fc2ブログ

【習近平3期目のリアル】(06) 農村人口減、高まる輸入依存

20230323 04
中国の習近平指導部にとって、“食の安全保障”が大きな課題となっている。国土は広いものの、農村人口の減少や国内需要の増加等を背景に近年、輸入への依存が強まっている為だ。更に、ロシアによるウクライナ侵攻やアメリカとの対立激化等、懸念材料が重なる。習指導部は自給体制の構築を急いでいるが、舵取りを誤れば14億人の国民生活を脅かしかねない。中国内陸部、湖南省の省都・長沙市郊外。野菜の種の開発・販売会社『湖南湘研種業』の敷地内にある約20万㎡の畑では、トウガラシやスイカ等の栽培実験が行われていた。経営トップの何久春董事長(※右画像)は、「毎年100以上の新品種を市場に投入している。主力のトウガラシは6000種類ほど研究しているが、商品化しているのは納得できる5~6種類だけだ」と品質に自信を見せた。習氏は2020年9月に湖南省を訪問した際、地元幹部に対し「食糧安全保障の重責を担うべきだ」と指示した。これを受けて、同省農業農村庁トップの袁延文氏は「種子産業の革新を全力で促進したい」と表明。湖南湘研種業の親会社で中国最大の種子会社『隆平高科集団』と地元政府が今年6月、“種子のシリコンバレー”戦略に調印した。穀物や野菜等様々な種子企業を集積させ、研究開発や生産体制を強化する戦略で、湖南湘研種業はその中核を担う。習氏は今年4月、「我が国が種子を自らの手にしっかりと握ってこそ、食糧安保を実現できる」とも強調している。中国が種子の開発に注力するのは、多くの野菜の種を海外産に頼っている為だ。中国の農産物を巡っては、日本で育成された高級ブドウ『シャインマスカット』等が勝手に持ち出され、中国国内で栽培が急速に拡大していることが問題視されている。ただ、こうした無断栽培が通用するのは苗木が中心の果物に限られる。多くの穀物や野菜の栽培では近年、人工交配された種子が主流となっている。だが人工交配の場合、同じ品質の種子は一代限りしか収穫できない。種子を毎年購入する必要があり、中国ではニンジンやホウレンソウ、タマネギ等多くの野菜の種子は海外産が9割を超えている。

特にブロッコリーの種の自給率は5%程度で、多くは日本からの輸入に依存する。中国メディアは、「若し日本が輸出を停止したら、中国のブロッコリーは消滅(の危機)に直面するだろう」との懸念を報じている。今年3月には改正種子法を施行し、種子の知的財産保護の規定強化や、これに違反した場合の罰金の引き上げも盛り込んだ。種子の国内開発が不十分だった背景には、シャインマスカット問題のように「農産物の知財保護に対する農家の認識の低さがあった」(日中外交筋)とみられるだけに、制度面でも改善に乗り出している。中国が危機感を抱くのは野菜だけでなく、主食の分野にも及んでいる。米、小麦、トウモロコシ、大豆、芋類の昨年の合計輸入量は、前年比18%増の1億6454万トンと過去最高を更新した。国内生産量も6億8285万トンと過去最高だったが、伸びは2%にとどまり、輸入依存が拡大した。中国の食料自給率は2000年頃は100%近いとされていたが、年々低下しており、大豆に至っては15%程度だ。中国メディアによると、中国経済の司令塔である国家発展改革委員会の元副主任、杜鷹氏は今年1月、食料自給率について「低下の速度は(自給率が3~4割前後の)日本や韓国、台湾より早い。我が国のカロリーベースの自給率は2035年に65%と、1960年代の日本並みの水準まで落ち込む可能性がある」と指摘した。輸入元にも大きな不安を抱える。トウモロコシは激しい対立が長期化するアメリカに全体の7割近くを依存し、残りの多くはロシアの侵攻を受けるウクライナ産だ。小麦も、アメリカや、近年関係が悪化するオーストラリア産等に輸入の多くを頼っている。中国政府内からは、「輸入元の多様化を進めて問題解決を図るべきだ」との考えが出ている。だが、米欧等との対立が深まり、ウクライナ危機も長期化する中で、習氏は自給体制の強化を重視しており、「国際市場に依存した解決を追求してはならない」と強調。「中国人の茶碗は、主に中国産の穀物で満たされるべきだ」と発破をかけている。ただ、中国では都市部への人口流入に伴って農村人口が急激に減少している。中国政府の統計によると、農村人口は2000年までは8億人を超えていたが、2021年には5億人を割り込んだ。収穫量の大幅な増加には限界があり、品種改良等に頼る他ない。例えば、中国のトウモロコシは現在、「単位当たりの収穫量はアメリカ産の6割程度」(中国農業農村省幹部)といい、海外勢との差は大きい。中国の農業生産に詳しいある専門家は、「(中国政府は)効率良く収穫量を上げる為、遺伝子組み換えやゲノム編集技術を積極的に活用するかもしれない」と指摘する。習氏は2020年8月、突如として食べ残し撲滅運動を始め、「食料の浪費を断固阻止せよ」と訴えた。食糧安保対策の一環だったが、今では既に下火となっており、政策の揺れには焦りも滲む。自給体制の強化に特効薬はない。食糧安保は、来月16日に始まる秋の共産党大会で異例の3期目を目指す習氏の視界を曇らせる要因の一つとなっている。 (取材・文・撮影/中国総局 小倉祥徳)


キャプチャ  2022年9月14日付掲載
スポンサーサイト



テーマ : 中朝韓ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接