『LINE』・芸能人のブログ・掲示板等、1日中インターネットをし続ける訳で、当然ながら成績はガタ落ち。慢性的な睡眠不足で、普通の生活が困難になる。インターネット依存から回復した高井陸さん(仮名・23)は、「あれはまるで部活だった」と当時を振り返る。最初にハマったのが、FPS(ファーストパーソンシューティング)系の『CoD』というゲーム。「戦争ゲームです。画面には手と銃しか出てこなくて、自分が戦っているようになるのが醍醐味です」。高校2年生の時だった。深夜までのゲームで朝、起きるのが辛かったが、学校は休まず、サッカーの部活も続けていた。受験勉強で一旦離れたものの、大学2年生で友だちから誘われ、CoDを再開。1人暮らしで、何をしようが自由だった。「そこでチームに入ったんです。段々と大学に行かなくなり、チーム中心の生活になりました。15時に起きて、17時まで個人練習をして自分のスキルを上げ、19時か20時まで上手い人と戦うプライべートゲーム、20時から23時までチームの練習試合、深夜1時まで休憩して、また練習試合。その後、反省会を1時間。本当に部活のような感じですよ。バーチャルな世界のチームメイトと」。

食事は、1試合目と2試合目の間にコンビニ弁当かカップラーメンの1日1食。外に出るのはコンビニに行く時だけ。この生活が1年続く。この間、盆も正月も実家へは帰省していない。「申し訳なくて帰れなかった。『大学にも行かないで、こんなことしてて』って。ゲームをやっている時も、『このままでは拙い』とは思っていました。でも、どうでもよかった。自分の人生、どうなるんだろうなんて何も考えてはいなかった」。樋口院長が言う“わかっているけど止められない”依存の定義そのままだ。次に“チーム”で移行したのが『MMO-RPG』である。『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』等といったロールプレイングゲームだ。「味方を守る役・回復させる役・ダメージを与える役とかキャラクターが色々あって、チームを組んで敵のボスに挑んでいく。生活は基本、変わりません」。親に成績が送られ、大学2年生の単位が取れてないことがばれ、大学3年生を休学したが、それでもゲームを続けた。「この生活が大事というより、考えていないんです。現実を見ない為に。勿論、ゲームの中では楽しいし、頼られるし、ヒーローにもなれる。でも、本当に現実逃避。自分ではもう、どうしていいかわからないから、そこにいる」。多くのインターネット依存の子供を診てきた樋口院長は、このように解説する。「子供たちは現実を見たくない。嫌な学校に行かなきゃいけないし、行けば友だちから『お前、今まで何やっていたんだ?』と言われる。勉強も遅れてついていけないし、苛めに遭うかもしれない。現実はとても厳しい。彼らは今の生活がいいとは思っていない。厳しい現実に入っていけないから、現実逃避をせざるを得ない。それに理由付けをしている」。高井さんがそうだった。リアルな世界は冷たく厳しい。ならば、バーチャルな世界の居心地の良さの中に逃げ込んで、ぬくぬくしていたほうがいい。そうやって悪循環のスパイラルへと嵌まり込んで行く。次は、RTS(リアルタイムストラテジィー)の『LoL(リーグオブレジェンド)』にハマった。世界的に非常に有名なゲームで、海外ではプロのゲーマーが沢山いるという。「日本でプロゲーマーの土台があったなら、自分は絶対に目指していたと思う。でも、当時は無理だった。今はかなりできてきていますが。“e-スポーツ”と言って、海外ではスポーツとして成り立っていて、年間2000万円ほど稼ぐ人も。中国では3億。ただ、平均年齢が24歳くらい。反射神経が落ちてくるので、入れ替わりが凄く激しい」。転機が訪れたのは2015年2月。上京した母親から「こんなところがあるよ」と、久里浜医療センターの存在を告げられた。母親は半年前、1人で久里浜に行き、息子の状態を相談していた。母親からみれば、それほど危機的状況だった。母親は息子にこう言った。「生きているだけで十分だよ」。「この言葉がとても嬉しかった」と、高井さんは振り返る。その時、思った。「そっか、生きているだけで十分なら、ちょっと頑張ろうかな」。高井さんは自ら電話をかけて予約を取り、久里浜を受診した。

