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【堀江宏樹の「セックスで読み解く日本史」】(07) 江戸時代の“極上名器”の条件とは!?

江戸後期にあたる文政期(※1818~1830年)には多くの艶本が発行され、話題を呼んだことが知られています。例えば、この時期に“おまんこ”という単語が歴史上、初めて活字化されたことも有名ですね。但し、当時の“おまんこ”は可愛らしい幼児語だそうで、現代日本で“おまんこ”に相当する単語は“ぼぼ”でした。当時の書籍を見てみると、“玉門”と書いて“ぼぼ”と読ませていたようです。江戸時代では“ぼぼ”より“おまんこ”というのが女性器の丁寧な呼び方だったとか…。この頃の艶本は、現代のエロ本に相当すると考えられがちですが、実際は有名絵師が挿絵を描いていたり、内容にも妙に深遠な広がりがあって、エロ本等と訳すと怒られそうな代物です。文政8(1825)年に刊行され、有名絵師・渓斎英泉も参加した『和合淫質録』という艶本には、“極上の玉門”についての記述があります。名器の条件のひとつは“上付き”であること。極論すれば、臍側に女性器があるのがベストで、肛門に近い“下付き”ではだめでした。「上付きは欧米人に多く、下付きはアジア人に多い」(著・土屋英明『中国の性愛術』)そうですが…。しかし、直ぐには理解できないような奇妙な名器の条件が他に挙げられているのは見逃せません。“極上の玉門”の内部には“玉英”と呼ばれる玉があるそうで、現代人には馴染みのない発想ですが、江戸時代後期にはかなり一般的だったことには驚かされます。この“おまんこ玉”については、かなり多くの艶本で触れられているのです。『房内戯草』という本では、上品(≒あげまん)の女の女性器内部には3つの玉があり、其々“せん玉・ほう玉・ひょう玉”という名前が付いていると定義しています。

内部に玉が多い女性器は性交中に愛液の分泌が多く、男には快感なのだとか。それどころか、男を健康にし、寿命を伸ばす薬のような存在とさえ書かれていますね。逆に下品の女だと、内部の玉が少なく、しかも良くない場所に付いている為、セックスをしても男は快感が薄く、“260年”分の寿命まで吸い取られるのだとか。現代的に玉を解釈するなら“子宮膣部の頸管部”を指すという説もありますが(※著・渡辺信一郎『江戸の閨房術』)、実際はもっとシンプルで、“ミミズ千匹”や“数の子天井”等のイメージに近いのではないかと筆者には思われてなりません。さて、幸運にも玉だらけの上品おまんこの持ち主と巡り会えたのなら、セックスするだけではもったいないという発想が当時にはありました。女性が絶頂に達した時に分泌されるバルトリン腺液――江戸時代の言葉でいう精液を得る為のお作法がありました。洗浄した女性器の割れ目に指を入れ、ひたすら手マンした後に、揉んで柔らかくした紙の栓を差し込む。次いで女性器の外陰部を100回、内陰部を75回、外尿道口も75回舐めまくって、先程の紙を引き抜き、舌を割れ目の奥まで突っ込んで、出てきた液を飲み干すと、どんな消耗状態からも復活できるのだとか。これは、葛飾北斎が挿絵を描いた『陰陽淫蕩の巻』という艶本で紹介されている秘術ですが、抑も体力・気力がなければ、こんな呪術めいたプレイは出来ないし、同書では呪文の歌を歌いながら作った茹で卵でも代用できるとあるので、病人にはそちらをおすすめしたいです。語られる内容はお下品でも、上品や下品という仏教用語を女性器の状態を語る為に当てはめた事は、即ち江戸時代でも女性器に神秘的な価値があったということでしょう。江戸期の艶本の奥深さには目眩がする思いです。


堀江宏樹(ほりえ・ひろき) 作家・歴史エッセイスト。1977年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒。日本・世界を問わず、歴史の面白さを拾い上げる作風で幅広いファン層を持つ。著書に『乙女の日本史』シリーズ(KADOKAWA)・『眠れなくなるほど怖い世界史』『愛と欲望の世界史』『本当は怖い日本史』(三笠書房)・『偉人の年収』(イーストプレス)等。


キャプチャ  2023年2・3月号掲載
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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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