【フランス大統領選・欧州の選択】(中) テロ対策、政府に不満

20170420 04
「13日の金曜日だから気を付けろよ」「わかってるって」――。パリに住む元教師のジャンフランソワ・モンデゲーさん(62)が、2015年11月13日の昼下がり、実家に立ち寄った1人娘のラミアさん(当時30)と交わした最後の言葉だ。父は夕食に誘ったが、「彼氏に会う」と娘は出かけた。小さい頃から美人と評判の自慢の娘はその夜、実家から僅か150mのカフェで凶弾に倒れた。イスラム過激派組織『IS(イスラミックステート)』がカフェや劇場等を襲った同時テロの130人の犠牲者の1人となった。あの日の夜、町に響いた銃声らしき音が、モンデゲーさんの耳から離れない。パリの政治週刊紙『シャルリーエブド』等が銃撃され、17人が死亡した事件(2015年1月)、パリ同時テロ、ニースで86人が犠牲になったトラック突撃(2016年7月)等、無差別殺人の嵐が吹き荒れた。「何故、政府は何も解決できないのか? 娘を思い出し、絶望的になる」とモンデゲーさんは嘆く。内務省が昨年12月に行った“不安に思うこと”の調査で、“テロ”は63%に上り、2014年の13%から2年ほどで約5倍に増えた。「テロ対策に有権者がこれほど敏感な大統領選は2002年以来だろう」。世論調査会社『IFOP』のジェローム・フルケ氏は、今回の大統領選を取り巻く状況を、極右政党『国民戦線(FN)』のマリーヌ・ル・ペン党首(48)の父が決選に勝ち進み、“ルペンショック”と呼ばれた2002年春の選挙に重ねる。

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その前年にニューヨーク等で同時テロが発生し、大統領選の直前にはフランスの地方議会で銃の乱射事件が起こり、テロへの恐怖が社会を覆った。パリの南西約300㎞の葡萄畑が広がる町、ボーモン・アン・ベロン。元会社員のミッシェル・カリエさん(62)は、18世紀の貴族の邸宅を指差し、「政府は出鱈目だ」と憤る。政府は昨年9月、住民への説明も無く、邸宅にイスラム過激思想に染まった若者の更生施設を開 いた。社会を揺るがすテロは、国内で生まれ、社会に馴染めないイスラム教徒の移民2世・3世が引き起こした。施設で若者に集団生活と職業訓練等を積ませ、社会復帰に繋げてテロの芽を摘むことが政府の狙いだ。だが、入所者は“犯罪者”ではなく、管理は中途半端だ。「入所者は外出もでき、うちの庭を通って逃げた。彼らの人権は尊重し、我々の安全は軽視だ」と、カリエさんは、テロを防げない上、住民感情を二の次にする政府に不満を募らせる。今回の大統領選は、パリ同時テロの後から続く非常事態の中で行われる。異例の選挙戦でルペン党首は、「テロの犯人でなくても、過激派と関係する二重国籍者はフランス国籍を取り上げ、国外へ追い出す」と断言。テロリスト“予備軍”さえ容赦しない排除の論理で、国民の不安を掬い取る。それは、テロ対策で迷走し、悲劇の連鎖に歯止めをかけられない政府への不信の裏返しだ。「私はルペン党首を信用しない。でも、彼女に投票したい人の気持ちはわかる」。パリ同時テロで息子(当時39)を亡くしたネリー・マンビエイユさん(62)は、そう言い切った。


⦿読売新聞 2017年4月12日付掲載⦿
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