【笑う北朝鮮・崩壊論の嘘】(05) 核・ミサイル開発、対米抑止力の確保まで継続

20170419 06
北朝鮮が核や弾道ミサイル実験を行う度に、国際社会に緊張が走る。国際社会は北朝鮮に対して実験や開発を止めるよう牽制や圧力を加えてきたが、それでも止める気配はない。それどころか、実験の頻度は増し、開発のスピードを加速している。アメリカのドナルド・トランプ大統領は、そんな北朝鮮に対して強硬姿勢を示している。核実験施設やミサイル発射基地への限定空爆といった軍事オプションまで取り沙汰されるようになった。アメリカが軍事行動を取れば、まさに一触即発の事態を招く。有事になれば、金正恩体制が揺らぐどころか、全面戦争の可能性が一気に高まる。そんな危険を冒してまで、何故北朝鮮は開発の手を緩めないのか。「北朝鮮の軍事的脅威に対しては、あらゆる選択肢がある」。トランプ政権の安全保障当局者は、こうした発言を繰り返している。バラク・オバマ前政権は、北朝鮮が核放棄を確約するまでは何もしないという“戦略的忍耐”と呼ぶ方針を取ってきた。これに対し、トランプ政権周辺からは「先制攻撃も辞さない」という言葉が漏れ始めた。ただ、「あらゆる選択肢がある」というメッセージは、アメリカにおいて決して目新しいものではない。少なくとも、ジョージ・W・ブッシュ政権以前から表明してきたものだ。というのも、アメリカが初めから「軍事オプションを除外する」「核の先制使用はしない」等と発言したら、北朝鮮に対する抑止力が半減してしまう為だ。「核を含む軍事オプションを用いるかもしれない」という恐れを相手に抱かせてこそ、あらゆるタイプの攻撃に対する抑止力を維持できる。北朝鮮の核放棄に向けたアメリカの“あらゆる選択肢”には、経済支援という“アメ”をセットにした交渉から、金融制裁や中国の原油供給停止を含むより厳しい経済制裁という“ムチ”をちらつかせながらの交渉、そして核関連施設の破壊を含む軍事的手段まで含まれる。

先月1日から始めた32万人規模の米韓合同軍事演習は、その一環だ。北朝鮮指導部を想定した“斬首作戦”の訓練は、今後も続けるだろう。とはいえ、実際にアメリカが限定空爆といった具体的な軍事行動に踏み切る為の敷居は高い。先ず、同盟国である韓国の反対に遭う。韓国は北朝鮮と同じ民族だ。その北朝鮮をアメリカが攻撃するのを黙って見過ごすことは、いくら同盟国だからといって韓国にはできない。そうした感情を持つのは、革新系の有権者だけでなく、保守系の市民も同じだ。「朝鮮半島で有事の事態が起きれば、米韓合同軍の作戦統制権は在韓アメリカ軍が握る」という取り決めがある。その際、手続き上、作戦統制権を在韓アメリカ軍に委ねるに当たって、韓国政府の了解が必要になる。韓国の世論がアメリカの軍事行動を許さない限り、アメリカ軍の行動は制限されてしまう。仮にアメリカが軍事行動に踏み切った場合、北朝鮮が反撃すれば、韓国も無傷では済まない。ソウルから北朝鮮との国境までの距離は、僅か40㎞。北朝鮮が韓国政府や韓国軍の主要施設を狙って攻撃すれば、撃ち漏らしによってソウル市民数万人が犠牲になる。韓国が同意し、米韓両軍と北朝鮮軍が正面衝突することになれば、数十万人規模の犠牲が出るだろう。アメリカ国防総省は嘗て、ビル・クリントン政権時に、朝鮮平島有事の際の被害について、「戦争開始当初90日間でアメリカ軍兵士5万2000人、韓国軍49万人が死傷する」と予測した。日本も同様の状況に曝される。ソウルには政府関係者やビジネスマン、その家族等、常時数万人の日本人が暮らす。その安全を脅かすような行動を取るのは、容易ではない。朝鮮半島を含め、東アジアの有事の際には当然、在日アメリカ軍も重要な役割を果たす。例えば、北朝鮮が朝鮮戦争の休戦協定に違反する行動を取った場合、7ヵ所の在日アメリカ軍は国連軍が対応する為の中継基地になる協定がある。日本も有事に自動的に巻き込まれる仕組みだ。ということは、有事の際には日本も当然、北朝鮮の弾道ミサイルの標的になる。日本も、アメリカの軍事行動に全面的には賛成し難いだろう。1961年の中朝友好協力相互援助条約を維持する中国も、北朝鮮を見捨てることはできない。中国は公式的に、「北朝鮮の核・ミサイル開発は受け入れられない」と発言してきた。しかし、それ以上に北朝鮮の体制が崩壊することを恐れている。中国にとって北朝鮮は、日米韓等西側諸国との間のバッファー(緩衝地)として不可欠な存在だ。アメリカとの間には、かなりの温度差がある。北朝鮮がアメリカの攻撃に曝されるリスクを高めてまで、核・ミサイル開発を続けることに我々が疑問を持つのは、北朝鮮の狙いを読み違えているのではないか。「北朝鮮が核・ミサイル開発を断念して、アメリカ等国際社会との対話を再開し、経済支援を獲得したり、経済再建に専念したりすれば、北朝鮮にとってメリットが大きい」と考えるのは、我々の見方に過ぎない。しかし、北朝鮮はそう考えていない。北朝鮮の核・ミサイル開発の最大の狙いは、自国の体制存続の為だけではないからだ。北朝鮮の最終目標は、“朝鮮半島の統一を北朝鮮主導で進めること”である。

