【Global Economy】(33) “合法白タク”急増、黄信号…安全確保へ各国規制

自家用車で客を送迎する新たな“タクシー”事業が海外で広がっている。だが、トラブルも多い。市場が急拡大するアジア諸国は、規制の強化に乗り出した。 (本紙広州支局長 幸内康・バンコク支局 杉目真吾・ジャカルタ支局 一言剛之)

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このタクシービジネスは“ライドシェア”と呼ばれる。2010年頃からアメリカで本格的に始まり、アジアやヨーロッパでも普及しつつある。今月13日、広東省広州市で、中国最大のライドシェア企業『滴滴出行』の車を利用した。手続きはスマートフォンで行う。先ず、自分のスマホに滴滴出行のアプリをインストール。氏名と携帯電話の番号を入力する。料金の支払い方法を、日本のデビットカードに似た決済機能を持つアプリ『微信』やクレジットカードから選ぶ。スマホの画面に、自分がいる場所の周辺の地図が表示された。行き先の住所を入力すると、近くにいる車のドライバーの氏名・車種・ナンバー・凡その料金が示された。車と自分の距離は“700m”と表示。こちらに到着するまでの予想時間も出た。運転手の“評価”欄には、5点満点で“4.8”とあった。利用者による採点の平均値だ。発注ボタンを押す。約2分後、40代の男性が運転する車が来た。目的地に到着すると、スマホに“走行距離12.9㎞、走行時間41分、料金48.7元(約770円)”と表示された。承認ボタンを押して支払い手続きは完了。領収書がいる場合は、メールか郵便で送ってもらえる。星印5つによる運転手の評価もできる。料金は既存のタクシーとほぼ同額だった。運転手によると、手取り収入は1ヵ月に8000元(約12万8000円)程度だという。広州のタクシー運転手の月給は5000~6000元とされるので、金銭的な条件は悪くなさそうだ。中国では2014年頃からライドシェアが広がった。民間調査会社の推計では、昨年の中国のライドシェア利用者は3億6200万人。3年で11倍超に増えた。滴滴出行だけで、運転手が昨年末時点で約1750万人もいる。

中国では都市の人口が増えたものの、「当局が既存のタクシー会社の権益を守る為、タクシーの新規参入をあまり認めず、タクシー台数が大きく変化していない」(上海交通大学の黄砂卿副教授)ことも、ライドシェアの増加に繋がった。東南アジアでも、ライドシェアは市民の足として定着してきた。背景には、従来のタクシーへの不満もある。「目的地の手前で降ろされた」「知らない客が乗ってきた」――。タイの陸運当局には毎日、タクシーに関する苦情が住民や観光客から寄せられる。東南アジアでは、運転手がタクシー会社から車を借りて営業し、運賃収入から車の貸借料を引いた金額を手にするのが一般的。運転手は少しでも儲けを増やそうとし、トラブルも多い。バンコク市内で通信会社に勤めるソムチャイさん(45)。会社の仕事を終えた後、ライドシェアの運転手をしている。1日に客は2~3人の手頃な副業だ。休日には自らもライドシェアを利用する。「通りを流すタクシーを拾おうとしても、混雑が酷い時間帯には10台以上に断られることもよくある」からだ。ライドシェアの運転手は会社勤めのサラリーマンが多く、「物腰も丁寧で、タクシーよりも安心して乗れる」という。インドネシアやタイ等、東南アジア6ヵ国でライドシェアを営業する『グラブ』(本社はシンガポール)は、1日当たりの予約が180万件に上るほどの人気だ。そんなライドシェアにも問題が生じている。中国では、北京や上海等の大都市に周辺からライドシェア目的の車が流れ込み、渋滞に拍車がかかった。昨年5月には広東省深圳市で、ライドシェアを利用した小学校の女性教論が、運転手による強盗殺人の被害に遭った。当時、中国にはライドシェアに関する明確な法規制が無く、安全の確保が社会問題化した。中国政府は昨年11月、新法を施行してライドシェアを合法化した上で、ルールを定めた。地方政府が、事業者には経営許可証、ドライバーには運転手証を其々発行することにした。細かなルールは地方政府が設ける。今月6日付の中国紙によると、73都市が細則を定め、うち45都市が地元の戸籍か居住許可を持つことを運転手の条件とした。運転手証の取得には、事故歴や覚醒剤等の犯罪歴が無いことが条件になる。試験もあり、交通ルール・観光情報・英語な等が出題される。中国紙によると、上海では2月までの運転手試験の合格率は58%。地元の橋の“完成年”を出題した南京は13%だった。

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■“過疎地で活用”、日本でも注目
東南アジアの国々も、ライドシェアに対する規制を強化し始めた。「ライドシェアを取り締まれ」――。インドネシアでは、ライドシェアに客を奪われたタクシー運転手によるデモが相次いでいる。タクシー最大手『ブルーバード』の2016年の売上高は、前年から12%も減った。先月には、ジャワ島中部で双方の運転手が殴り合う騒動も起きた。インドネシア政府は今月、関連の法令を改正。ライドシェア事業者に運転手の人数制限等を設け、拡大に歯止めをかけることにした。タイ政府も先月、違法なライドシェア事業に対する取り締まりを徹底する方針を打ち出した。今後、官民で規制の在り方を話し合う見通しだ。欧米でも、アメリカ、イギリス、フランス等で、一定の規制の下でライドシェアの営業が行われている。ライドシェアは、インターネットとスマートフォンの普及によって広がった。ITの進化が齎した新ビジネスと言える。多くの国で公共交通機関の一部になりつつある。新たな事業が登場すると、既得権益を持つ業界との摩擦が生じる。各国の政府は、既存のタクシー業界とライドシェアを並び立たせる方策を模索している。ライドシェアの規制には、「タクシー業界を守る目的もある」(『広州市社会科学院』高級研究員の彭澎氏)との指摘もある。日本政府は、バスやタクシー等の公共交通機関が撤退した過疎地等に限り、ライドシェアを認めている。一部の自治体でNPO等が、自家用車で高齢者らを有料で送迎している。「ライドシェアの利用が増えれば、タクシー業界との競争が生じ、タクシーのサービス向上に繋がる」と期待する声もある。だが、日本は外国に比べ、タクシーを巡るトラブルは少ない。ライドシェアの規制を強化した国々でも、細かな問題は絶えない。交通機関は“安心・安全”が何より大切だ。日本での全国的なライドシェアの導入は、慎重に検討すべきだろう。


⦿読売新聞 2017年4月21日付掲載⦿




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