大型連休直前のスタンドを襲う“在庫不足”…ガソリン高騰の真実、元売り寡占で販売店は青息吐息

20170418 10
「ガソリン高と言われるが、本音はもっと値上げしないと利益が出ない。でも、隣のスタンドとの競争もあるから、利幅を削って耐えている」(関西地方のガソリンスタンド経営者)。中国地方のガソリンスタンド経営者は、更なる価格上昇圧力を口にした。「兎に角、玉(ガソリン)が無い。店を閉める訳にもいかないから、高い値段でも仕入れるしかない」。大型連休を控えた今月上旬、全国の販売店でガソリンが不足し、価格上昇が続いている。資源エネルギー庁が発表した今月3日時点のレギュラーガソリン価格は、全国平均で1リットル当たり133円90銭。これは、1年前と比較すると約20円も高い水準になる。今年に入り、その勢いは増し、3ヵ月で約8円も上がった。通常、ガソリン高の主因は原油価格の上昇とされる。確かに昨年11月、『石油輸出国機構(OPEC)』が8年ぶりの減産を決めた。だが、今回はその通説が当て嵌まらない動きになっている。「原油価格とガソリンの店頭価格は、時間差はあっても連動してきた。だが、今回は上がり幅が広がる一方で、収束する気配がない」(『石油情報センター』幹部)。左のグラフから、その異変ぶりが見て取れる。昨年末から、ガソリン価格が原油価格から大きく乖離して跳ね上がっている。その時、何が起きていたのか。昨年12月、石油業界の歴史に大きな転換点が訪れていた。同19日、公正取引委員会は『JXホールディングス』と『東燃ゼネラル石油』の経営統合を承認。シェア5割超の巨大会社が誕生することが決まった。公取は、『出光興産』による『昭和シェル石油』の株式取得も認め、こちらもシェア合計が約3割となる。「2社でシェアが8割に達する。これを許して、公取と独占禁止法の存在意義はあるのか」。石油業界に詳しい学識者は、そう唸った。“寡占”の巨大石油会社が供給を絞れば、流通段階でガソリンの奪い合いが起きて、価格は高騰する。公取が目を光らせるべき典型的ケースに、石油業界は陥ろうとしている。業界が注視しているのは、安売り店に供給されるガソリン、所謂“業転玉”の動向だ。元売り各社は、工場の稼働率を高める為に、自社系列スタンドへの供給量を超える過剰生産に陥りがちで、余った製品を格安で流通業者に流してきた。それが、系列の看板を掲げない“無印スタンド”で安値販売される。

だが、2大グループへの再編は、こうした無印スタンドの仕入れに大きな影響を及ぼし始めている。「JXが東燃に対して、『業転玉を出すな』と要請していると聞いている」。JX系列店の経営者は、そう打ち明ける。一方、出光の幹部は、「昭シェルが業転玉を流すぐらいなら、うちが買い取って輸出する」と息巻く(※JX・出光共に「そうした事実はない」と否定)。昭和シェルも業転を絞っているとされ、「2月と3月に一時、枠(取扱量)を半減した」(無印スタンド経営者)。2強は業転玉を出さないどころか、スポット市場で買い占める“業転潰し”に乗り出していると指摘される。無印スタンドはガソリン不足が深刻で、他県から遠距離輸送するケースも出ている。2強がいくら否定しても、その動きを数字が物語っている。業転価格の指標とも言われる業者間のガソリン転売価格(※『日本経済新聞』調査)は、昨年12月から10円も値上がりした。ガソリン需給の逼迫を如実に示している。無印スタンドだけではない。大手系列の店舗も、2強の誕生でパワーバランスが大きく歪められている。関西の大手系列スタンド経営者は、「2大グループの価格支配力が強過ぎる」と漏らす。別の系列スタンドの経営者も、「嘗ては業転玉の仕入れや、別系列への鞍替えをちらつかせて交渉できたが、2強になってしまうとそうした戦術も取れなくなる」と嘆く。石油販売大手の『キグナス石油』が2大グループから離れたのも、“寡占化”の影響と囁かれている。今年2月、嘗て東燃系列だった歴史を持つキグナスが、『コスモエネルギーホールディングス』と資本提携に踏み切った。長年続いた東燃からのガソリン供給を自ら断ち切り、再編から漏れたコスモの傘下に飛び込んだ形となった。「東燃の巨大化で、『従来の供給量や価格が維持できない』と判断したのだろう」(業界関係者)。本来、石油再編は、国内に大手元売りが5社も犇く過当競争から脱する為に進められてきた。だが、現実には“強過ぎる2大グループ”のリスクが顕在化している。そして、再編の旗振り役だった経済産業省は、その副作用に恐れを抱き始めた。先月24日、経産省は『ガソリン適正取引慣行ガイドライン』を発表した。そこには、経営統合による建値(卸値)の上昇を抑える意図が込められている。問題事例として、“(元売りが)価格を一方的に決定する”ことや、大手販売店ばかりに赤字補填する“差別的取扱い”といったケースが明記された。問題回避の為、経産省は元売りに対して、価格を市況の実態に合わせることを求めている。また、値引きの基準も明確にするよう言及した。違反した場合には強い態度で臨む。「独占禁止法に違反する疑いのある事実に接した場合には、(公取に)厳正な対処を求めていく」。産業の強化を見据えた再編劇は、その副作用を早くも露呈し始めた。そして、放置すれば消費者をも巻き込む事態に展開しかねない。 (取材・文/本誌 松浦龍夫)


キャプチャ  2017年4月17日号掲載
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