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【横浜創英校長インタビュー】(上) 教育のゴールは“自律”

学校改革の旗手として知られる工藤勇一さん(※横浜創英中学・高校校長、右下画像、撮影/前田梨里子)に“今、子供達が身につけるべき力とは何か”をテーマにインタビューし、3回に亘って掲載します。初回は、東京都千代田区立麴町中学校で校長当時に宿題や定期テストを廃止し、運動会を変革した狙いを中心にお伝えします。

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勉強は“わからないものをわかるようにすること”が目的であって、“量をこなすこと”が目的ではありません。宿題を出すと、できる子は全部やるんです。でも、できない子はわからないところを飛ばします。それでは成績は上がりません。宿題を出せば出すほど、子供は提出することが目的になる。特に中3になると、内申書に影響するので、本当は理科を勉強したくても、国語の宿題が出ると、それをやってからじゃないと手がつけられない。総じて勉強時間は増えていきます。今、日本の労働生産性の低さが問題になっています。大人になって仕事をしているとわかると思うんですが、やるべき仕事がないのに残業はしませんよね。やるべき時にやることが大事な筈です。でも、学校では「何もやることがなくても、勉強する習慣が大事だ」と教えます。そうすると、言われたことをやり、時間だけ奪われて、学力は何も変わらない子が育ちます。社会に出れば、自分で勉強を続けないといけません。自分にあった学習方法を学校にいる間に身につけてもらうことは大事です。そうした意味からも、一律に課せられる宿題は、寧ろ子供の為になりません。物事を変える時には、必ず批判が出ます。宿題を廃止した時、中3だけは喜びました。受験勉強ができるからです。でも、中1の親は「勉強しなくなりませんか?」と不安がりました。私は、「宿題はわからないところをやるもの。わかるものとわからないものを切り分けて、わからないところを勉強する子は成績が伸びる。それを自分で学ぶことが大切なのです」と説明しました。同時に中間・期末テストを廃止し、単元テストに変えました。単元テストは再チャレンジできるようにしました。但し、2回目を受けたら、1回目の点数は取り消されます。

そうすると、子供達は絶対に2回目の点数を上げたいと思うので、1回目のテストで間違えたところを勉強します。わからなかったところをわかるようにする為、友達に聞いたり、先生に質問したりするようになりました。皆、成績が上がったんです。多くの学校では、運動会の目標に“団結”を掲げます。ですが、特性がある子も含めて、全ての子供達に強制すべきものなのか? 私はずっと疑問に思ってきました。クラス対抗で勝ち負けを競う為、ミスをすれば責められたり、負けたクラスは無力感に覆われたりします。でも、民主的に考えれば、競争したい人は競争すればいいし、競争したくない人は競争しなくていい筈です。それを全員に強制するのはおかしい。先ず、名称を体育祭に変えました。「“祭り”だからね、君達に全部あげる」。そう伝えて、種目や運営等は生徒に全てを委ねました。但し、“生徒全員を楽しませる”という目標だけ与えました。練習が嫌になって明日から来たくないという子を無くしてほしかったのです。生徒たちは、種目をちょっとずつ変えていきました。4年目でクラス対抗をなくした時は、全校生徒にアンケートをとっていました。運動が好きか嫌いかを聞き、其々が半数ずつになるよう2つのチームに分けて、東西対抗にしました。競争したい生徒には練習ができるような種目を作り、その日だけ楽しみたい生徒には笑えるような種目を作って、其々にエントリーできる方法にしました。よくやったなと思いました。それでも生徒達は、『東西対抗の全員リレーをやりたい』と言いました。それもアンケートをとり、結果は『全員リレーをやりたい』が8割、『反対』が1割、『どちらでもいい』が1割でした。普通なら多数決で決めるのでしょうが、少数派の意見を取り入れながら、上位目標である“生徒全員を楽しませること”を達成する為、どうしたらいいか、話し合いを続けました。その結果、『全員が楽しむことが目標だから、反対が1割いるなら全員リレーはできない』と、希望者のみが出場するリレーを代替案として出しました。教育は、自律した子供を育てることがゴールです。でも、いつの間にかそれを忘れて、自律していなくても、成績が良くて、スポーツもできたほうがいいと、矢鱈手をかけるようになった。“豊かな人間性を身につける為に”と、色々な体験活動もさせる。子供がやらされる時間が長くなっています。人口が増え続けていた時代は、物がどんどん売れますから、誰かが成功したビジネスモデルを真似すればよかった。一度会社に入れば定年まで雇ってもらえましたから、上が決めたことに従うだけの従順な人間でも豊かになれた。でも、今は人口が減少に転じ、作っても作っても物が売れない時代です。誰かが成功した仕事を真似すれば、安売り競争になり、賃金は上がらず、労働環境も悪化する。そんな時代には、誰もやらない仕事に目を付ける人間が必要です。新たな価値を生み出していく人がいないと、世の中が回りません。


キャプチャ  2022年12月6日付掲載
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テーマ : 教育問題について考える
ジャンル : 学校・教育

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Author:George Clooney

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