【“地震予知”という名のニセ科学】(03) 「地震学者は理学脳。地震予知が無理と思っても不可能とは言えない」――黒沢大陸氏(朝日新聞オピニオン編集部次長)インタビュー

いつからか、彼ら地震学者は“予知”という言葉を捨てた。名を捨てて身を守る――。しかし、“不可能”とは言わない。地震学者を長年取材してきた黒沢氏が、地震学者について語った。 (聞き手・構成/フリージャーナリスト 村上和巳)

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――地震学者を長期に亘って取材し、彼らの姿を描いたドキュメント『“地震予知”の幻想』(新潮社)を出版されました。まだまだ馴染みの薄い地震学者について、お話を聞かせて下さい。
「一言に地震を研究する学者と言っても、地球物理学者・地質学者・地形学者がいます。地球物理学者は、地震計で観測された地震波の解析等から、地震の震源や規模、起きる仕組みを解明する研究者で、狭義の地震学者と言える人たちです。一方、地質学者や地形学者は、野外調査・ボーリング・地形観察等から、地層・地形がどのように構成されたかを調べ、その過程で発見した過去の地震の痕跡等を研究しています。地球物理学者はデータをコンピューターで解析しており、フィールドを歩き回る地質学者・地形学者とは研究手法が異なります」

――そうした理学系の研究者に加え、工学系の研究者もいます。
「土木や建築の研究者は、構造物の耐震性や地震の研究をしており、広い意味では地震学者とも言えるでしょう。しかし、両者の考え方には大きな違いがあります。理学系の地震学者は、1000年に1度しか起こり得ない地震でも、最大規模でどれだけの地震が起こる可能性があるのかを考えます。他方、工学系の研究者は、あくまで人が生活する時空間で物を作ることが前提ですから、その為に備えるべき地震の大きさを決め、何が必要かに重点を置きます。真理の研究か、ものづくりか、目的が異なる為、話が噛み合わず、『宗教が違う』と話す学者もいます」

――地震学者は、予知についてどのように考えているのでしょう?
「『遠い将来は、地震予知は可能かもしれない』と考えているようですが、多くの地震学者は『現状や近い将来で、地震の直前予知は極めて因難』という認識を持っています。日本地震学会会長も務めた学者が以前、『次の南海トラフ地震の予知は無理だろう。次の次だったら少しは可能性があるかもしれない。次の次の次だったらもっと可能性があるかもしれない』と話していました。近代的な地震観測が始まって100年ほど。百数十年毎に起きるような地震を予知するには、データがまだまだ足りないのです。ただ、“極めて困難”であっても“不可能”とは言いません。真理を探究する理学の研究者として、『科学的に100%不可能と証明できなければ可能性はある』という考え方に立脚しているからだと思います。これが、最近目立ってきた“地震を予知する”と称する商売につけ込む隙を与えていると思います」

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――しかし、阪神淡路大震災や東日本大震災において、地震予知が大きく非難されました。地震学者の考え方は変わってきているのでしょうか?
「同じ質問を3~4年前に受ければ『変わった』と答えたと思いますが、今の時点では『嘗ての状況に戻りつつある』と言わざるを得ないでしょう。東日本大震災で、『これまでの理論が崩れた』とショックを受けていた地震学者たちも、立ち直っています。その理論は、阪神淡路大震災以降、地震学の世界で最大の成果と呼ばれた“アスペリティー”という考え方です」

――プレート境界では、滑り易い部分から徐々に歪みが解放され、最後に残った密着部分が滑る時に地震が起きる。つまり、地震が起こる場所も規模もほぼ毎回同じという考え方ですね。
「しかし、広域な震源域で地震が発生した東日本大震災は、この考えを超えていました。直後、『理論が間違っていたのでは?』と考えた地震学者たちは、『アスペリティーの考え方が間違っていたのではなく、東日本大震災のような広域な震源域を持つビックアスペリティーがあったのだ』と考え直したのです」

――つまり、「今までの理論が間違っていたのではなく、今までの理論が完成していない不十分なものであった」と。
「そこで、地震についての理解を深める為、『今まで手薄だった海域の観測点を増やさなければならない』という主張が主流を占めるようになりました。結局、その観測網を整備する為に100億円単位の予算を使う形になっています。よく言えば、学者の真理探究心として『海の地下で起きていることを知りたい』となるのでしょうが、悪く言えば研究者として論文を書く為に多くの予算を使っていることになります。阪神淡路大震災後もそうでしたが、地震を観測し研究する予算は、震災が起きる度に焼け太りしてきたのです。また、過去に『予知に繋がる』と言ってきた地震学者は、最近は新たな地震研究を開始する際に『防災や減災に役立つ』と強調するようになっていることも見逃せません。防災や減災は誰も反対できませんし、費用当たりの効果も検証が困難です。更に問題だと思うのは、“役立つ”ことを示そうと、学問的に確立していない理論を防災に反映させようとすることです。嘗て、“東海地震は予知できる”として作られた防災対策の矛盾が限界に達して、見直しが始まりましたが、背伸びをして生煮えの研究を政策に持ち込めば、将来の世代に迷惑をかけ、人命にも関わりかねません」

――目的は地震被害の最小化、もっと言えば地震の直前予知で、その手段として調査がある筈なのに、目的と手段が逆になっているということですね。
「ただ、地震研究が抱える不幸な側面もあります。例えば、JAXAが打ち上げた小惑星探査機。こう言うと失礼ですが、宇宙の一端を知ることができるとはいえ、一般の人の生活に直接役立つことはありません。それでも、約300億円の総開発費に反対する声は聞かれません。一方、地震研究に関してはざっと年間200億程度の国費が投じられていますが、『地球内部を知りたい』という地震学者の純粋な探究の為となると、同様の賛同は得られないでしょう。研究対象が災害に関係する以上、“役立つ”ことが求められてしまいます」

――地震研究そのものに、変化の兆しはあるのでしょうか?
「阪神淡路大震災後は『内陸活断層の調査が必要だ』と言い、先に述べたように、東日本大震災後は海底観測を充実させ、その時々の状況に応じて再構築を図っています。また東日本大震災後は、地球物理学系の地震学者中心の研究から、地質学や地形学、更には古文書から過去の地震の痕跡を読み解く歴史地震学の研究者等、他領域の学者との連携による研究も重視されてきました。これ自体は、新しい、良い流れだと思います。ただ、その内実を見ると、其々の分野で従来の延長線上の研究をし、計画書と報告書だけ纏めて、ホッチキス留めしているだけの印象を受けます。ある研究者は、私にこう零しました。『東日本大震災で信頼を失った地震学者が、国の予算を獲得して従来の研究を続ける為の辻褄合わせとして、他分野と表面上連携しているように見せているに過ぎない』と」


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