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【京阪神・令和の三都物語】(03) 日本電産次期社長候補を予想…永守氏が信頼を寄せる“銀行出身”と“左遷組”

『日本電産』の永守重信氏が後継者選びを本格化させる。外部人材の登用で失敗を続けたことで、内部から指名するという。だが、膝元に残った人材は限られており、自ずと候補は絞られる。

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「外部に探しても私の求める人材はいない。今後は外部から即トップに迎えることは一切ない」。永守重信会長兼CEOは、関潤氏の社長退任と、創業メンバーの小部博志氏の社長指名を発表した9月2日の記者会見で、次期社長を内部人材から選ぶ方針を表明した。現在73歳の小部氏の社長就任は一時的な措置で、来年の4月には副社長5人を選定する。この5人から1人の社長を2024年4月に選出する予定という。既に永守氏は後継者選定で、『カルソニックカンセイ』(※現在の『マレリ』)元社長の呉文精氏、『シャープ』元社長の片山幹雄氏、『日産自動車』元幹部の吉本浩之氏に続き、日産で一時は社長候補になった実力者である関氏を切り捨てた。最早、外部人材は選べる余地がないのが実情だ。だが、日本電産の内部に残された人材は極めて限られている。これにより、永守氏の後継となる次の社長候補は自ずと絞られる。日本電産の経営幹部には3種類の人材がいる。新卒採用で役員に上り詰めた“生え抜き幹部”、他社から転職・転籍して自力で役員になった中途採用の“ハイブリッド幹部”、役員待遇でヘッドハントされた“外部人材幹部”だ。永守氏が想定する内部人材とは、生え抜き幹部とハイブリッド幹部のことを指す。現在、副社長ポストは空席。来年4月に就任する5人の副社長には、小型モーター事業、車載事業、家電・商業・産業用事業、機器装置事業等、主力事業において責任を持たせた上で、其々の業績を競わせて、最終的に1人の社長を選ぶことになるとみられる。その最初の関門である副社長、5人の候補となる有力幹部は右表の通りである。

創業メンバーの永守氏と小部氏に次ぐポジションにいるのが、専務執行役員の菱田正博氏と北尾宜久氏の2人。何れも旧『住友銀行』(※現在の『三井住友銀行』)出身で、50代になって日本電産に出向・転籍しながら、長い時間をかけて永守氏の信頼を獲得して本社役員に上り詰めた“忠実な子分”だ。一方で、関氏の退任に伴って車載事業本部長を任されることになったのが、元『ソニー』の岸田光哉氏だ。また、日本電産の成長戦略を担うEV駆動用モーター『電動アクスル』の事業を担当する役員は早舩一弥氏である。だが、岸田氏は昨年12月にヘッドハントされたばかりの外部人材。7月に専務に昇格したものの、永守氏自身が関氏の退任をきっかけに外部人材幹部と距離を置くようになり、岸田氏は相対的に厳しい立場に立たされる。更に、関氏に代わって、赤字の電動アクスル事業の責任者となった早舩氏も厳しい立場にいる。ある日本電産関係者によると、「永守氏の無理な要求に早舩氏が反発して、会議の席を蹴るという緊迫した場面があった」という。その後、永守氏は早舩氏の態度を不問に付したようだが、蟠りは消えそうになく、早舩氏の後継候補としての見込みは限りなく小さくなったとみるのが自然だろう。代わって注目されるのが、電動アクスル以外の車載事業を担当する五十嵐一嗣氏だ。中国の大連の工場長から7月1日付で常務執行役員に昇格したばかりで、永守氏の評価が高まっている。また、永守氏の評価が高い外国人幹部が、家電産業を統括するバルター・タランザーノ氏。ただ、 外国人株主の意向に敏感な永守氏が外国人を副社長に登用することがあっても、企業文化を継承する社長に指名することは考え難い。子会社幹部で永守氏が信頼するのが、『日本電産サンキョー』社長の大塚俊之氏。旧『埼玉銀行』(※現在の『りそな銀行』)を経て、2004年に子会社の『日本電産リード』に39歳で転職した中途採用組で、今年5月から日本電産の最大子会社である日本電産サンキョーの社長を任された。一方で、純粋な生え抜き幹部として残っているのは、『日本電産自動車モータ・メキシコ』会長の宮部俊彦氏。1983年の新卒入社以来、滅私奉公で永守氏に仕えた人物。ただ、今年3月末まで副社長のポジションにありながら、関氏の下での精密小型モーターの業績悪化の責任を取らされてメキシコに左遷された。それでも、日本電産関係者から「外部人材の登用に懲りた永守氏からすると、(永守氏の逆鱗に触れて)降格や減給を何度も経験している古参幹部こそ打たれ強く信頼できる」との見方も出ている。実際に永守氏は、小部氏に次ぐ生え抜き子分の宮部氏について、「愚直だが、こういう人物こそ信用できる」と多くの幹部の前で評したことがあるという。返り咲くチャンスは十分にありそうだ。結果として、5人の副社長の候補は、銀行出身の菱田氏、北尾氏、大塚氏の3人に加え、生え抜きの宮部氏が有力。これに五十嵐氏とタランザーノ氏が絡む構図となる。尤も、これらの候補は、永守氏の言うことに“子分”として忠実に従うことはあっても、いざ経営を任されることになれば、永守氏が満足する評価を得られるかどうかは未知数だ。永守氏は78歳の誕生日を迎えたばかり。2024年4月に選出する次の社長については「社長4年、会長4年で、計8年の任期で回すことにする」との方針で、この体制が軌道に乗ることを見届けて引退する意向という。尤も、この計画通りなら、次の社長が会長の任期を務め上げる2032年には御年87歳に達する。「ダイキン工業の井上礼之会長(※87歳)、信越化学工業の金川千尋会長(※96歳)、著名投資家のウォーレン・バフェット氏(※92歳)だって現役だ。年齢のことをとやかく言われる筋合いはない」と強調する永守氏。このまま眼鏡に適う後継者が見つからなければ、経営の実権を握る時間が長期化するのは間違いない。老いの進行に最も焦っているのが、他ならぬ永守氏自身であろう。


キャプチャ  2022年10月22日号掲載
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Author:George Clooney

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