【崩壊する物流業界】(08) 次は3つの“実店舗”…凄みを増す『Amazon.com』の成長戦略

20170424 09
今年1月末の17時、筆者はサンフランシスコ発の『ヴァージンエア』でシアトルに到着した。シアトルは『Amazon.com』の本拠地だ。暗闇の中、“amazon”の大きなロゴマークが光る物流センターをレンタカーで横切り、本社に近い中心街のホテルにチェックインした。昨年9月、筆者は『アマゾンと物流大戦争』(NHK出版新書)を執筆したが、その時から更に違う姿に変化してきており、最新の状況を確かめる為に渡米したのだ。売り上げの拡大が続くAmazon(右画像)だが、シアトルでは同社の成長を担う戦略を見ることができる。それが3つの“実店舗”だ。先ずは、一番見たかった場所を訪れた。1つ目の実店舗である『アマゾングローサリーピックアップ』、所謂食料雑貨の受け取り拠点だ。この業態は、Amazonの従業員を含めて殆どの人が知 らないだろう。それもその筈、未だ開業していないのである。ここを見たかった理由は1つ。Amazonにとって、インターネット小売業と実店舗を持つ小売業の壁が完全に消えるマイルストーンになることだ。インターネット通販と実店舗の違いは何か。それは、商品を保管するストックポイントの位置だ。現状のインターネット通販のストックポイントは物流センターであり、注文を受けると社員が商品を取って顧客に届ける。リアルの小売業はストックポイントが店舗であり、顧客自身が商品を取る。つまり、「ストックポイントに誰が取りに行くのか?」という違いしかない。そう考えると、よくある小売り全体に占めるインターネット通販の割合を語ることは無意味だ。これまでは、百貨店や総合スーパーマーケット等、実店舗で営業する小売業がインターネットの領域に参入し、社員がピックするストックポイントを広げてきた。Amazonがやろうとしているのはその逆で、インターネット小売業者がストックポイントとして実店舗を持つということだ。その大きな一歩がグローサリーピックアップなのである。では一体、どんな店舗なのか? 一部報道ではドライブスルー型店舗と伝えられたが、実際はドライブスルーではない。乗用車9台分の駐車場があり、車を降りて商品を受ける場所が設けられている。274坪の施設の内、受取場所は小さく、9割以上は倉庫だ。受取場所の反対側には、大型トレーラーを乗りつけられるバースが用意されていた。Amazonのインターネットスーパーである『アマゾンフレッシュ』で注文された生鮮食品が物流センターから運ばれ、顧客が引き取りに来る場所と考えられなくもないが、それにしては倉庫部分が大き過ぎる。一部の商品が常時保管されるストックポイントとしての役割を持つことになるのは間違いない。尚、現地で見たアマゾンフレッシュも進化していた。配送用バッグの素材や中の断熱材は、品質が良くなっている。

20170424 11
以前は縁の専用車で運ばれていたが、今はAmazonの委託先が雇った配達員の自家用車だ。フレッシュで注文した商品をグローサリーピックアップで受け取るサービスも始めるようになるだろう。2つ目の実店舗は『アマゾンゴー』(左画像)。これはレジの無いコンビニだ。スマートフォンに専用アプリをダウンロードしておくと、店内で手に取った商品が自動的にアプリの買い物かごに入り、そのまま店を出るとAmazonのアカウントで決済される。これも未だ一般に公開されていない。知らないふりをして入ろうとする人を見たが、店員に即座に制止されていた。写真付きIDカードを入り口でチェックする為、従業員しか入ることができない。ただ、昼と夜の定点観測を行うことで、この業態の凄さを十分に理解できた。昼のランチ時間は、日本の通勤ラッシュ時の改札のように人が大量に店に入って行き、商品を持って出てくる。レジがあれば大行列になっているに違いない。“No Lines. No Checkout. JUST WALK OUT SHOPPING”というポスターが張ってある通り、列もレジも無く歩いて出ていくだけなのだ。「この業態の店が全米にできる」と言う人もいるが、「それはない」というのが筆者の意見だ。「Amazonは、この仕組みを他社に提供し、手数料を得るビジネスをする」と見ている。既に『アマゾンログイン&ペイメント』というサービスをインターネット上で展開しており、このサービスを使えば、Amazonに出店していない店舗でも、Amazonに登録されたクレジットカード等のデータを使って決済できる。アマゾンゴーの仕組みが全米の小売業で使われるようになれば、決済サービスでも圧倒的な力を持つことになる。3つ目の実店舗は『アマゾンブックス』、文字通り書店だ。現在はシアトル、サンディエゴ、ポートランドにあり、シカゴ、ボストン近郊、ニューヨーク、ニュージャージー、サンフランシスコ郊外にも出店を予定している。入店して直ぐに感じたのは、本を売る店ではなく、プライム会員を増やす為の拠点だということだ。本のショーカードにはレビューは書かれているが、値段が書かれておらず、値段はキオスク端末でチェックしなければならない。すると、「プライム会員になればこの値段になるよ。安いよ」と訴えるような表示が出てくる。更に、書籍以外にキンドル等の端末が置いてあり、店員の殆どは端末の近くにいて、顧客への説明に時間を割いていた。3つの実店舗は、同じような戦略に見えて、目的は全く違う。Amazonは競合を研究せず、顧客中心主義でイノベーションを起こしている会社だ。顧客のことだけを一生懸命に考える文化が浸透しているからこそ、この3つの業態が出てきた。Amazonから見れば“アマゾン脅威論”は心外ということになるのだが、今後も常識を超えた、他社の脅威となるサービスを生み出すだろう。 (『イーロジット』代表取締役兼チーフコンサルタント 角井亮一)


キャプチャ  2017年3月4日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 経済・社会
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

搜索
RSS链接
链接
QR码
QR