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「樋口先生から『インターネット依存傾向ですね』とはっきり言われました。体力検査もしたのですが、全ての数字が40歳。サッカーをやっていたのに、『うわー、おっさんだぁー』って物凄いショックでした。『これは何とかしないと』って」。アルコール・薬物・ギャンブル依存等が時間をかけて形成される“おじさん”の病いだったのに対し、この新たな依存症は、1ヵ月かそこらで依存状態が作られるという特徴がある。誰でもなり得るし、患者の多くが未成年であるように、人生経験が極めて少ない年齢で依存に陥るという、嘗てない事態を招いている。しかも、他の依存症はアルコールや薬物を“止める”という治療の最終目標があるが、今の世の中、インターネットを“止める”ことは不可能だ。それ故、治療が非常に難しい。樋口院長が指摘する。「第三者が入らないと、家族だけでは状況は変わらない。なので、外来に連れてくるのはいいことですが、彼らはこんなところに来たくない。梃子でも動かず、家族だけの受診というのも多い。渋々来る訳だから、我々も敵なんです。先ず、心理と身体の検査をして通ってもらう中で、信頼関係を作っていく。治療はインターネットを止めるのではなく、ゲームよりもっと面白い何かを見つけること。より健康的な代替物を一緒に考えていく」。久里浜医療センターでは、外来診察の他に入院治療、そして週に1回、デイケアを行う。デイケアは朝9時半から15時まで。スポーツ・陶芸・絵画等の芸術活動や、参加者間でミーティングを持つ。この間、インターネットは禁止。少しでもインターネットから離れる時間を作ることに意義がある。夏に行う8泊9日の長期キャンプも、インターネットを抜くのが狙いだ。

樋口院長が言う。「本人が治したいという気持ちを持つことが、治療の第一歩です。入院も本人の同意無しには受け入れません。入院期間の8週は、インターネットを抜く為の時間です。インターネットを使っている間は、真面な思考はできませんから」。診察では、丁寧に話を聞いていく為、非常に時間がかかる。「一番難しいのは、相手が子供だということですね。大人ならそれなりに状況を理解する。子供たちは正直で、やりたいものはやりたい。彼らにわからせるのが非常に大変。隙あらばゲームをやろうとしていますから」。インターネット依存は、通常の生活を破壊するだけでなく、様々な合併症を併発する。中学と高校でサッカーの部活をしていた高井さんが、1年足らずで40歳の体力になったように、健康への影響は特に見過ごせない。昨年6月に久里浜医療センターのインターネット外来を初めて受診した、中学3年生の息子を持つ片瀬文香さん(仮名・50)も、1人息子の優君(仮名・15)の身体が異常だったと振り返る。最もインターネット依存の状態が酷かったのは中学1年生の時。抑々、優君は自閉症スペクトラム障害を持ち、文字が書けないという学習障害もある為、文字を書く為にパソコンの使用が学校から許可されている。文香さんが言う。「だから、彼にとってのパソコンは、障害を補う道具であり、松葉杖や車椅子と一緒。取り上げられないものなんです」。小学校低学年の時に先天的な病気で脳の手術を受けることとなったが、視神経と手の協調のリハビリに勧められたのがニンテンドーDSだった。「手術で学校を200日休んだのですが、その間、DS三昧。そりゃあ、腕がめきめきと上がります。小学校低学年でマリオをクリアしている子なんて、殆どいないですよ」。無くてはならないパソコンとDSだったが、小学校時代は依存状態にまでは陥っていない。依存になってしまったのは、中学校進学で大きな負荷がかかったことだ。障害の特性として身に付けるものへの拘りがある優君にとって、詰襟の学生服は拷問のようなもの。ワイシャツのボタンを嵌めるだけで多大な苦痛を齎す。優君はこうした厳しさから、インターネットの世界へ逃げ込んだ。「彼にとって、ゲームは楽しい、心地いい時間だったと思う。しかも彼は、“過集中”という特性がある。リアルな世界では生き難いけど、ゲームの世界では優位に立てるから、気持ちよかったんだと思います」。当時の優君は、こんな状態だった。「朝方までゲームをやって寝落ちする。朝は私が何度も起こして、やっと着替えたと思ったら、部屋で鞄を持って寝ている。漸く行った学校では、保健室でほぼ寝ていて、だから完全に昼夜逆転です。帰ってくれば、玄関で靴を履いたまま寝ている。それが何十回とあった。オートロックを解除してマンションには入ったけど、うちの部屋にまで辿り着かない。マンションの何処かで寝ていることも何度かありました」。