20170419 05
特に、大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を行っていることを考えると、その攻撃目標は在韓アメリカ軍や在日アメリカ軍に留まらず、アメリカ東部を据えている。単に体制の維持・存続の為だけなら、大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルはいらない。在韓アメリカ軍や在日アメリカ軍を射程に入れさえすれば十分だ。射程1万㎞以上の大陸間弾道ミサイルや、発見に困難を極める潜水艦発射弾道ミサイルを必要とするのは、アメリカの心臓部を攻撃する能力を獲得し、朝鮮半島の“警察官”の役割をアメリカが断念する条件を作り出す為だ。つまり、北朝鮮は統一の為の対米核抑止力の完成を目指しているのである。一般的に核抑止力は、単に核兵器を持っていれば敵国の核攻撃を抑止できるというのではなく、核攻撃された後の“第2撃能力”を持つことで成り立つ。「相手国が先制攻撃しても、報復される可能性があるのなら、先制攻撃するのを止めよう」と考えることを目指しているものだ。その意味で北朝鮮は、アメリカに対する核抑止力を持てるようになり、アメリカが北朝鮮の核兵器を恐れて米朝不可侵協定や米朝平和条約を結ぶ等、朝鮮半島へのアメリカの軍事介入のリスクを取り除いた上で、北朝鮮主導で朝鮮半島統一をなし遂げる目標だ。しかし、アメリカ本土が射程に入るのを、アメリカが黙って見ている筈はない。韓国や日本も、傍観してばかりはいないだろう。文字通り、“あらゆる選択肢”を模索して阻止しようとする筈だ。仮に、アメリカが交渉を主体にした北朝鮮に対する関与政策を展開していったとしても、決して安全とは限らない。この地域が緊張状態にある時には、偶発的に戦争が起き易いからだ。軍事演習や軍事的な挑発行動をしている際に手元が狂ったり、指揮命令系統に乱れが生じたりした時等、偶発的な事故が戦争に発展することはままある。「現在は、1994年10月の米朝枠組み合意で収束した“第1次核危機”以来の危機的状況にある」と認識しておくべきだ。 (『拓殖大学海外事情研究所』特任教授 武貞秀士)


キャプチャ  2017年4月11日号掲載

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