【劇場漫才師の流儀】(256) ytv漫才新人賞、今年は誰の手に?
今年の『ytv漫才新人賞』(※読売テレビ)も、ROUND3が開催され、いよいよ決定戦進出者が出揃いました。『M-1グランプリ』(※ABCテレビ・テレビ朝日系)の前哨戦とも呼ばれる大会で、僕が審査員長を務めています。関西ローカルですが、3月19日に生放送されます。今は『TVer』とかでも視聴できるので、是非ご覧になってみて下さい。ROUND3で1位通過を果たした『豪快キャプテン』は面白かったですね。たばこが好きだという相方に「1000万円とたばこ1000万本、どっちがええ?」と尋ねるところから始まるネタで、とてもわかり易く、後半も盛り上がってね。やっぱり漫才は、見る人に考えさせたらあかんと思いました。ちょっとでも聞き逃したらついていけなくなるネタや、「どういう意味やろ?」って思わせるネタはだめ。今回、惜しくも決定戦進出を逃した『20世紀』のボケ担当、木本悠斗君は芝居が上手でね。「何年芝居やっとったん?」というぐらい、いつも感心させられます。ネタがもう少しわかり易く作れたら勝てますね。この前、楽屋ロビーで『令和ロマン』とも“わかり易いネタ”の話をしました。去年のM-1の敗者復活戦で2位だったコンビです。「上手いし面白いんやけど、ネタがちょっと難しいかも」って話をしたら、彼らもわかっていました。「そうなんです」って。お笑いってベタでいいんですよ。ベタ過ぎるのは感心しませんが、お爺ちゃんとお婆ちゃんでもわかるようなネタの、少し上くらいでいい。彼らもそう作れたら、まだまだ面白くなるやろな。
今回2位で決定戦進出を決めた『天才ピアニスト』も、その点わかり易かった。去年の『THE W』(※日本テレビ系)でも優勝したし、彼女達は乗りに乗っていますね。キラキラしているもん。同じく女性コンビの『爛々』も面白かったけど、今回は9位でした。やっぱりネタなんかなぁ。背が高いほうの萌々ちゃんは、聞くところによると僕のことが怖いんやって。僕は好きなんやけどな。『YouTube』ですっぴんから化粧していく動画とかも偶に見るし。今度、飲みにでも誘ってみようかな(笑)。今回10位だった『もも』も、ネタでちょっと苦労しているようでした。2021年のM-1ファイナリストで、「お前、○○顔やろ!」とやり合うネタでブレイクしました。ただ、翌年のM-1は同じスタイルで3回戦敗退。それでか、今回は形をがらりと変えてきていました。でも、どうなんかな。同じスタイルでもボキャブラリー次第で、もっと面白くなる気もするんですけどね。そういえばこの前、劇場出番が『フットボールアワー』とずっと一緒だったんですけど、やっぱり面白くてね。恐らく、ネタを字に起こしていないと思うんですよ。言葉が自然で生きていて、アドリブ感がある。一方、ももの喋りは未だちょっと余裕がない気がします。勿論、漫才の形も大事ですが、自然な喋りを身につけることのほうが大事な気がします。めちゃめちゃ難しいことなんやけどね。 (聞き手・構成/ノンフィクションライター 中村計)
オール巨人(おーる・きょじん) 漫才コンビ『オール阪神・巨人』のボケ担当。1951年、大阪府生まれ。大阪商業高校卒業後、1974年7月に『吉本新喜劇』の岡八朗に弟子入り。翌1975年4月に素人演芸番組の常連だったオール阪神とコンビを結成。正統派漫才師として不動の地位を保つ。著書に『師弟 吉本新喜劇・岡八朗師匠と歩んだ31年』・『さいなら!C型肝炎 漫才師として舞台に立ちながら、治療に挑んだ500日の記録』(ワニブックス)。近著に『漫才論 僕が出会った素晴らしき芸人たち』(ヨシモトブックス)。
2023年3月27日号掲載
今回2位で決定戦進出を決めた『天才ピアニスト』も、その点わかり易かった。去年の『THE W』(※日本テレビ系)でも優勝したし、彼女達は乗りに乗っていますね。キラキラしているもん。同じく女性コンビの『爛々』も面白かったけど、今回は9位でした。やっぱりネタなんかなぁ。背が高いほうの萌々ちゃんは、聞くところによると僕のことが怖いんやって。僕は好きなんやけどな。『YouTube』ですっぴんから化粧していく動画とかも偶に見るし。今度、飲みにでも誘ってみようかな(笑)。今回10位だった『もも』も、ネタでちょっと苦労しているようでした。2021年のM-1ファイナリストで、「お前、○○顔やろ!」とやり合うネタでブレイクしました。ただ、翌年のM-1は同じスタイルで3回戦敗退。それでか、今回は形をがらりと変えてきていました。でも、どうなんかな。同じスタイルでもボキャブラリー次第で、もっと面白くなる気もするんですけどね。そういえばこの前、劇場出番が『フットボールアワー』とずっと一緒だったんですけど、やっぱり面白くてね。恐らく、ネタを字に起こしていないと思うんですよ。言葉が自然で生きていて、アドリブ感がある。一方、ももの喋りは未だちょっと余裕がない気がします。勿論、漫才の形も大事ですが、自然な喋りを身につけることのほうが大事な気がします。めちゃめちゃ難しいことなんやけどね。 (聞き手・構成/ノンフィクションライター 中村計)
オール巨人(おーる・きょじん) 漫才コンビ『オール阪神・巨人』のボケ担当。1951年、大阪府生まれ。大阪商業高校卒業後、1974年7月に『吉本新喜劇』の岡八朗に弟子入り。翌1975年4月に素人演芸番組の常連だったオール阪神とコンビを結成。正統派漫才師として不動の地位を保つ。著書に『師弟 吉本新喜劇・岡八朗師匠と歩んだ31年』・『さいなら!C型肝炎 漫才師として舞台に立ちながら、治療に挑んだ500日の記録』(ワニブックス)。近著に『漫才論 僕が出会った素晴らしき芸人たち』(ヨシモトブックス)。

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