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中1の時、優君の血液検査の結果を見た主治医の驚愕を、文香さんは忘れない。「いやぁ、これは酷い。これはもう、80歳を過ぎた死にかけのお爺ちゃんみたいな数値だよ」。文香さんも、このように記憶する。「肝臓の炎症度が高く、腎臓もダメ。血糖値もお爺ちゃんの数値以下。身体を土台から支えるものが全部ダメになっていた」。食べ物への拘りがあり、元々栄養が摂り難い身体なのに、ゲームが生活の中心になれば益々食べない。そんな身体でありながら、朝までらんらんとゲームができる。「やり出したらへトへトでもやり続ける。止める時は精根尽き果てた時。まさに寝に落ちるって感じです。夜中に、青白い光の中で瞬きもしないでやっている」。みるみると成績が下がっていった。偏差値70ほどの子が、底辺まで落ちていく。散々な成績で、本人の意欲もどんどん下がり、益々ゲームへと逃げ込んでいく。優君がゲームをするのは、居間のテーブルだ。その姿を横目で見ながら、大抵、文香さんがキレる。「『いい加減にしろよ』と19時に思う。“いい加減にしろオーラ”を3時間くらい出し続け、22時になると無言でブレーカーをばっと落とし、ケーブルをペンチで切断する。オール電化だからブレーカーを落とすと大変なんだけど、それでも落とす。『このやろー!』って、ふつふつと怒りが湧き上がっているから」。沸騰するような波立つ思いは決して、“子供を良い方向に導く為”なんかじゃないと文香さん。「『こんなに怒ってんだぞ』という嫌がらせです。表面上は『貴男の為なのよ』、でも本音は『ざまぁみろ!』」。優君は「ちっ」と舌打ちして、コントローラーを投げ捨てる。「くそっ、死ね! やってらんねぇや。何やってんだよ! 何勝手に切ってんだよ!」「私は貴男に、19時から『止めなさい』と警告をしています」「うるせー!」「うるせーって誰に向かって言ってんだ!」。

叩きはしないが、肩に置いた手に滅茶苦茶力を込める。ノートパソコンを、足の爪が真っ青になる程、蹴った。「ノートパソコン、綺麗に飛んで行きました。ケーブルを切断したり、もうあらゆることをやり尽くした。でも、頭を使う子なので、秋葉原で廃品を集めてきて自分で直すんです。うちの子が入っているパソコン部は、プログラミングで県大会で優勝するほど。太刀打ちできないです。出かける時にケーブルを持ち歩いたりもしました。嵩張るから、こちらも学習してルーターにしたんです。でも、ルーターが無いなら無くてもできるんです。完全にいたちごっこ。そして常に、向こうが一枚上。悔しいですけど」。母も息子も煮詰まっていく。文香さんは久里浜医療センターに電話をかけた。「子供の為というより、親にとって都合が悪くなってきたからですよ」。4月に予約の電話が繋がり、初診は6月末。中学3年生での受診となった。中2から通った塾で、「講師の期待に応えたい」という気持ちが芽生え、熟の前日は勉強をする等、最悪の状況は脱していた。その時の樋口院長の言葉が、文香さんと優君の大きな支えとなっている。「この人は自分で何とかしたいと思っているから、もう心配しなくていいよ」。文香さんは改めて思う。「第三者が入ると良くなるというのは、何となくわかっていたのですが、『あぁ、本当にそうなんだなー』って思いました」。誰にでもなる可能性があるというインターネット依存だが、なり易い傾向・要因というのはあるのだろうか。樋口院長は診察を通し、痛感していることがある。「背後に色々なものを持っている子が非常に多い。家庭環境・発達障害・知的障害・学習障害等の問題を持っていて、我々はインターネット依存を診ているけれど、その子が背景に持つ課題も一緒に診ていかないといけない」。樋口院長は、「リスク要因の1つに、家族の問題がある」と指摘する。「家族そのものが大変なところが多いですね。離婚して母子家庭・父親が単身赴任で不在・夫婦の仲が良くない等。親が子供の行動をしっかりコントロールできていないのを感じます」。確かに、片瀬家も高井家も、父は単身赴任で不在だ。中でも、冒頭の森山家には、父から息子への心理的・身体的虐待という極めて重大な問題があった。父は周期的に、大輝君に向けて爆発した。殴る蹴るの暴力に堪えかね、大輝君は何度も家を飛び出した。久美さんが捜索願を出したことは、一度や二度ではない。辛い現実から逃れるように、大輝君はゲームの世界へのめり込んでいった。そこが唯一の癒しの場所だった。更に、大輝君の場合、中学に馴染めなかったことも大きい。サッカー部があることで選んだ学区外の中学で、友人も居場所も作れず、サッカー部も辞めてしまう。大輝君にとってリアルな友だちではなく、バーチャルな世界の“フレンド”と呼ぶ存在が益々大事になっていく。

