【横浜創英校長インタビュー】(下) “最上位目標は何か”に立ち返る

子供達に民主主義を教えるには、教員が民主主義を理解することから始めなければいけません。今までやってきたことって、民主主義じゃなかった。この矛盾に気がつくことからです。例えば、多数決。教員は全員やっているのではないでしょうか? 文化祭で、A案とB案が“8対2”で分かれた時、ほぼ間違いなく多数決でA案が採用される。それで、教員は「皆で決めたんだから、守ろうね」と平気で言っています。でもそれって、マイノリティー(※少数派)を切り捨てろと教えているのと同じです。では、多数決を使わずに、どうやって合意するか。例えば、文化祭の出し物を決める時、ダンス派8割、劇派2割と分かれたとします。少数派を切り捨ててはいけないと普段から教えていれば、誰の不利益にもならない方法を見つけるまで対話します。「ミュージカル風の劇ってどうだろう?」というアイデアが出れば、皆がやりたいことができて楽しめますよね。子供が対話する時、大人のフォローは大切です。好き勝手に意見を言ったり、感情的になったりしないようにするコツがあるのです。それは、“誰一人置き去りにしないこと”を明確にした最上位目標を決めること。麴町中学校(※東京都千代田区)の文化祭であれば、“生徒全員で観客全員を楽しませる”でした。
対話をしている時に様々な意見が出ますが、「これって何の為にやるんだっけ?」と最上位目標に立ち返って、答えを見つけようとする経験を繰り返すことが大事です。学校運営や行事、校則等のルール作りの権限を子供達に委ねていけば、自然とそうした経験ができます。自分達の学校をどう改善するか、その仕組みをどうするか。より直接的に、自分事として課題に取り組めます。全国で校則を変える動きがありますが、多数決に走ってしまっては意味がありません。生徒総会で多数決を取り、「8割が賛成なので、来年から黒靴下も許されました」となったと言われても、そこには反対者が2割いるわけです。結局、先生達と同じことを生徒達がやっている。民主的な考え方じゃありません。恐らく10年かからず、日本の学校は必ず変わると思います。今のままの教育を続けていたら、日本はもっと酷くなります。物を考えず、文句ばかり言う社会が続けば、教育が変わらなきゃいけないことが誰でもわかる時代が来ます。私は麴町中学校の校長をやっていた時から、1校だけじゃなく、本気で多くの学校を変えようと思っていました。横浜創英でも、全国に広められるモデルを作ろうとしています。一言で言えば、本当に子供主体の学校に変えていく。子供がカリキュラムを選べ、クラスも学年も超えて学び合える。学校運営も委譲し、生徒へのサービス提供をどうすればいいかを自分達で考える。そうなると、高校生なら学校の中に会社を起こすかもしれない。目指しているのは、日本の画一的な教育制度をぶっ壊すこと。それには前例がいるんです。それを今、現場でやっているのです。でも、基本的に僕がやるというよりは、教員の意識が変わって、子供達と一緒にやっていく。与えられたものじゃだめなんですよ。ゆっくり、時間がかかっても、自分達が当事者となって、少しずつ変えていく。それをやらなきゃいけないのです。 (撮影/前田梨里子)
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(デジタル報道センター)大沢瑞季が担当しました。

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