ある時から、学校へ行くのを促す為に起こしに行く久美さんに、暴力を振るうようになった。目を開いた瞬間、久美さんを睨みつける。「ふざけんじゃねぇよ!」。ハンガーを振り回し、何度も久美さんに打ち付ける。殴る蹴るもだ。「暴力を振るっている時の大輝は、目つきも変わって別人のよう」。ふと、大輝くんの目から力が失せる。久美さんの前にいるのは、いつもの優しい息子だ。森山家の場合、ゲームの与え方において問題があった。父が絶対にゲームをさせない方針だった為、大輝君は祖母に頼んで内緒でDSを手に入れた。小学校高学年ともなれば、DSを持っていないと遊びにも入れてもらえない。久美さんの財布からお金を抜いて、ゲーム機を何台も自分で買っていた。こうして大輝君は、自由にゲームができる環境を手に入れていた。親の目が届かないところで。樋口院長は、最初が肝心だという。「買い与える時に、子供と使い方について約束することは極めて重要です。一番大事なのが、ゲームをする時間を決めること。これが殆どの家庭でできていない。インターネット依存で困るのはそこです。だらだらとやり続ける」。回復への道はどこにあるのか。インターネット依存当事者であった高井陸さんの言葉が核心を突く。高井さんには、臨床心理士という将来の目標もできた。「僕は、リアルな世界での楽しさを見つけたんです。インターネット依存から立ち直るのはそこだと思います。リアルな世界に目標ができ、いい人間関係ができると、いつの間にかやらなくなっていく」。片瀬優君は今、高校受験を目指して勉強中だ。文香さんが言う。「勿論、ゲームはずっとやっています。でも、前みたいに朝方まではやっていない。彼なりに抑制的に使っている。『“高校に行きたい”という目標があるから、受験勉強を頑張る』って」。心配なのは森山大輝君だ。久美さんの目から涙が零れる。夏のキャンプを最後に、久里浜にも通えなくなった。「1日1食で、どんどん痩せていく。喘息予防薬が欠かせない身体なのに、食べないと薬は飲めない。発作が起きると、酸素ボンべが必要なほど重篤になります。痩せ細った今の身体だと、命も危ない」。高井さんは中高で部活をやり切り、受験勉強を貫いた“経験”があるから、回復できたと言えるかもしれない。しかし、大輝君はどうだろう。“リアル”な経験は中学1年生で止まったままだ。今や、大輝君のような状態に陥っている年端も行かない子は、1人や2人ではない。樋口院長は、怒りを込めて訴える。「メーカーは熱狂させるものを作り続けるが、メーカーに言いたい。『この子たちを見てよ』と。家族がどれほど絶望しているのかを。国も何の規制もかけようとしていない。おかしいですよ」。今、子供たちがゲームメーカーの利益の為に食いものにされている。子供の“今”と“未来”がバーチャルな世界で捻り潰されている現実を、私たちもまた直視しなければならない。 (取材・文/ノンフィクションライター 黒川祥子)


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